潜在的失業者


 会社を辞めてから、仕事をしていない。でも失業者ではないのだ。私の立場は病気療養者である。収入がないことに変わりはないが、いや余計に出費が多いのだけれど、失業者ではないのである。なぜなら、労働する意思と能力が欠けているからである。会社を辞めた後すぐハローワークに行って、病気なので仕事はできませんという手続きをしたから、失業者の認定が留保されているのである。

 失業者は就職予備軍である。そう言った方が元気が出そうだが、私の場合は何と呼ぼうか。就職予備軍の予備軍ということにしようか。

 私のような病気療養者以外でも、失業と同じ状況の人は沢山いるだろう。例えばフリーターで仕事がない人、不況で客が来ずに廃業に追い込まれた個人経営者。就職できない卒業生。結構多いんだろうね、こういう人達も。

 みーんな、無職状態には変わりがないけれど、失業者じゃないんだよね。社会的保障もないし。失業者がうらやましいなあ、なんて、結構本音なのである。

 失業者になるためには、病気を治さなければならない。しかしまあ、完治するのは難しいなあ。鬱病とは長い付き合いだし、左耳は直る見込みがないし。自分が好きなように、自分のペースでできる仕事なんて、そうざらにはない。しかもそれで生活しなければならないのだ。普通の仕事じゃ無理だね。といって特殊な技能があるわけではないから、困っている。芸術的なセンスもないし。

 危ない仕事、つまりお縄になるかもしれない仕事は、やるつもりはない(当たり前だよね)。変な迷惑ビジネスにも加わるつもりはない。ということは、何もないではないか。

 ああ、これからどうやって生きようか。私の生きる道はどこにある。
 
 でもって、私の魂は叫ぶ。「うっ、うー、せめて失業者になりたい!」と。


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