真面目な提言編                                  


<はじめに>

 カラオケにおける最も重要な基本とはなんでしょうか。それは、カラオケは
音楽伴奏であるということです。どんなに映像が進歩しても、いくら演出がう
まくなっても、この基本は変わりません。ですからどの様に時代が変わっても、
カラオケで欠くことのできない部分は音楽伴奏である、と言っていいでしょう。
  さてカラオケを音楽としてとらえてみますと、音楽の要素としてメロディー、
リズム、ハーモニーが思い起こされますが、特にカラオケにおいてはもう一つ、
合奏という要素を考えなくてはなりません。のど自慢の伴奏を思いだして下さ
い。いろんな楽器が合奏して伴奏をしていますね。しかも各楽器は独立して別
々の場所から音を出しているのです。しかし従来のカラオケでは、これを再現
するのは難しいのです。ステレオでも無理があります。なぜならステレオでは
楽器の上下位置関係は表現できないからです。
 そこで考えついたのが独立マルチ音源カラオケなのです。独立マルチ音源と
は、各楽器毎にアンプとスピーカーを持たせたもので、それぞれのスピーカー
が独立してそれぞれの楽器の音を出すものです。簡単に言うと、それぞれのス
ピーカーは楽器と同じであるとみなせるのです。ですからスピーカーの配置は
楽器の配置と同じ意味を持つことになり、スピーカーの配置のしかた次第では
、生伴奏のようなカラオケが可能になるのです。


<社会的背景>

  昔はカラオケと言うと酒の席という印象だったのですが、最近は違います。
お酒を飲まなくてもカラオケという機会が増えてきました。これは日本人が歌
がうまくなったのと関係があるのかもしれません。この様な状況では従来と異
なるカラオケが必要です。その一つの回答がこの独立マルチ音源カラオケなの
です。もっと音楽を基本にすえたカラオケがあってもいいのではないでしょう
か。また家庭で子供と一緒に楽しめるカラオケもあっていいと思います。子供
達は結構生の音楽に接しています。学校の音楽の授業やクラブ活動では、生演
奏が主体だからです。ですから大人よりも合奏に対するセンスはあるでしょう。


<技術的背景>

 独立マルチ音源カラオケは、古くからプロで使っているマルチトラックテー
プレコーダーを用いて、楽器別に伴奏を録音・再生すれば可能です。しかし使
い勝手やコストの面で一般の人が使うのは無理があります。
  一方、近年コンピュータミュージックは益々発展し、16台分の楽器を合奏
できるようになりました。楽器の音もほとんど生楽器と変わらないところまで
きています。しかも各楽器の音を独立に出力できます。またコストも下がって
きました。この様にコンピューターミュージックの進歩は、独立マルチ音源カ
ラオケの実現にとって非常に好都合なものとなっています。 


<マルチ音源の魅力>

 ステレオでは、伴奏と共にという感覚が希薄にならざるを得ません。なぜな
ら伴奏と一緒になろうとしてスピーカーに近づこうにも、どっちのスピーカー
に近づいたらいいのか分からないからです。そこで両方のスピーカーの中間に
立てば、今度は中抜けしてしまいます。
  一方、マルチ音源ではこの様なことはありません。好きな場所どこに立って
もいいのです。楽器と同じ様な指向性のスピーカーを使えば、後ろに立っても
自然に聞こえてきます。歌いながら動きまわっても伴奏は自然に聞こえます。
伴奏と共に歌える。これが独立マルチ音源カラオケの大きな長所であり、魅力
なのです。
  また、マルチ音源の様に音の出どころが目で見て良く分かるということは、
人に安心感を与えるものでしょう。このことは、心理的に重要だと思います。
伴奏の存在感、これも大きな魅力でしょう。


