一般音楽編 第6話 <星に願いを> モーツァルトの時代のピアノは現代のものとだいぶ違います。ですから現代 のピアノでモーツァルトのピアノ曲を弾くと、当時彼がイメージしていたもの とはおそらく違うでしょう。しかし当時の楽器はもうほとんど残ってないでし ょうし、楽器を再現したとしても、そう数多く作れるものではありません。で すから、モーツァルト当時の音を聞くチャンスはめったにありません。 「やっぱり、作曲家のイメージに沿った音が聞きたいね」 「うん、最近の作曲家なら自分で指揮した録音とかがあるから、作曲家の意図 したイメージが分かるけど、昔の作曲家の場合は良く分からないね」 「録音はないし、楽器も違うし」 「残っているのは、楽譜だけか。でも同じ楽譜でも、楽器が違うと音が全然ち がっちゃうしな」 「それで古楽器を再現して、演奏するグル−プがあるわけか」 「でもそういうの、なかなか聞けるチャンスないからな」 「聞きたいね」 「うん、聞きたいね」 「コンピュータミュージックでやろうか」 「うん」 「ここで大事なのはなんだろうね」 「音的にはかなり生の音に近いのができるから心配ない」 「問題は楽器の音のサンプリングだな」 「楽器持っている人の所へ行って録音しなくちゃ」 「あとは・・・」 「ああ、一番大事なことを忘れていた」 「なに、それ」 「時代考証だ。ほんとにその時代の楽器なのかということを確認しなくっちゃ」 「そうだった。時代劇に自転車じゃあおかしい」 「これは、専門家の力がいるね」 「うーん、もっと楽しくやれるものはないかな」 「自分達の想像でやれるのはないかな」 「そうなるとやっぱり、うんと古いものだな。例えば縄文時代なんかだ」 「縄文時代か。でも当時どんな楽器使ってどんな音を出していたのか、かいも く見当がつかない」 「遺跡から石で作った笛が出てきたことがあるから、音楽があったことは確か だ」 「そのほかの楽器もあったんだろうな。太鼓とか、弓の弦をはじくやつとか」 「そういうのは、腐ってしまって残らないんだ」 「そういうのは想像でやるしかないな」 「じゃあ想像力を高めに、一度縄文村に行ってみるか」 「よし」 縄文村は、山の中にある。そこは道路、鉄道からもはずれ開発の手が及ばな い自然の中。かつてそこに有志が集まり、自分達で縄文時代風の小屋を作った のである。 「着くのが遅くなっちゃた。もう夜だ」 「しかし、星がこんなにもきれいだなんて」 「昔はこんな所で、生活していたんだね」 「何か音が聞こえるよ」 「あ、これは川のせせらぎの音だ」 「虫の音も」 「風で木の葉がこすれる音も」 「みんな自然の音だ」 「昔はこんな音に囲まれて暮らしていたんだ。このほかに動物の鳴き声や、時 には雨や大風の音、雷の音なんかも」 「こんな中でどんな音楽やってたんだろうね」 「やっぱり、自然に調和したやつだろうか」 「それとも、人間の存在を主張したにぎやかなやつだろうか」 「どっちだろう」 「どっちかなあ」 「想像力が高まるね」 「あ、流れ星だ」 「あ、あっちにも」 「こっちにも」 素直な心で、音楽を。星に願いを届けたい。