奇跡のリンゴ木村秋則の記録  石川拓治 著                                  幻冬舎   200n

 私たちが口にするリンゴは、化学肥料や防虫剤、防黴剤などの農薬を年に何度も散布しないと実らないのだそうです。 その常識に挑戦して「絶対不可能」を覆し、「こんな美味しいリンゴは食べたことがない」と言わしめるリンゴ栽培に成功した木村さんの奇跡の軌跡を、ノンフィクションライターの石川氏がまとめた本です。 NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」でも紹介されたことがあるので、ご覧になった方もおられると思います。

 リンゴ農家に婿養子に入った木村さんは、奥さんが農薬過敏症だったことと、偶然に知ったミカンの無農薬栽培の話に興味を持って、リンゴの無農薬栽培を決意。 しかし毎年毎年、見事に失敗し、一家は6年間文字通り極貧生活を強いられ、彼は自殺も覚悟したほど。 ふとしたきっかけで、土の大切さに気づいたことから、リンゴの木も蘇生し、9年目でやっと花が咲き実がつくようになった。 この間、義父母、奥さん、子どもたちも文句ひとつ言わず、木村さんを支え続けたという。 

 この本を読んで、最近は、大学新卒で就職した新社会人は、3年以内に三分の一が転職するという話をおもいだしました。 仕事が自分の希望していた内容でない、上司の指導が厳しすぎる、残業がきつい、などが理由だそうです。 昔のような「石の上にも三年」という気概が希薄です。 卒塾生たちは、失敗を繰り返しても信念に向かって挑戦し続けるという木村さんのような職人・百姓気質というものを身につけて欲しいと願っています。 
 学問、知識だけではだめなのです。「リンゴの木は、リンゴの木だけで生きているわけではない。周りの自然の中で、生かされている生き物なわけだ。人間もそうなんだよ。人間はそのことを忘れてしまって、自分独りで生きていけると思っている」 「科学者がひとつひとつの部品にまで分解してしまった自然ではなく、無数の命がつながり合い絡み合って存在している、生きた自然の全体と向き合うのが百姓の仕事なのだ。 だから、百の仕事に通じなければならない」    何という信念だろう
!!! 


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