コンピュータミュージック編 第1話  <トップテナー>            


 世界一のトップテナーは私です。と言っても私はコンピュータミュージック
ですが。

「いよいよプロジェクトの発足だ。いいか諸君、世界一のトップテナーを作っ
 てくれ。二番じゃ駄目だ、世界一だぞ」
「はい分かりました。世界一を目指します」

「さあて、威勢のいいことを言ったけど、実際どうしようか」
「名テノールの声をサンプリングして、メモリ−に入れておいて、後でいろい
 ろ細工するか」
「日本語でも100音以上あるんだ。外国語も入れたらきりがないんじゃない
 か」
「最初は日本語だけにするか」
「原理試作ではしょうがないな」
「音出すときは、基本的に楽器と同じ扱いでいいのかな」
「うん歌専用の音源を作り、あいうえお、それぞれの音に番号をつけておいて、
 歌詞に合わせてその番号の音を引き出せばいいんじゃないかな」
「普通の音源はピアノの音が1番目だけど、歌の場合は”あ”の音を1番にす
 ればいいのか。以下”い”は2番、”う”は3番・・・という風にするんだ
 な」
「そう、だから”あいうえお”と言う歌詞に対しては、音の指定は順番に1、
 2、3、4、5とすればいいんじゃないか」
「”いあえおう”と言う歌詞の場合は、音の指定は順番に2、1、4、5、3
  とするんだな」
「音の高さや、長さの指定は、楽器の場合とおんなじだ」
「よーしこれでやってみよう」

 これらをもとに改良に改良を重ねた結果試作品が完成し、さっそく音のチェ
ックが始まった。

「ずいぶん音域が広いね」
「ええ5オクターブは軽く出ます」
「長い間歌っても全然疲れがみえないし、音が絶対ぶれない」
「ええ、きっちり楽譜通りです」
「細かい音の動きも実に立派だ」
「はい、どんな音でもこなします」

 そこへB子が、遅れて入ってきた。

「まあ、この人上手だわ。まるで機械のように正確ね」


  あのー、これ機械なんですけど。