オムニバス編 第4話  <太鼓>                    


 心の奥にあるもの、それは小さいころに聞いたふるさとの音だ。

「一番インパクトのある演奏はなんだろうね」
「おれは太鼓だと思う。特に日本の太鼓は最高だ」
「小さいころ聞いた祭りばやしの音や太鼓の乱れ打ちが、どこか心の奥に残っ
 てるんだな」
「そう、言葉とおんなじで、知らず知らずのうちに身についているんだ」
「音だけじゃなく、小さいころ見た周りの風景とも結びついているんだな」
「だから理屈を言わなくても分かる」
「なるほどね」

 ということは、音出しのデモには太鼓の音が効果的ということだ。

「じゃあ、今度の新製品のデモには太鼓の音を使おうか」
「うん、日本の太鼓シリ−ズで、一回目は各地の祭りばやしを中心にしたもの。
 二回目は太鼓の合奏、全国に○○太鼓と言うのがあるだろう、あれを中心に
 する」
「知らず知らずのうちに人が集まるかもな」
「うん、これで人を集めて、あとは新製品の説明をする。どうだろう」
「よし。決まりだ」

  こうして準備ばんたん、新製品のデモに臨んだ2人だったが、思わぬ誤算が
待ち受けていた。というのは、太鼓の演奏が終ると集まった人達は皆満足して
しまい、新製品の説明を聞かずに帰ってしまったのである。


「こりゃ誤算だったな。演奏終るとみんなすぐ帰っちゃうんだからなあ」
「それだけ、満足したってことか。ということはやっぱり良い装置ということ
 なんだろうなあ」
「でも肝心の説明ができなっかたじゃないか。失敗だったな」
「次はどうする」
「うーん、最初なんらかの手で人を集めて新製品の説明をやってから、最後に
 太鼓演奏というかたちがいいだろうな」
「最初どうやって人集めようか」
「みんながうきうきするような音がいいんじゃないか」
「ブラスバンドにするか」
「ファンファーレもいいぞ」

「やっぱり西洋音楽か」


 ああ、和洋折衷。欧米では、この逆がいいのかも知れません。