あの春の日々

1998.3 by Tarumi


待ちくたびれた風が高い空を抜けて
この町の風景もざわめきだす
犀川沿いの歩道 残雪を蹴とばして
いくたび巡る春に心揺らす

城跡のキャンパスに今は人影もなくて
誰も見ない桜だけが咲いてた

遠い春 振り向きもせず
この桜の下を駆け抜けた日々
何も見えない明日に夢をたぐっていた
この町で生きていくことを決めたのも
こんな日だった

長い坂道のぼる あの日の道をたどる
はじめてここに立った日のあのときめき
友だちの呼ぶ声に理由もなくはしゃいでは
光の中駆けてゆく 自由な日々

あの頃の情熱は今も色あせちゃいない
時間の中に 変わらぬ夢探すよ

遠い日々夕暮れの町
夢中で歌いつづけた僕らは
何に向き合い何をつかもうとしてたのか
答えは今もまだ
坂を駆け上る風に吹かれる

遠ざかるあの春の日々
まぶしい今日の陽だまりのような
愛しい人たち
君を駆け抜けたあの日々が
僕らを今もまだ遠い明日へと
誘いつづける


金沢大学時代の思い出をうたったうたです。
この歌のとおり、僕らの学生生活はふりむきもせず、とにかく全力で駆けているような日々でした。
毎日のように通ったのは、教室でなくサークルの部室。未来についての見通しもなく、不安でもあったけど自由だった。
なんであんなに夢中になれたのだろうと思うくらい、僕らはこだわって生きていたと思う。
今確かにあの日々の延長線上を生きているはずなのに、社会人としてまた違ったスタイルの自分がいます。
それはそれで決して悪くない姿なのですが、もしかしたら、もうあの頃の情熱は色あせてしまったのかもしれません。
だけど、毎日の中でふと壁にぶちあたったときに、きっと立ち戻るのはあの日々なのだろうと思います。
それは自分の中の原点であり、これから生きていく上でも何度も振り返り、自分の今いる位置を確かめる風景なのだと思います。
曲としては、今回は「犀川」「城跡」といった地元金沢のことを意識的に取り入れてみました。
メロディがフォーク調にまとまってしまったため、LoveForLifeではアレンジがゆきづまりお蔵入りしています。
歌っている内容は自分の気持ちを表現できたなあと思っているので、機会があればどこかで歌いたいと思っています。