ラジオ・オーディオ昔語り
1、蓄音器があった。    小学生の頃学校には蓄音器があって、それでフォークダンスを踊らされました。 蓄音器というのは鉄の針を使った手回し式のものです。回転数が落ちるとぐるぐ ると手回しでゼンマイ?を巻くのです。その後電気蓄音器なるものが普及して、 我が家にも入ったのですが、私が初めて買って聴いたレコードは、ベートーベン のロマンスヘ長調でした。今思えばオーディオとはほど遠いものでしたが、それ でもレコードを聴くのはうれしかったですね。 2、初めての電子工作。    初めての電子工作は中一の時で、ゲルマニウムラジオでした。電源がいらない ので安心して作れました。あんな簡単な回路でよくラジオが聴けるものだと不思 議でしたが、送信所が近かったので良く受かりました。何台か作っていくうちに 欲が出てきて、無謀にもスピーカーから音を出したいと考えて、トランスを介し てスピーカーにつなぎました。そうしたら本当にかすかな音でしたが、耳をぎり ぎりまで近づけるとスピーカーから聞こえたのです。音質は非常にグッドでした。 アンプが無い分、ノイズが少なかったからでしょうか。  そのほか色々いじくって楽しんでいましたが、一つ大きな失敗をしたことがあ ります。受信アンテナを電灯線につなげばよく受かると聞いたので試したのはい いのですが、何かの間違いでショートして、銅線の先は熔けてまん丸になってし まいました。配電盤のブレーカーもダウン、えらい騒ぎになってしまいました。 それ以来無茶なことはしなくなりましたので、いい教訓になったと思っています。 3、昔のAMステレオ。    うんと昔、AMでステレオ放送の実験をやっていたというのを知っている人は 少ないでしょうね。もう35年ぐらい前ですが、NHKで第一放送、第二放送の 両波を使ってAMステレオの実験をやっていたのです。最近のAMステレオと違っ て極めてシンプルな発想でしたね。何でなくなったのか分かりませんが、その後 FM放送が開始されたのでその存在意義が無くなったからかしらねえ。 4、FM放送に感激。  初めてFM放送を聞いたのは、中学生になってからです。いやあ、こんなに音 がいいなんて最初びっくりしました。そう言えば当時はまだ真空管の時代でした ねえ。回路もAMと全然違って、検波方式がフォスターシーレとかレシオとか言 われても、ちんぷんかんぷんだったですねえ。だから自作しようにも出来なかっ たです。 5、本格ステレオとの出会い。    本格的なステレオを聴いたのは、高校生になってからですね。当時のステレオ はかなりの高級品で、見た目も豪華な家具といった印象でした。場所も取りまし たけれど、それだけ贅沢品だったんでしょうね。ですからスピーカーボックスは 結構みんな自作しましたね。スピーカーユニットも各社から販売されていて、好 みに応じて選択できました。今ではほとんどスピーカーユニットは単体で売って いませんね。それだけ自作ファンが少なくなったんでしょうね。パイオニア、オ ンキョー、三菱、フォスター、コーラルなんかが馴染みでしたが、一番憧れたの はJBLでした。こんなにいい音が出るなんて、とても国産品ではかなわないな あと思った記憶があります。 6、真空管で自作。    私が高校生時代まではトランジスタは普及していませんでした。ですから回路 を組むのには、真空管を使うしか手がありませんでした。真空管にも色々ありま したが、自作しやすかったのはMT管といわれる比較的小型の球でした。当時の 標準品でしたからね。AMラジオなどよく作りました。変わり種としては米軍放 出のGT管、俗称アメ玉というのがありました。これは外側がガラスではなく金 属で出来ているんですよ。その分壊れにくいという代物ですが、中が見えないの でヒーターがついているかどうかが分からないというのが難点でした。その他に 真空管式の携帯ラジオというのもあったんですよ。小さな真空管を使っていたよ うでしたが、電池が大変みたかったですね。私も中を覗いてみたことがあります。 7、トランジスタアンプに挑戦。    世の中トランジスタの時代になってからは、回路の自作は中断していましたね。 なにせトランジスタや部品が、真空管時代と違って小さくて扱いにくいんですよ。 それにトランジスタはすぐ壊れると言うのが通説で、危なっかしくて触れなかっ た。だから10年ぐらいは回路の自作はしなかったです。  ところが訳あって、ここは一つ勉強のためにもトランジスタアンプでも作って やろう思い立ち、自作を開始しました。そしたら深みにはまってしまったんです ね、これが。いろんな回路を試してみて、ああでもないこうでもないと何台トラ ンジスタアンプを作ったことか。結構市販品に負けない音質の物もできました。 結局はアンプで大事なのは電源であるという結論に達しました。整流用のダイオ ードをSBD(ショットキーバリアーダイオード)にすると全く音が変わり、と ても澄んだ音になります。また電源を安定化電源にすると、これがすごい重い音 (ごつい音)になります。スイッチングレギュレーターは最悪です。気に障る音 で、とても聞けたもんじゃありません。あとはケーブル類ですね。いいケーブル を使わないといい音は出ませんね。でも安物のスピーカーケーブルでもいい音に 出来る方法があるんですよ。それはNFBをスピーカー端子からかけるんです。 そうするとスピーカーケーブルは4本必要になりますが、すごくクリアーないい 音になります。以前ケンウッドでその方式の物を発売したことがあるみたいです が(Σドライブという名前だったかな)、すぐ消えてしまいましたね。難点は発 振しやすいことと、ケーブルのつなぎ忘れがあるとスピーカー壊れてしまう可能 性があるためでしょうか。でもあの感動的な音は忘れられないです。自作してみ て初めて分かる事って多いです。 8、CD登場。    CDが出てからあっと言う間にアナログレコードは消えてしまいました。これ ほどきれいに入れ替わるものって珍しいですね。おかげで私のLPコレクション はただの飾りになってしまいました。100枚はあるのに・・・。確かにCDは 扱いやすいです。発売当初は妙な癖があるように聞こえましたが、最近は気にな らないですね。機材が良くなったためか、慣れてしまったためか分かりませんけ ど、もうアナログレコードは聴けないです。ノイズも多いし大体レコード針がな いですもの。それに酒飲んでLPというのは危なくって。随分レコードに傷をつ けてしまいましたからね。これが一番の理由かな。 9、MIDIなるもの。    MIDIを知ったのは1994年頃でしたか。コンピュータのことはあまり詳 しくなかったし、ましてゲームサウンドのピコピコ音のイメージがあったので、 コンピュータ音楽には関心がなかったのです。それがひょんなはずみでMIDI を知ってからは、結構良いなと思う様になりました。みなさんご存じのように私 は現在左耳がほとんど聞こえないので、ステレオは全く無意味な存在なのです。 ところがMIDIでは各楽器毎にスピーカーから音を出せると気づいてから、こ れはいけるなと思いました。そこで始めたのがMIDIによるマルチ音源システ ムだったのです。ステレオでは絶対まねが出来ない音です。自宅で一人で聴いて 密かに喜んでいます。  あと、ついでにカラオケ夢工房なる文章も書いてしまいました。これは人生の 記念碑的な作品になりました。