思い上がっていた
大事に育てたスモモの木。 今年はいっぱいつぼみが付いて春が楽しみだ。 そう思っていた矢先、鳥につぼみを食べられてしまった。 なんて事を。 人の大切なものをと、 憤慨しているうちに鳥はさっさと飛んでいってしまった。 今日も来たぞ。 今度は隣家のレンギョウの花を食べている。 「せっかくきれいに咲いているものを食べるな」 と思ったが、なぜかふと冷静になった。 鳥は山に食べ物がなくて危険を冒して里に下りてきているんだ。 自分はただの楽しみで庭いじりをしているだけじゃないか。 鳥の身にもなってごらんよ。 ああ、思えばその通りだ。 最近この辺も山が削られて、ほかに行く所がないんだろう。 鳥のせいじゃないよ。 私は思い上がっていた。 自分の庭は自分だけのものだと思っていた。 本当は自然の一部なんだという事を忘れていた。 そうだ、来年からは鳥の餌場を作ろう。 そしてもっと鳥と仲良くしよう。 そう思ったら、ちょっとだけ心が暖かくなった。