中年夫婦のアメリカ・ホームステイ
(11) 合理的な大学
アメリカには国立大学はない。 州立大学か私立大学、および日本の短大並みのコミュニティー・カレッジがある。 日本のセンター試験的なものも、予備校の全国模試といった試験もない。 従って日本的な偏差値によるランク付けはない。 しかし、高校3年生は、全国的な規模で行われる高校卒業認定試験は受けている。 各大学は、この高校卒業認定試験の成績と、論文審査で入学者を決めている。 そこでマスコミが毎年、大学の評価 (入学生の高校卒業認定試験の成績、教授一人当たりの生徒数、予算規模、図書の充実度、教授論文の引用回数、など) を公表しており、ハーバード、エール、スタンフォードなど伝統のある私立校の評価が一番高い。 各州に州立大学があり、シアトルのあるワシントン州ではこの州立ワシントン大学が一番評価が高い。 2004年度のある調査によると、*「世界トップ500大学」で、ワシントン大学はなんと20番目にランクされていたので改めてびっくりした。
この大学は夏休みにも普通どおりの授業があることは前に書いた。 (他の大学も同様なのかどうかは知らない)。 早く卒業したい人だけでなく、周辺の私立大学やコミュニティー・カレッジの学生で、成績上位者が授業を受けに来る。 この大学の単位は自分の大学の単位に認めてもらえるのだという。
また逆に、アメリカは卒業大学名だけにこだわることは少ないので、この大学で成績が振るわない学生は、他のレベルの低い大学に変わり、そこで好成績を狙うものもいる。 そのほうが就職に有利なのだそうだ。
ある日の学生新聞に、学部学生の平均年齢は25歳いくらと載っていたので、いわゆる浪人などいないはずなのにと不思議に思った。 大学の学費は全額親の援助というのは日本に比べてはるかに少なく、さらに何年で卒業しなければならないということもないので、学資がなくなれば休学してアルバイトでお金をためて次の学期に登録するという学生もかなりいるそうだ。 どう見ても70歳前後のおばあさんが授業を受けているのにも出くわした。 私も、学籍番号を持っているので、もう一度勉強したいと思えば、学費を納めるだけでいつでも学生に戻れる。 どう見ても、高校1年生ほどにしか思えない幼い女子学生も見かけた。 ものすごい秀才で、飛び級、飛び級で大学生になったそうだ。 入試でしか入学できない日本の大学に比べ、なんと自由度の大きいことだろう。 (今年、中国で、10歳の大学生誕生が話題になった)。
私がたまたま話したアメリカ人の女子学生は「高校を卒業して親から独立できたことが一番うれしい」と話してくれた。 赤ん坊の時から個室に寝かされ、両親だけでパーティーや映画、音楽会へと出かけてしまい、ベビーシッターをつけられて留守番するのに慣れ、「自由と独立」の精神を叩き込まれてきたからなのだろう。 彼女らに比べると日本人の学生はいかに甘やかされ、また甘えていることか。 日本の若者は、学生時代だけでなく、就職してからも、「パラサイト・シングル」とかいって、親と同居して独身生活を楽しんでいる者が多い、とアメリカ人が知ったら何というだろう。さらに、この大学は、両親が州内に住んでいない学生(外国人も含め)は、州内出身学生の3倍の学費を納めなければならない。 州に税金面で何も貢献していないのに、大学教育に州の予算を平等に出さないといけないからだそうだ。 「なるほど」と、うなってしまった。
卒業後は、寄付集めも積極的だ。 いまだに年に2回ほど、大学の同窓会事務局や学部から同窓会便りや学部ニュース同封で寄付金の依頼が来るし、年1回東京で開かれる同窓会日本支部の集いに、大学の学長が来て、寄付の依頼をすることもある。(「駐日アメリカ大使と握手」参照) 10,000円を寄付しても丁寧な礼状が送られてくる。 また皆よく寄付するようだ。
10年ほど前、マイクロソフト社が本社をシアトル市の郊外に置いたが、その後、会長のビル・ゲイツ氏は、ワシントン大学に父親の名前をつけた法学部(父親の専攻)の校舎と母親の名前を付けたコンピューター教室を一棟寄贈している。
1. ハーバード大 2. スタンフォード大 3. ケンブリッジ大
4. カリフォルニア大バークレイ校 5. マサチューセッツ工科大
6. カリフォルニア工科大 7. プリンストン大
8. オックスフォード大 14. 東大 ・・・ 21. 京大