オムニバス編 第7話  <目立たないもの>


  あっても邪魔にならないスピーカー群を作って展示したら、誰も興味を示さ
ず成功なのか、失敗なのか分からなかったというお話です。

「インテリア風の装置を作ったんだ」
「それで?」
「展示会に出品したんだけど、反応がいまいちなんだ」
「それは残念だったな。欠点があるのかい」
「いや、ずいぶん細かいところまで念を入れて考えたんで、欠点と言えるもの
 はないと思うんだけど」
「そりゃ変だな。でも何か口では言えない問題があったんじゃない。見にきた
 人の表情はどうだったんだい」
「それが、ほとんど見てくれないんだ」
「そりゃ問題だ。これは重大な何かが隠されているぞ」
「そうなんだろうな。でも皆目見当がつかないんだよ」
「現物はあるかい?」
「ああ、今持って来る」

「これなんだけどさ」
「これ?良くできているじゃないか」
「ぼくもそう思うんだけど」
「これはどこにも欠点はないし、インテリア風としては最高の出来じゃないか」
「そう思うだろう。だから不思議なんだ」
「うーん、で、どの展示会に出展したの。まさかわけの分からず屋ばかり集ま
 る展示会じゃないだろうな」
「いや、まともな展示会だよ。全日本音楽装置展示会ってやつ」
「そうか、で目立つ様に展示したのかい」
「インテリア風と言うことで、会場にある観葉植物の大きな鉢の場所を借りて
 隣に置いたんだ。あまり目立つのも逆効果だと思って」
「それで分かった、この作品は大成功だったんだ。余りにも違和感がなかった
 んで、みんな興味を示さなかったんだ」
「そんなばかな・・・」
「いいかい、見にきた人は初めて見るんだ。だから目立たなくて違和感がない
  と誰も興味を示さないんだよ」
「そうか、こっちは初めから装置だと思っているけど、初めての人は本物のイ
 ンテリアだと思ってしまったのか。うーん、うれしいやら情けないやら」
「ま、そう言うことさ」
「でもこれ売り出すのに骨が折れるなあ」
「そうだな。でもいいものならじわじわ売れるんじゃないか、口コミで」
「うん、ほんとは目立たないけど存在感があるっていうのが一番いいんだろう
 ね」
「なかなか難しいけど、そうなんだろうね。そういうのが長続きする商品なん
 だろうね、きっと」
「ああ、きみの奥さんみたいなのがね」

「えっ?」