カラオケ編 第8話  <コンチェルト>


 カラオケはボーカルコンチェルトである。と言ったのは誰でしょう。
  それはわたくし、Kです。


「カラオケは音楽なんだ。そうだよね」
「広い意味ではそうだけど、今のカラオケは娯楽だよ」
「娯楽的要素の強い音楽ってわけか」
「いや、音楽的要素のある娯楽だ。演出に凝ったり映像が出てきたり音楽から
 は離れているよ」
「まあ、確かに歌詞が出てくるのはありがたいが、それ以外は音楽にとってほ
 とんどなくてもいいものだからな」
「おれもキー変換や、テンポ可変はあってもいいと思うけど、音楽に関係ない
 ところに凝る必要はないと思うけどな」
「でも娯楽だから一般受けするんだろうな。もっと音楽的に楽しみたいという
 人はいないのかな」
「そんなことはないと思うよ。音楽好きは多いし、若い人は結構音楽的センス
 もあるんじゃない」
「うーん、でも最近の歌手を見ると下手なのが多いからなあ」
「彼らは歌手じゃなくて単なるアイドルだろう。上手じゃかえって売れないん
 だろう。でものど自慢なんか見てると、結構うまい人多いよ」
「そうだな。全体のレベルは上がっているんだ」
「それじゃ、ここらでカラオケを音楽に戻してみてもいい頃ってわけだ」
「賛成」


 2人は音楽的なカラオケで意気投合し、装置をいじってみることにした。

「音楽に関係しないもの全部とっちゃたけど、これじゃあ昔のカラオケになっ
 ただけじゃないのかい」
「そうだなー、昔に比べたら音質はずっと良いけど、そのほかは変わらないよ
 うな気がするなあ。やっぱりこれじゃ物足りなくなってしまうんだよなあ」
「音楽って、一体何なんだろうね」
「うーん、音楽って、うーん、何なんだろうねえ。メロディ、リズム、ハーモ
 ニー、みんなそろっているんだけどなあ」
「何か足りないんだよなあ」
「何だろうなあ」
「そうだ、アンサンブルだ」
「アンサンブル?」
「そうだよアンサンブルだよ。みんなで一緒に演奏するってやつ」
「そうか、カラオケは伴奏が一つにまとまってしまってるから、みんな集まっ
 て一緒に演奏している雰囲気がないんだ。だから物足りないんだ」
「それを解決すれば、音楽的なカラオケができるってわけだ」
「よし、レッツゴー・・・。とは言うものの、いい方法があるか」
「えーと、ない」
「こりゃ困った問題だ。困ったなー」
「困った時の神頼み。Kさんところへ行こう」
「うん、そうしよう。俺に任せろ」


  そう言った彼は、Kのところへ出かけた。

「やあKさん。いつみてもお若いですね。きっと毎日いい音楽を聞いてらっし
 ゃるからでしょうねえ」
「なにへらへら言ってるんだ。ははー、さては何かたくらんでるな」
「いえいえとんでもない。ちょっと相談事があるだけですよ」
「何だい相談事って」
「実はカラオケの事で。これこれこういうことなんですよ」
「フムフム、そうか分かった。ああ、いい方法があるぞ」
「本当ですかー。ありがたいなあ」
「但し条件がある。名前をつけさせてくれ」
「誰にですか。ぼくには子供はいませんよ」
「そうじゃない。カラオケの装置にだ」
「分かりました。どんな名前ですか」
「ボーカルコンチェルトというんだ」
「はい、ボーカルコンチェルト、ボーカルコンチェルトですね。で、いい方法
 と言うのは?」
「独立マルチ音源だ。後は言わなくても内容は分かるだろう」

「はーい。よくわかってまーす」