カラオケ編 第3話   <天からドラムが降ってくる>


 それは斬新な印象だった。まさか天井からカルテットが聞こえてくるとは。
一瞬夢じゃないかと思ったくらいだった。後ろ上からはベース、右上からはピ
アノ、左上からはギターの音、でも一番びっくりしたのは前上から強烈なドラ
ムの音が降りかかってきた時だ。しかもホーンスピーカーでだ。まさに天から
ドラムが降ってくるというのはこのことか。ロック狂ならしびれてしまいそう
な新しい音楽表現だった。うーん、これは一体なんなんだ。そうか、例の独立
マルチ音源なんとかというやつだな。

 数日前の出来事が余りにも鮮烈だったので、Kの頭の中はいつもその事でい
っぱいだった。

  そうだ、いいことを思いついたぞ。真上からバックグランド的な効果音を出
そう。なにがいいかな、上から聞こえてくるやつ、雷、雨、風なんかどうかな。
それとも、もっと人工的なもの。例えば、星空をイメージしたサウンドなんか
はどうだ。照明も連動させよう。そう言えばMIDIを使って照明をコントロ
ールするという話があったっけ。MIDIは16チャンネルとれるから、その
うち数チャンネル分照明用に使おう。そうすれば音と光の芸術が完成だ。

  こういう風にすぐ夢を見るのがKの特徴だった。そして最後は決ってこうな
のだ。

  おーい、こんなのでカラオケ歌ってみないか。なに、音が上からばかりじゃ
すぐ飽きるって。よしそれじゃあ下からも横からも音を出してやろう。これが
本当の自己中心カラオケだ。どうだまいったか。なに、今度は聞き手の方が面
白くないって。気にしない、気にしない。みんなで順番に歌えばいいんだから。
そもそもカラオケというのは、人に聞いてもらうより自分で歌うためにあるも
のなんだぞ。さあさあ歌おう、さあ歌おう、みんなで歌おう、さあ歌おう。

 Kは歌うのが好きなのである。