志 の復活を
 次の文章は神戸新聞のコラム「正平調」(6/24のものです。
 日本の高校生はひどく活力を喪失しているらしい。「学校に誇りを持てず、勉強離れも進み、積極性を失い、自分はだめな人間だと思っている」こんな調査結果が発表され波紋を広げている。
 財団法人日本青少年研究所が最近出した「高校生の未来意識調査日本・米国・中国比較」のデータがそんな落ち込んだ現状を浮き彫りにしている。対照的に中国は前向きで張り切った雰囲気を漂わせている。
 学校生活に張りがあると感じる生徒は日本38%、米国44%、中国は78%もいた。学外でほとんど勉強しない生徒は日本51%、米国27%、中国は4%だけ。学校に対し愛着、誇りを持つのは日本36%、米国63%、中国68%。際立った対比を見せる。
 「自分は積極的」と思う生徒は、米・中が八割、日本は四割。「人並みだ」とするのは日本は六割、米・中は九割以上。「自分はだめな人」と悲観する割合は、日・米・中各73、48、36%。自身を貶(おとし)める自己否定型の若者が日本で増えている。
 夢もしぼむ。日本の高校生の最高の夢は「好きなことをする」。米中は「希望の大学に入ること」に全力を傾ける。将来、高い社会的地位を目指す生徒は米25%、中32%、日本は9%だけ。お国柄の違いもあるし、夢を摘み取るような大人社会の状況もあるが、志の喪失は寂しい。
 しかし、志を失ったとき、新しい志が生まれる。クラークが札幌で「大志を抱け」と叫んだのも、そんな状況下だったか。高校生の踏ん張りはむろんのこと「志の復活」を促す環境も整えてやりたい。 (正平調 終わり)
*もうひとつ統計数字を
 「日米中の中学生の生活意識調査」日本青少年研究所、11/7 発表
3カ国の中学生各1,000-1,300人を対象
二 将来の希望・夢
1 情熱を注いでやってみたいこと
  日本:「スポーツの分野」32.4%、「音楽の分野」25.1%、
     「ファッションの分野」
23.0
  アメリカ:「スポーツの分野」46.6%、「学問の分野」45.7
  中国:「ITの分野」44.9%、「学問の分野」33.3%、
     「文学の分野」
31.3
3 希望する学歴
  日本:「4年制大学まで」38.9%、「高卒まで」27.9%、
     「専門学校まで」
19.8
  アメリカ:「4年制大学まで」30.1%、「修士まで」28.6%、
       「博士まで」
18.0
  中国:「博士まで」47.5%、「修士まで」23.7%、
     「
4年制大学まで」19.9
三 自己評価
 「自分に起こったことは、すべて自分の責任だ」
   日本
25.2%、 アメリカ59.7%、 中国46.9
 「計画を立てたら、それをやり遂げる自信がある」
   日本
9.8%、 アメリカ54.2%、  中国32.8
 「私は自分に大体満足している」
   日本
9.4%、  アメリカ53.5%、 中国24.3
 「私は人並みの能力がある」
   日本
15.6%、  アメリカ56.5%、 中国49.3
 「私は他の人々に劣らず価値のある人間である」
   日本
8.8%、  アメリカ51.8%、  中国49.3
 五 学校生活
1 部活動の参加
  日本:「運動部に入り、積極的に参加している」54.8
  アメリカ:「運動部に入り、積極的に参加している」44.5%、
       「文化部に入り、積極的に参加している」
44.1
  中国:「入ったことがあるが、今は入っていない」50.7
2 成績の示す意味
  「努力の程度」 日本69.5%、アメリカ63.9%、中国79.7
  「先生の教える能力」 日本33.1%、アメリカ54.3%、中国52.1
3 数学授業の理解度
  「ほぼ理解できる」 日本20.7%、 アメリカ30.0%、 中国40.7
  「ほとんど理解できない」 日本9.7%、 アメリカ2.2%、中国3.5
      当塾では、高2・3年生には宿題を課していますが、たまにやってこない生徒もいます。「先生、本当に忙しいんやデー」と言いますが、それでいて漫画と携帯は手放そうとしません。「もう一ランク上の大学を目指しては」と助言すると「ええねん。僕の実力はこんなもんやから」と最初から努力を放棄してしまう。
最近、大都会の私立の中高一貫校で使用する教材を入手しましたが、中2でこちらの高1レベルの問題をやっています。彼らは中1の段階で目標大学を決めて勉強しています。こんな生徒を相手に全国区の大学入試に臨まなければならないのですが、こちらは生徒はその緊迫感が皆無に近い。高3の初めになっても目標学部が決まっている程度というのが大半。今年度からの「ゆとり教育」のおかげで公立校の学力は低下するのは必然。が、それが「正平調」に書いてある通りの意識実態ではどうにもなりません。この公私の格差を埋めるのは個人の自覚と努力しかないのです。高校生の皆さん、何事も他人や社会のせいにしないで自分で努力してください。
中学生の調査でも、情熱を注ぎたい分野に「学問」が顔を出していないのは日本だけ。希望学歴も日本が一番低い。安楽な生き方のほうへ流れていっているようで心配です。

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