マルチ音源編 第1話  <タイトルマッチ>


「本日のメーンイベント、世界カラオケ級タイトルマッチを行います。赤コー
 ナー、ステレオ太郎常識ジム所属。青コーナー、マルチ音源基本ジム所属」

「さあ、いよいよ世紀の対決が始まります。今夜の実況はわたくし奮立一郎、
 解説はガッツ石橋さんです。さてこの試合の見どころですが石橋さん、どん
 なところでしょうね」
「そうですね、ステレオ太郎はベテランですからねえ。オーソドックスなスタ
 イルで何でもこなしますから、自分のペースに巻き込めれば有利でしょう」
「一方のマルチ音源は、どうでしょうか」
「実は私も試合見るのが初めてなんですよ。ただ新鋭ながら秘密兵器を持って
 いるという噂で、あなどれないですよ。若さで前に出てきますからね」
「それは楽しみな試合になりそうですね」
「ええ」

 <第一ラウンド>

「さあ、いよいよ第一ラウンドの開始です。両者にらみあっています。最初に
 仕掛けるのはどちらか。まずはステレオ太郎のようです。得意の足を使って
  軽くジャブで牽制しています。マルチ音源はちょっと動きが硬い。大試合で
  緊張しているのでしょうか。どうでしょう、石橋さん」
「さすがベテラン、ステレオ太郎ですね。自分のペースを作ろうとしています
 ね。マルチ音源はこの作戦にはまちゃいけませんよ」
「ここでマルチ音源、ストレート攻撃。ステレオ太郎軽くかわしました。ステ
 レオ太郎なかなかいい動きです」
「うーん、ここは単調すぎますね、マルチ音源は」
「ステレオ太郎の動きがいいようです。おーっと、ここでゴングです。石橋さ
 ん採点は」
「10対9でステレオ太郎ですね。ベテランのうまさが光りました」

  <第二ラウンド>

「さあ、第二ラウンドはどうでしょうか。両者同時にコーナーから飛び出しま
 した。マルチ音源少し硬さがとれましたか、動きが良くなったようです。こ
 のラウンドはどうなりますか、石橋さん」
「ここは、ステレオ太郎得意の左右のフックをきめたいところですね」
「おや、マルチ音源ボディ攻撃。ステレオ太郎の動きを止める作戦か」
「この攻撃はいいですよ。ステレオ太郎は左右の動きとフックが得意ですから
 ね。まずは動きを止めないと」
「おっと、マルチ音源のストレート、ステレオ太郎の顔面にヒット。いきなり
 打ってきますね。石橋さん」
「なかなか強烈なものを持っていますね、マルチ音源は。ここはクリンチで逃
 げたいところですね。ステレオ太郎は」
「ステレオ太郎、やはりクリンチでのがれようとしています。このまま逃げき
 れるか、残り時間がない。ここでゴング」
「10対9でマルチ音源ですね。相当パンチが強烈です」

 <第三ラウンド>

「なかなか白熱した試合になりましたね、石橋さん」
「ええ、左右のステレオ太郎対、前後のマルチ音源という感じですね」
「さあ、どっちが試合の主導権を握るか。おや珍しくマルチ音源が左右からパ
 ンチを振るいました。結構左右も打てるんですね。マルチ音源は」
「動きは硬いけど、結構左右もいけますね。これにはステレオ太郎ちょっと以
 外じゃないんですか」
「ステレオ太郎ちょっと劣性です。ここでマルチ音源猛然とラッシュ。ワンツ
 ー攻撃の雨あられ。ステレオ太郎危ないか。必死に左右の動きでかわしてい
 ます。おや、ここでどうしたことか、マルチ音源のパンチが止まりました。
  スタミナ切れか、どうしたんでしょうね、石橋さん」
「どうも第一ラウンドから気になっていたんですが、マルチ音源はパンチの数
 が16個になると、その後ぴたっとパンチが止まるんですよ」
「ここでステレオ太郎の反撃だ。得意の左右のフックでお返しです。マルチ音
 源グロッキー、危ないぞ。おーっとここでゴング、マルチ音源救われました」
「このラウンドは10対10のイーブンですね」

 <第四ラウンド>
 
「なかなか目を離せない展開になりました。このままではダウンのシーンが見
 られそうですね、石橋さん」
「両者、自分の得意を存分に発揮していますね。これはいい試合だ」
「おや、ステレオ太郎の動きが変ですね」
「いや、これは定位ずらしといって体をゆらゆら揺すって、相手を幻惑してい
 るんです。ステレオ太郎若いとき、対モノラル戦で良く使いましたよ」
「とうとうステレオ太郎も必死の作戦ですね」
「マルチ音源がこの幻惑に勝てるかが、勝敗の決め手でしょうね」
「マルチ音源様子を見ているようです。それとも相手の術中にはまって手が出
 ないのか」
「いや、何か狙っているようですよ」
「ここでステレオ太郎、攻撃に出ました。得意の左右のフックだ。マルチ音源
 後退。今度はマルチ音源の動きがおかしい。ぴょんぴょん跳ねだしました。
 輪島の蛙とびの再現か」
「いや、あの時とは違う」
「ステレオ太郎足が止まりました。これは危険だ。あああー、マルチ音源飛び
 上がりました。これは何だ」
「上からの攻撃だ。これが秘密兵器か」
「マルチ音源、攻撃開始です。あっ、天からパンチが降ってきたぞ。パンチの
 雨あられ、天からパンチの16連発だ。たまらずステレオ太郎ダウン、ダウ
 ンです」
「おおー、これが噂の立体攻撃」
「ステレオ太郎、立ち上がれるか。不滅の王者に無情にもカウントが入ってい
 ます。6、7、8、9」



「わああああー、誰だ、昼寝の夢を邪魔をするやつは。ちょうどいいところだ
 ったのに」
「あーらごめんなさいね。洗濯物が顔に落ちちゃった」

「くそー、天からパンツが降ってきたのか」