<独立マルチ音源の短所>
 
  独立マルチ音源の短所。大きく言って2つあると思います。一つは楽器の数
だけ音源がいるということです。ですからステレオのように、ソロからフルオ
ーケストラまでどんな楽器の編成でもこなすという訳にはいきません。現状で
は技術的コスト的に、楽器編成は限られたものになるでしょう。しかしカラオ
ケの場合はさほど問題にはなりません。なぜならこちらで楽器数を決めてしま
って、それに合わせた伴奏を行えばいいからです。歌の伴奏だけを考えるなら
小規模な楽器編成(6〜8台編成)で十分です。もう少しにぎやかにという場
合でも、コンピュータミュージックでは最大16台という規制がありますので、
それ以上の楽器編成を考える必要はありません。
  もう一つの短所、それは音の位置を動かせないということです。ステレオの
ように左から右に音を動かすことはできません。しかしこのこともカラオケに
おいては問題にはなりません。なぜなら伴奏楽器が動きまわる事、これは通常
考えなくていいからです。
  ですからカラオケにおいては独立マルチ音源の短所は目立たなく、長所だけ
が目立つのです。


<マルチ音源カラオケの基本的な使い方と応用>

  独立マルチ音源カラオケの発想の根底にあるもの、それは伴奏の基本に戻れ
ということです。つまり音の集合体ではなく、音楽としての伴奏を考えようと
言うことです。ですからまずは、音楽として素直に楽しんでもらえるよう、自
然な感じになるような使い方が一番いいと思います。テクニックを駆使した音
作りは、次の段階にと考えています。
 またカラオケ以外、通常の音楽演奏への応用も考えられます。本当に音楽が
好きな人には喜ばれると思います。特にアンサンブル重視のジャズや、クラシ
ック室内音楽ファンにとっては朗報でしょう。歌謡曲はどうでしょうか。放送
による宣伝効果が期待できないので、新曲よりは昔流行した歌のリバイバル版
がいいのかも知れません。喫茶店などで無人演奏風にするのもいいと思います。
  このほかの応用として、ファンファーレを考えています。会社・店・ホテル
の入口にスピーカーを並べて、お客さんの到着に合わせて演奏させたら効果的
ではないでしょうか。	


<スピーカー配置のポイント>

 独立マルチ音源カラオケは、立体的な音楽表現が可能です。ですからスピー
カーの配置も立体的な配置が望ましいのです。全体のバランスの範囲内におい
て、スピーカーの高さや奥行きに変化を持たせるのが効果的です。こうするこ
とによりステレオでは味わえない、実在感のある伴奏を聞くことができます。
横一列にスピーカーを並べても面白い音は出ません。また楽器の指向性を考慮
して、ドラムスなどは無指向性のスピーカーにするか、斜め上方向に音を出す
様にするのがいいでしょう。確かにスピーカーの数が多い分配置の組合せの自
由度はありますが、逆に単純にはいかない面もあります。最初は実際音を聞い
てみていろいろ試してみるといった試行錯誤が必要かと思います。ただ最適化
が計れれば、これまで聞いたことのない様なすばらしい音が出て来ます。


<楽器の選定>

 コンピューターミュージックではあらかじめ曲デ−タにインプットしておく
ことにより、演奏の途中で楽器を変更することが可能です。ですから例えば歌
の1番と2番とで楽器を替えたり、間奏で楽器を替えることは可能です。問題
はこれで伴奏の違和感が生ずるかどうかです。頻繁に楽器が替わるのでなけれ
ば、かえって効果的かもしれません。チャンネル数が多い場合は各楽器1スピ
ーカーでいいと思います。こちらの方が自然ですから。
  また楽器の編成(台数、楽器の種類)は曲によって異なっていいと思います。
曲によってはピアノソロ伴奏が効果的なのもあれば、金管アンサンブル主体の
伴奏がふさわしいものもあるからです。
  ただ欲を言えば、スピーカー群をバックバンドに見立てて、いろいろなキャ
ラクターのスピーカー群をあらかじめ用意しておき、曲に合わせてスピーカー
群を取り替えて伴奏させるのが一番いいのです。こうすれば、あるスピーカー
群のキャラクターがピアノカルテットの場合、それに最適なスピーカーの選定
や配置、指向性の設定が可能となり、最良の伴奏が可能となるからです。


<技術思想としての独立マルチ音源>

  端的に言えば、独立マルチ音源自体は技術ではないのです。なぜなら自然界
そのものが独立マルチ音源で満ち満ちているからです。音楽においても、生演
奏は独立マルチ音源そのものです。ですから独立マルチ音源自体は技術ではあ
りません。ただ機械を使って音楽を表現しようとした時、独立マルチ音源方式
はステレオ方式に代わる一つの考え方、つまり技術思想となります。さまざま
な技術はこの技術思想をきっかけに生み出されていくでしょう。