20年も前の経験が生きる
 私は大学では応用物理を専攻し、社会に出てからもずっと技術畑で 仕事をしてきたので、読み書きする文章は新聞・雑誌を除けばほとん ど技術報告書や特許、それに論文ばかりでした。ですから私は普通の 文章を書くのはとても不得手なのです。そのため最初カラオケ夢工房 を書く時、はたしてどのようにして文章にまとめるか悩みました。頭 の中にはイメージとして出来上がっていても、それが文章に結びつか ないのです。いろいろ考えた末、長い文章で説明するのはあきらめて、 ショートストーリー風に短くまとめる事にしました。それなら何とか 自分でもできそうだと思ったからです。  今思い起こすとそれは正解でした。私は小さい頃から国語が苦手で、 文学にはとんと縁がありませんでしたが、一時期だけ小説に夢中になっ た時があるのです。それは大学2年生の時でした。星新一のショート ショートがえらく気に入って、朝から晩まで夢中になって読みふけり ました。彼の文庫本はほとんど読み尽くしました。しかしなぜか他の 人の作品は眼中にありませんでした。ですから私の頭の中には無意識 ながらも、純粋培養的に星新一のショートショートの文章スタイルが 焼き付いているのだと思います。  しかしもう20年以上も前のことです。若いときの経験が今となって 花開いた感じです。当時は何も考えずにただ面白いからと夢中でした。 人生って分からないものですね。もし私が星新一に巡り会わなかったら、 カラオケ夢工房は技術解説的な生堅い作品になっていたか、単なる箇条 書きの羅列に終わってしまっていたでしょうね。  何事も夢中になってやればそれが人生の財産として残るのでしょうね。 ですから若い人は何でも良いから夢中になってどんどん前進して下さい。 それが年をとってから何かの形で役に立つことでしょう。仮に役に立た なくても良いじゃありませんか。きっと良い思い出にはなるはずです。 決して白けちゃあいけませんよ。  ちょっと偉そうなことを言ってしまいました。やはり私はおじさんな んですね。