「探検
! ことばの世界」
  
         大津由紀雄 著  ひつじ書房   
A5版 159ページ

 最近、漢検がブームになっています。1字でも多くの漢字を知っている事は大切なことです。 でもそれ以上に、言葉の仕組みや使い方を習得しないと正しい理解や表現ができません。 この本は、あいまいな文、連濁の話し、依頼の疑問文、「て」「に」「ら」抜き言葉や活用形に関して、英語との比較で説明しています。 学校で習ったような文字通り文法的な説明ではなく、日常何気なく使っている言葉の法則性を、分かりやすく解き明かしてくれます。 1ページおきに漫画を入れるなど、肩のこらないつくりになっています。 中学生でも十分理解できます。

 著者が述べているように「今回の探検の重要な目的の一つは、日本語と英語がもつそれぞれに独特の性質(多様性)を探るとともに、表面的にはずいぶんと違っているこの二つのことばに共通する特徴(普遍性)があるのだ、ということを分かってもらうこと」であり、読み進めていくにつれて、なるほどと納得させられます。 

 「日本語も英語も、そしてどのことばも同等のことばで、たとえば、英語の方が日本語より優れているとか、その逆であるということはない。 よく英語は国際共通語と言われる。 英語がそうした役割をある程度果たしていることも事実だけれど、それは英語がほかのことばより優れているからではない。 ことばの本質とは関係のない事情によって、たまたまそういう役割を果たすことがあるというだけのことだ」という言葉は、子供を小学生低学年から、英会話教室などに通わせているような”英語キチ”の人にぜひ考えてもらいたい指摘だと思います。 

 この著者は、別の本の中で、最近の脳科学の発達を概観して、「例えば、早期英語教育というと、その点だけに注意が集中しがちですが、仮にその面で効果があったとしても、反面、そのことによって、他の能力の発達が抑制されてしまうという可能性だってあるかもしれない。 子供は、社会の中で、全体的個として発達していくのです」と述べています。 まず日本語の基礎をしっかり学ぶことが基本だと思います。

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