コンピュータミュージック編 第4話  <標準化と芸術>


「ほんとは生録でやりたかった」
「その方が自然ですものね」
「でもコンピュータミュージックの方が可能性が高そうなんだ」
「どうして?生録の方がこれまでの資産はいっぱいあるし、それを活用できる
 んじゃないの」
「うん、確かにそうなんだけど。標準化を考えるとね、難しいんだよ、生録は」
「標準化?」
「そう、標準化。そもそも生録っていうのは様々あるんだよ。バンド編成もそ
 うだし、楽器の種類・配置もいろいろある。そういうのを全部マルチ音源で
 カバーできないんだよ。というより一部しかカバーできないんだよ」
「コンピュータミュージックなら大丈夫なの?」
「万全と言うわけじゃないけど、楽器も16台までだし。それにまだ始まった
 ばかりの新しいものだから、標準化がやりやすいと思うんだ」
「でも標準化といったって、そう簡単じゃないでしょう」
「うん、バンド編成から配置まで、色々考えなくっちゃいけない。しかもそれ
 をみんなに納得させて広げなくっちゃいけないんだ」
「難しそうね」
「うん、そのためには率先してやらなくちゃね」
「何がいちばん大事なのかしら」
「やはり最初、これでどうという見本を示すことかな」
「それと、情熱ね」
「うん、ある程度うまくいくと後は自然に流れができてくるから、それまでの
 辛抱だね」
「だから最初カラオケを考えたんでしょう」
「そう、そうなんだ。バンド編成や配置を固定しやすいし、主体的にやれそう
 だったから」
「あまり芸術的なこと深刻に考えなくってもいいしね」
「普通の音楽となるとどうしても芸術のこと考えてしまうんだよね」
「でも芸術の芽が無いわけじゃないでしょう」
「ああ、大作曲家がでてきて、マルチ音源専用の芸術音楽を作ってくれないか
 なあと思っているんだよ」
「それはきっと実現するわよ。だって今までは無理やりステレオ用に直してレ
 コード化しているんですもの。その制約がなくなるんだから、作曲家の人は
 みんな喜ぶわ」
「そうだね。新しい音楽がどんどん登場するかもしれない」
「そうしたら、マルチ音源が定着するかもね」
「うん、芸術と絡むと強いね」