2004.2 by Tarumi


サクラ舞う道を あなたの手をひく
長良橋から堤防沿いに なつかしいあの家へと

透き通る水面に 光る石投げて
幼い頃はあなたのことばかり 追いかけていたんだ

立ち止まる僕の 小さな肩越しで
風に揺れていた ネコヤナギ
覚えはじめの 歌をせがむ
あれは うららかな春の午後


路面電車には サクラ花飾り
やがて町には祭りの響きと 僕たちの笑い声

遠い町で暮らし いつしか僕も
子どもの声に諭されながら 毎日を生きてる

いつのまに あなたのやさしい手のひらも
やせて小さく 節くれた
春のさやけき 風を待つように
僕を待っていてくれた人

ゆるり流れる 川のほとりで
あなたに 教えられた歌を
そっと子どもに 口ずさむ
それは 終わりなき春の夢



2002年2月、大好きだった岐阜のおばあちゃんが逝った。
「もう長くはないから、一度顔を見せに岐阜に戻って来い」と父に言われ、2月半ばの週末に帰省。
その列車の中で、この曲のモチーフを創り始めた。
久しぶりに見るおばあちゃんは、すっかりやせ衰え、病院のベッドの上で小さく横たわっていました。
母に身体を拭いてもらいながら、僕が呼びかけると、少し目をこちらに向けた様。
「あんたが来たこと、わかってるみたいやよ」と母。
本当にわかっていてくれたのだと思う。だって次の日、僕がまだ帰らないうちにおばあちゃんは逝ってしまったのだから。

3回忌を前にこの歌を完成させておこう、と思い、創りました。
おばあちゃんと歩いた、長良川のあの堤防沿いの風景を、僕はきっと持ちつづけていくだろうと思っている。