マルチ音源編 第9話 <最大の仮想現実> 現在は仮想現実の全盛期です。テレビを見ればドラマ、ゲームはテレビゲー ム、車の教習はシミュレータ・・・。益々その傾向は強まっていきます。オー ディオの世界にもその傾向があります。3次元ステレオなどはそのいい例でし ょう。皆さんも、コンピュータミュージックにおけるマルチ音源は仮想現実で ある、とお思いかも知れません。しかし違うのです。コンピュータという名前 が付いているため、コンピュータ技術を駆使してあたかも現実のように見せか けているように誤解され勝ちですが、そうではありません。実際正真正銘、現 実の生演奏なのです。楽器の音は確かに通常の楽器に似せています。しかしこ れは必須の要件ではありません。その方が親しみやすいからそうしているだけ であって、音はどんな音色でもいいのです。楽器の配置も好きなようにやれば いいのです。 言葉を替えて言えば、コンピュータミュージックにおけるマルチ音源は、仮 想現実ではなく、新たな現実をつくり出すものです。編曲の才がある人は、ど んどん自分で新しい現実を切り開いていけるでしょう。そうでない人でも、様 々な形で楽しむことができます。例えばバックバンド、音楽演奏など従来の生 演奏と同じ様な楽しみ方ができます。 もちろんコンピュータミュージックはまだまだ発展途上にあります。ですか ら現状では必ずしも満足できない部分は存在します。しかしそれだからといっ て、将来の可能性を否定すべきものではありません。技術は急激に進歩してい ます。近い将来コンピュータミュージックは、必ずや大きな地位を占めるに違 いありません。その時マルチ音源はどうなっているでしょうか。コンピュータ ミュージックの目玉になっているかも知れません。一方従来のCDなどではそ れに対抗して、ステレオに替えてマルチトラックレコードが出てくる可能性が あります。ハードディスクによるマルチトラックレコーディング装置は既に存 在しています。テープレコーダーはアナログ、デジタルを問わず、古くからマ ルチトラックレコーディングです。 では問題は何でしょうか。最大の問題は音楽に対する感覚の問題です。日本 の一般大衆は、アンサンブルと言われてもあまりピンとこないのではないでし ょうか。特に日頃生演奏に遠ざかっている人々にとっては、その傾向が強いで しょう。しかし希望はあります。それは若い世代です。なぜなら彼らは学校教 育において、生演奏に良く接しているからです。小学校では器楽合奏が盛んで す。中学・高校ではブラスバンドや、オーケストラもあります。大学ではロッ クバンドや、ポピュラーバンドも活動的でしょう。これらの活動を通して、ま たは身近に接して、若い世代の人はアンサンブルという感覚に違和感はありま せん。またもう一つの希望は、ビートルズからグル−プサウンドの世代です。 彼らは(私もそうですが)若いとき、バンド演奏に憧れ、あるいは夢中にこと があると思います。私もベンチャーズの曲をマルチ音源で聞いてみたかったと いうのが、マルチ音源にかかわった一つの動機でもあるのです。これはレコー ドでは駄目なのです。やはり生演奏でないと血が騒がないのです。普及のため には、最初欧米で売り出すという手もありますが、いかがなものでしょうか。 話が少し飛んでしまいました。仮想現実の話でした。私はなにも仮想現実が 悪いと言っているのではありません。ただ、現実を楽しめた方がいいと思って いるのです。そして自分で新しい現実を作り出せたら、なおすばらしいと思っ ているのです。仮想現実にのめり込むのは危険です。それは言うまでもないこ とでしょう。 ここで反論。そういうお前は、夢ばっかり見ているじゃないか。これが最大 の仮想現実でなくってなんなんだ、ですって。うーん、一本とられましたな、 ははは。