何事も考え方一つ
「二人で紡いだ物語」 米沢冨美子著 (出窓社)
著者は、アモルファス(非結晶物質)研究では世界をリードする物理学者で、日本物理
学会会長まで勤めた人です。文字通り、超エリートなので、私たち凡人とは違って当
然なのですが、彼女のすごさは、頭のよさだけではありません。結婚してから胞状奇
胎という子宮ガンの手術を受け、それでも子供を三人生み育て、さらに乳癌による両
乳房の全摘出手術、肋骨を3本も切断している。この出産や手術で入院しても三日目
から病室で論文を書き、一週間後には退院して大学の仕事に復帰。さらに、一流企業
の社員だった夫は、家事も育児も一切手伝わなかったばかりか、彼女が疲れ果てて家
で論文を読まないでいると「君は最近怠けているんじゃないか」と叱ったという。彼
女が偉いのはこの後の考え方です。「目から鱗の言葉だった。夫以外の誰がこんな辛
辣な忠告をしてくれるだろう。ほんとうにありがたい」と思い、四時間の睡眠で博士
論文を書きあげていく。いわゆる男女平等論者が知ったら何と言うだろう。凡人の私
にはとても真似などできませんが、こんな人もいるんだということを知って感動しま
した。皆さんもぜひご一読を。
メール 最近読んだ本からへ ホーム