一般音楽編 第1話  <カルテット>


 車の中は狭い。狭いながらも楽しいわが車。

「車の中と家の中じゃ、ずいぶん音が違うわね」
「ああ車の中は狭いし、いろんな反射音や共振音があるからね」
「カーオーディオメーカーも大変ね」
「うん、一言でハイファイと言っても難しいね」
「いっそのことハイファイと言う概念から離れてみたら」
「オーディオは元の音の再現が理想だから、そう簡単にはいかないよ。音が悪
 けりゃ誰も買わないしね」
「音のよしあしってそんなに大事なの」
「そりゃそうだよ。最近みんな耳が肥えているんだから」
「と言うことは逆に言うと、最近のカーオーディオはみんなかなりいい音っと
 いうわけ?」
「昔に比べたら、だんちだよ。でもみんな欲が出て、もっといいものを求める
 のさ」
「私も少し欲張ってみようかな」
「なに、さっきはハイファイと言う概念から離れてみたらと言ったじゃないか」
「そうよ、ハイファイは別にして違うことを考えているの」
「なんだい、それは」
「車に楽器をのせるのよ。4台編成でカルテットにするの。どう、なかなかい
 いでしょう」
「おいおい気は確かかい。狭い車の中でいったい誰が演奏するんだ。だいたい
 ハーモニカならともかく、楽器が中に入らないだろう」
「さっきのは冗談よ。実際は独立マルチ音源を使ったカルテットにするのよ。
 車内はコンサートホール、スピーカーが楽器というわけ。もちろんコンピュ
 ータミュージックよ」
「ああそうか。なるほどコンピュータミュージックなら、さほどハイファイに
 こだわる必要がないな。録音した元の音を再現するんじゃないからな」
「それよりも、自分のカルテットを楽しもうってわけ。音のよしあしよりもコ
 ンサートの雰囲気を楽しむのよ」
「初めからこんな楽器の音色だと思えば、音が良いとか悪いとか騒ぐ必要はな
 いってわけか」
「そう。車の中でピアノが響くとか響かないとか言っても、そういうコンサー
 トホールだと思えばいいのよ」
「それが気に入らなければ、自分の好みの音作りをすればいいのか。コンピュ
 ータミュージックだから、その辺は得意中の得意だよなあ」
「どう私、欲張りかしら」
「いやいやそんなことはないよ。なかなかたいしたもんだ。でもぼくは、もす
 こしハイファイにこだわりたいなあ。そうだカルテットならカセットテープ
 でもできそうだな」
「カセットでも?」
「ああ、カセットって4つのトラックに独立に録音できるんだ。ただA面B面
 はなくて、片面だけだけどな」
「カセットなら録音だから、ハイファイが重要になるってわけね」
「その通り。ハイファイでかつライブ感覚。こりゃ最高だー」
「CDでもできればいいのにね」

 まったくです。