カラオケ編 第18話  <汽笛>


 ボーっとしていますね、あなたは。いつもそうなんですか。そして、時々部
屋の中うろうろしますね。熊さんみたいですね。
  いや、これは私の話。読者の皆さんじゃないですよ。

「あなたって、いつもボーっとしていて何考えているのか分からないわ」
「うん、いろいろ空想したり。でも本当に頭の中が空っぽになる時もある」
「昔からそうなの」
「そうだったみたいだな。小さいころから青森で青函連絡船の汽笛を聞いて育
 ったからかな」
「まさか。いくら汽笛がボーっと聞こえるからって、そんなことないでしょ」
「まあそうだろうな。でも汽笛の音って空想をかき立てるものなんだよ」
「車の騒音じゃそうはいかないわよね」
「うん、音って以外と影響力あるんじゃないかな」
「だから、小さいころからの音楽教育が叫ばれているのね」
「カラオケの伴奏だってそうだよ」
「そうねえ」
「最初の出だしで、曲のイメージがほとんど決まってしまう」
「与作がラテン風じゃ変だし」
「マイウェイが三味線伴奏じゃ、かっこつかない」
「ちゃんと考えて編曲しているのね」
「ああ、装置だけでカラオケが成り立っているわけじゃない」
「慣れちゃうとみんな当り前になっちゃうけど、それぞれにいろんな工夫が隠
 されているのね」
「うん」

 では、今度の装置にはどんな工夫が隠されているんでしょう。あるカラオケ
販売店でのデモのお話。

「はい、お好きな曲を言って下さい。自由に歌っていいですよ」
「晴れた空、そよぐ風って歌、なんて名前だったっけ」
「歌詞で検索できますから大丈夫ですよ」
「ではお願いします」

「あれ、出だしが違う」
「いえ、これでいいんです」
「最初汽笛の音が聞こえたぞ」
「ええこれでいいんです。最初曲のイメージに合わせた効果音が出るようにな
 っていますから」
「なんだそうだったのか。じゃあもう一回最初から」
「はい、それじゃ最初から」

「あれ、また出だしが違う」
「ええ、二回続けてかけると、汽笛が二度鳴るようになっているもので、はい」


 うーん、思い出の渚は波の音、君といつまでもはウエディングベルかなあ。
 函館の女の時は?さてどうしようか、連絡船なくなってしまったからなあ。