オムニバス編 第9話  <レンタル>


「今度カラオケ大会やるんだけどさ。カラオケ貸してくれない」
「俺、小さいのしか持っていないからだめだよ。会場広いんだろ」
「うん、100人ぐらい集まるかな」
「じゃあ、大きいのでなくっちゃ」
「でも、大きいの持ってる人いるかな」
「100人用じゃ、むりだろうな。レンタル屋に聞いてみたら」
「そうか、じゃあ一緒に行ってくれる」

「ごめんください」
「はい、はい、いらっしゃいませ。何をお捜しで」
「カラオケなんだけど。大きな音が出るやつ」
「そう100人ぐらいに聞かせるやつ、カラオケ大会なんだ」
「それでは、これなどいかがなもんで」
「へえー、スピーカーがいっぱいある。これで大きな音を出すのかい」
「いえ、これはマルチ音源といって楽器毎にスピーカーが別々になっているん
 ですよ。もちろん大きな音も出せますが」
「ふーん、マルチ音源か。でもなんでこんなもの」
「これはカラオケと言うよりバックバンドなんですよ。カラオケ大会なら結構
 上手い人も出られるのでしょう」
「うん、そうだけど」
「それなら、これが最高です。プロと同じ気分になれますよ」
「プロと同じ気分か」
「聞く方もそんな感じかな」
「ええ聞かれる方も、プロの歌聞いてるみたいな感じになりますよ」
「そうすると、審査する人にもそう聞こえるのか」
「上手い下手がはっきり出るのかな」
「バックバンドですからねえ。上手く合わしたら上手に聞こえるでしょうね」
「バックバンドか」
「こんなの初めてだなあ」
「みなさん、一度使うと結構病みつきになりますよ」
「上手い人はそうだろうなあ。バックバンドなんだから」
「面白そうではあるんだが」
「まあ、自信の無い人には普通のカラオケにもなります。音ミックスできます
 から」
「じゃあ、これ1台貸して下さい」
「評判良かったら次も借りにきます」
「ありがとうございます。またよろしくお願いします」

「いやいや、こんなのがレンタル屋にあるとは思わなかったな」
「うん。何でも聞いてみるもんだ」
「こういうのはレンタルがいいね」
「でもそのうち気に入って、自分でも欲しくなるんじゃないの」
「歌がうまくなったらね」
「そうそう、カラオケ大会のいいキャチフレーズを考えたぞ。あなたもプロに
 挑戦。バックバンドで歌えます。というのはどうかな」
「うんうん、いいね。これで上手い人がいっぱい集まるかも。名前もカラオケ
 大会改めボーカルコンチェルト大会にしようかな」