一般音楽編  第5話  <起きあがりこぼし>                  


 これは書斎オーディオのすすめである。

  とうとう念願の書斎ができたぞ。とは言っても、寝室の一部を2畳ほど仕切
っただけではあるが。でもこれで本も読めるし、オーディオだって夢じゃない
ぞ。いや、オーディオはちょっと無理かな。しかし、なんとかして音楽を聞き
たいものだ。本は知識の泉、音楽は心のオアシスというじゃないか。書斎に音
楽を、書斎に音楽を、書斎に音楽を。

「また、ぶつぶつ言ってる。音楽がどうしたのよ」
「せっかくできた書斎だ。書斎でいい音楽を聞きたいんだよ」
「ラジカセじゃだめなの」
「ああ、できればマルチ音源で聞きたいなあ」
「あのスピーカーがいっぱいあるやつですか。あれじゃ、書斎がスピーカーだ
 らけになってしまうわ。ただでさえごちゃごちゃしていて掃除が大変なのに」
「うん、確かにその通りだ。机の上にちょこっと乗るようなやつはないのかな。
 考えてみよう」

 Kは書斎の中で、一人自問自答を始めた。

「まずは、何でスピーカーボックスが大きいんだろう、ということから考えよ
 う」
「それは、低音から高音まで一つのスピーカーボックスで扱わなくちゃならな
 いからだろうな」
「ピアノなんか、低音から高音まで出るからな」
「中音・高音だけなら、小さなスピーカーでいいのにな」
「要するに、低音を何とかすればいいんだな」
「ということは、ステレオでもやっている3Dスピーカーシステムを応用すれ
 ばいいんじゃないかい」
「そうだそうだ。低音は定位感がないから、全部の楽器の低音部分はまとめて、
 一つの低音専用スピーカーボックスから出してもいいんだ。そうすれば、楽
 器別に配置するスピーカーは、中高音用の小さいスピーカーでいい」
「結局カルテットなら、1つの低音用スピーカーと、4つの中高音用スピーカ
 ーがあればいいってわけだ。合計5個のスピーカーボックスになるけど、4
 個の大きなスピーカーボックスよりはかなり小さくできるな」
「技術的にはなんとかなりそうだ。あとは配置の工夫で机の上に乗るようにし
 よう」
「低音用は下に置いて、あと4つの小型スピーカーは立体的に配置しよう。そ
 うだ、起きあがりこぼし風にしよう。頭と胴体と左右の手にそれぞれスピー
 カーを置いて、飾りものみたくすればじゃまにならない」
「他にもいろいろ考えられそうだ。ま、自分の好きなようにやればいい」

「おーい。いいのができたぞ。あれもう寝ちゃってる。こりゃだめだ。こうな
 るとこの人は、いくら揺すっても起きないんだから」