<自己分析> 音に対しての敏感さ。どうもこれが私のポイントのようです。元来騒音 には人一倍敏感だった私ですが、左耳が聞こえなくなってからは、よけい 音に敏感になりました。なにせ音の方向が分からないのです。道路を歩く のは最悪です。車の音はなんとか分かっても、車がどこにいるか分からな いので、いつもきょろきょろ、おどおどしています。犬に吠えられるのも、 びっくりします。車社会、騒音社会では片耳が悪いと本当に困ります。 さて、実は独立マルチ音源の発想はこの辺からきています。音の出てく るところが目で見えないと音楽を聴いても心持ちが悪いのです。もちろん 独立マルチ音源にしたからといって、実際音の方向が分かるわけではない のですが、ステレオではまったく得体が知れないのです。独立マルチ音源 なら安心なのです。このことは普通の耳の人には理解できないのかも知れ ません。しかし、そのことが新しいアイデアを生み出すきっかけになった のです。けがの功名とでもいうべきでしょうか。 さて、エジソンも耳が悪かったそうです。私はそれが蓄音機の発明につ ながっているんだと想像しています。またベートーベンをはじめ、高名な 作曲家の中にも耳の悪い人が何人かいたようです。耳が悪くなると、音に 対して一種のこだわりが出てくるのです。それが芸術や、技術になんらか の作用を及ぼすのでしょう。時として、普通の人が見過ごしていることに 気が付く場合もあるでしょう。そういうことは大事にしたいと思います。 でも、やっぱり耳が良いに越したことはありません。それは偽りのない 本心です。エジソンもベートーベンもそう思っていたに違いありません。