赤ん坊
初めて自分の子供を見たとき、ものすごく嬉しかったです。本当に赤い 顔をしていて泣いていました。沢山の赤ん坊達が並んでいる中で、すぐ自 分の子供だと分かりました。自分に似ているかどうかは分かりませんでし たが、自分の兄弟によく似ていたからです。自分の顔は鏡や写真を見ない と分からないけれど、兄弟の顔は小さい頃から見続けていましたから、よ く分かるのです。 そして何ヶ月か経って気が付いたのですが、教えもしないのに、仕草や 態度が自分に似ているのです。これにはびっくりしましたね。こういうの も遺伝するのかなあと不思議に思いました。子供はほとんど妻の実家にい たので、私とはあまり会っていなかったのです。 それと子供が生まれた日の前日、偶然にも妻の親戚が亡くなったのです。 そのことと併せて、なぜ人は死ななければならないのかという長い間の疑 問が解けたのです。子供は生まれるのと人に寿命があるのはセットになっ ている。でなければ困るではないか。そして若い頃からあった死への極度 の恐怖心や理不尽感が無くなり、死というものが極めて自然であると納得 したのです。 しかしそれにしても子供が生まれたことは私にとって大きな出来事でし た。突発性難聴で具合が悪く(なにせ歩くのさえふらふらしていて、めま い・吐き気・疲労感が強くしかも治る見込みがない。それに顔面神経麻痺 でダブルパンチ状態)、もう自分はだめかとやけを起こしても不思議でな い状況で、何とか頑張れたのも子供がいたからでした。 子供と話が出来る様になるまで、3歳になるまで、幼稚園に行くまで、 小学校に上がるまで、その都度それまでは何とか頑張らなくてはと思って いるうちに、ここまで来ました。正直言ってものすごくつらかったです。  今は一段落と言ったところです。しかしそれまでの無理がたたってか、 最近は又病気ばかり。