歴史の本当の姿とは

  

「原爆を投下するまで日本を降伏させるな」
    -- トルーマンとバーンズの陰謀

                   鳥居 民 著   草思社 (270ページ)

 ---広島・長崎に対する原爆投下により、終戦が早まり、結果的に日本本土決戦がなくなって数百万人のアメリカ兵や日本人の命が救われた。--- 

これが、私たちが教えられてきた日本史の知識です。 この通説に対して、著者は、様々な伝記や資料をひも解き、時の大統領トルーマンが表題の意図でもって、日本の講和を求める動きを牽制して、終戦を遅らせたと結論付けている。

 トルーマンは、ルーズベルト大統領の急死に伴い副大統領から大統領になった人物で、政界だけでなく、世間一般からも「小物」の評価しかされていなかった。 大統領職について初めて原爆開発の話を知り、国務長官のバーンズと組んで、これを利用することを思いつく。 偉大な大統領というイメージを内外示し、国際社会でソ連のスターリンとイギリスのチャーチルと互角に渡り合うために、さらに東ヨーロッパと中国で急速に影響力を増していたソ連の共産勢力を将来的に封じ込めるためにも、原爆実験の成功を世界に公開する必要があると考えた。 そのためには、アメリカ国内での秘密の実験ではなく、戦争の場で使用してその威力を見せ付けなければならなかった。 それまで、戦争の際の爆撃対象は、原則として、相手の軍隊や軍事関連施設に限られていたのが、米軍は日本の主要都市に焼夷弾をばら撒き、焼け野原にする作戦を展開、必要以上の死傷者を生み出していた。 著者は、広島と長崎もこの延長線上で、トルーマンの世界戦略の犠牲になった、と論じている。 

 最近の日韓、日中の歴史学者間の論争にも見られるように、歴史解釈というのは本当に難しいもの。
専門家の間でもそうなのだから、ましてや資料も知識もない私たち凡人にとっては、専門家の意見を信じるしかない。 もし専門家の誰かが、この著者の論拠がおかしいというのであれば、ぜひとも反論の判断材料を示してほしいと思います。




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