オムニバス編 第2話  <おでむかえ>
ある小さな国でのお話です。 「ああ来週A国の大統領が来るというのに、歓迎のファンファーレ隊の人数が  揃わない。困ったものだ」 「首相、中学生も動員しますか」 「演奏の途中大きな間違えでもしたら、それこそ恥だ」 「他の国に応援を頼みますか」 「それもどうもなあー」 「いっそのこと録音の音で済ましますか」 「しょうがないだろうな、非常手段だ。君すまないが、B国大使館へ行って必 要な機材を借りてきてくれ」 「かしこまりました」 「ごめん」 「おや、これは首相補佐官のCさんじゃございませんか。いかがなされました」 「実はな、S大使殿。こう言う訳で機材を貸してほしいのだ。お宅の国は立派  なハイテク産業国。大使館にも立派なオーディオ機材やレコードがあると思  ってな」 「そうでしたか。それはさぞお困りでしょう。何とか致しましょう」 「それはありがたい。一生の恩に着るぞ。あしたトラックをよこすから、よろ  しく頼む」 「はい、お任せ下さい」  S大使は、書記官のKを呼んで相談した。 「さーてと、どういうのがいいと思う。K君」 「そうですね。せっかくの機会だからハイテク技術を駆使したものを使って、  びっくりさせましょうか」 「そうすると、やっぱりあれか」 「そうです。あれです」 「16チャンネル独立マルチ音源演奏しかないな。トランペットの15重演奏  +小太鼓だな」 「楽譜のデ−タ入力は、私がやります」 「頼むぞ、K君。わしは装置の方を点検しよう」  次の日、トラックに乗ってC補佐官がやってきた。 「S大使、無理言ってすまなかった。で、ものは?」 「これですよ。これさえあれば大丈夫です」 「これは・・・。金色のスピーカーボックスが16個。すごい」 「これを道に沿って並べるんです。一つ一つのスピーカーからトランペットの  音が別々に出ます。最後の一個は小太鼓ですが」 「まさに黄金のファンファーレ隊だ。で曲の方は?」 「東北オリンピックのファンファーレを編曲して入力してあります。普通のC  Dを演奏するように操作できます」 「有難い。有難い。これで我が国の面目も保てる。恩に着る、恩に着るぞ」  次の週、とうとうA国の大統領がやってきた。迎賓館へ向かう途中、歓迎の ファンファーレが鳴り響く中、オープンカーの中では、A国大統領と首相が顔 を見合わせて話をしていた。 「大統領。わが国も、とうとうハイテク産業を手にいれましたぞ。あのファン  ファーレ隊は、B国からの技術援助で作ったものです。なかなかのものでし  ょう」 「おお、貴国に先を越されたか。それにしてもこのすばらしさは感動ものじゃ  のう。心が高鳴るようだ」 「ありがとうございます。これからもあのファンファーレ隊を拡充するつもり  でおります」 「わが国でも取り入れたいものだが。で、お礼はいかほど出されたのかな?」 「温泉入浴1年分無料と致しました」  えっ、どこの国の話だって。それは○○温泉、にっこり共和国のお話さ。 じゃあB国は? それはね、国旗を見ると分かりますよ。