カラオケ編 第17話   <動かぬ流し>              


 今ではすっかり廃れてしまったが、カラオケが流行る前は、流しというのが
あったそうな。

「やっぱり伴奏は生が一番だよ。そうだろう」
「うん、昔は流しと言うのがあって、ギターなんかで伴奏してくれたんだって
 よ」
「今はカラオケ全盛時代。生伴奏なんかないんだろうな」
「ピアノで伴奏してくれるところは、ないことはないけど」
「隣でギター、これでしみじみ歌いたいなー」
「ギターだと、歌うものが偏ってしまうんじゃないの」
「おれの好きな歌は、ギター伴奏が一番なんだよ」
「考えてみようか」
「生伴奏だよ。カラオケじゃないよ」
「ああ、生伴奏を」

  本当にいい方法があるんですかね。

「こういうのはどうだ。テレビ電話で伴奏するんだ」
「テレビ電話か。しかしまだ無理じゃないの」
「いや、今すぐとは言ってないさ。将来の話として聞いてくれ」
「ああ」
「伴奏センターを作って、そこにギターやアコーディオン、ピアノなどの伴奏
 を常駐させる。そこは専用の回線が接続されていて、客がいつでも伴奏を注
 文できる様にする。画質、音質、時間遅れの問題を解決できれば結構いける
 んじゃないか」
「伴奏するのが人間だから、客にテンポを合わすこともできるし、たまにはお
 しゃべりもできるってわけか」
「まあ、気が合えばな」
「確かにこれは生演奏だなあ」
「絵が出なくてもいいんなら、実用は早いだろうな」
「問題は、どれだけ需要があるかだ」
「カラオケの場合は機械だから、こちらで気を使う必要がないけど、生伴奏な
 ら相手が人間だから、逆にこっちが気を使ってしまうんじゃないかなあ」
「向こうはプロ、こちらは素人だし」
「それに何か変な感じがするな。生演奏なのに、人がいないなんて」
「慣れの問題かな。最初カラオケ聞いたときも、違和感あったんじゃなかった
 かな」
「初めからそんなもんだと思えば、なんともないのかな」
「確かに相手が話上手でディスクジョッキーみたいだったら、これは相当のる
 んじゃないかな」
「名物伴奏家がいっぱい出れば、流行るかもな」
「ただ昔の流しのイメージじゃ駄目だろうな。もっと明るい感じでないと」
「のど自慢の伴奏のようになって、ついでにカネも鳴らしたりして」
「伴奏もカルテットや、クインテットになったりして」
「もう動きまわらないんだから、流しと言う名前は変だな。いい名前考えよう」


  うーんこれは独立マルチ音源カラオケにとって、かなり手ごわい競争相手だ。