例えばこの満天の星に願うなら
この時を止めてくれねェかなァ…と
そしたら時間は動かない。
でもそれでいいんでィ。
キミがいた物語/03:バイバイの約束
ここは、武装警察・真撰組の屯所。
局長・近藤を先頭に、副長の土方、一番隊長の沖田と続いている。
朝方も日中もガヤガヤしているが、そんなことは夜だって関係ない。
相変わらずのにぎやかさだ。
「総悟。ここ最近仕事熱心と聞くが………」
真撰組副長・土方が一番隊長・沖田に静かに話す。
「仕事熱心なのはいいコトじゃねぇですかィ。…ちゃんと仕事しよろ。土方。」
「そんなこと言ってんじゃねぇ。総悟!お前は…」
「あーあ。土方さんの話が長くなりそーなんで俺は一足早く行ってまさァ。」
「聞け総悟。…ッ!お前の気持ちもわかる…!だが、この先の事もちゃんと考えておけ。」
「………。」
その声は襖を開けて部屋から出ていた総悟にもちゃんと届いていた。
とりあえず声は。話の内容は届いているかはわからない。
ただそこから動けずにいた。一歩も動かない。
なぜ?それは自分が一番よく知っている。
この先の事…
そんなこと…言われなくてもわかってまさァ。土方さん。
…ただ、どうしたらいいのかわからねェだけでさァ。
今日の総悟の勤務は夜勤にあたっていた。
仕方なく夜の見回りにへと行く準備をする。
涼しい風に当たれば、いい考えが見つかると思ったから。
ところが、いい考えが見つかるところか、今一番逢いたくないヤツを見つけてしまった。
夜兎族の少女・神楽。今は珍しく傘は持っていない。
それはこんな時間に天敵の太陽が昇っていないから。
太陽がないからって散歩かィ?こんな時間に?物騒だなァ。
「チャイナじゃないですかィ?こんな時間に出歩いていると怪しい奴につかまりますぜィ?」
「…よく見たら目の前に黒い服着たあやしい男がいるネ。お巡りさぁーん!ヘルプ!ミー!!」
「俺がそのお巡りでィ。こんな時間にこんなことろで何をやっているんでィ?」
「……お星様を見に来ただけヨ」
「お星様?」
夜空を見上げると、まるで人工プラネタリウムのような星空だった。
あまりにも考えすぎていて下ばかり向いていたのだろうか。
全然空には気がつかなかった。
太陽も月もない、澄み切った空気に星だけの夜空。
満天の星空に言葉を失い、ずっと空を見上げていた。
普段喧嘩ばかりの二人にも穏やかな時間が流れているような感じがした。
喧嘩はホント些細なコト。
周りが知れば、こんなことで喧嘩をしていたのか…と呆れるほど。
でも今はそんな感じじゃないのは、雰囲気からも読めていたのかもしれない。
「…この星のどこかにマミーがいるアルヨ…」
「なんでィ。お前の母親、どっかの星にいるのかィ?」
「違うヨ!…前にパピーが言っていたネ。」
…パピーってあのエイリアンバスターの海坊主かィ。
「…マミーはこの星の中で一番きれいな星になったって…パピーが言っていたアル。」
それは…つまり…コイツの母親は――
もう…いないってことで……
姉上と同じ。
この世界にはいない。
この広い世界を探し続けたらどこかに居るような気がして
必死に探すけど、どこにもいない…もういない。
「…お前は…母親がいなくて淋しくねェのか?」
俺は何を聞いているのかさえ分からなくなっていた。
もしチャイナが、『淋しい』って言ってもかける言葉なんて見つからないのに。
『淋しくない』って言ったらそれまで。
俺には姉上がいた。
親代わりのようで、沢山我儘も言って結構困らせもしたけどたった一人の姉上。
でも、もうこの世界にはいない。
姉上を失った瞬間俺はヒトリになった。
もう、家族は誰もいない。
周りには真撰組の連中がゴロゴロいるが、心の奥底はヒトリ。
それは『淋しい』かったのか?わからない。
いつも弱さなんて見せる事も出来ない強がりな日ばかりすぎていてわからない。
わからないんだ。『淋しい』のかさえも…
「…淋しかったアルヨ…。でも、またどこかで逢えるってパピー言ってたネ!だからきっとどこかで逢えるヨ!」
…また逢える?
それは絶対な約束なんかじゃなくて少しの希望にしたくて…
でも本当は逢いたいんだ。
再び逢えることができた時に胸張って生きていたといえるように
顔を隠すことなくちゃんと逢えるように…
だから俺はァ――…
「…チャイナ。」
「ん?何アルカ?」
「オレ…明日から戦に行くんでさァ」
「…戦?」
「とんでもねぇ敵がいてさァ、真撰組一番隊長のオレの出番って言う訳さァ」
「…強いヤツアルカ?」
「…多分なァ。」
「そう…アルカ…。」
少しの沈黙が流れたが、先に口を開いたのは神楽だった。
「…じゃあ、お前が帰ってきたらいつもの喧嘩の決着をつけてやるヨ!だから、ちゃんと……帰ってこいヨ…?」
それは言葉を少し言い変えると『死ぬなよ』と言っているようで…
そうだなァ。このままチャイナに逢えねェのは御免だなァ…
その割には酷なヤクソクだけど…
「……ああ。帰ってこれたら決着付けるさァ。」
それからは他愛もない話。
何を話したかはあまりにも小さいことだったから覚えていない。
少なくとも明日から戦なんて感じないような他愛もない話だった。
それも当然。なぜなら――――……
それから翌日、沖田総悟の姿を見る者はいなくなった。
江戸内では彼の姿を見かける者はいなかった。
でも一部で動く影もあった。
「…このままではダメだろ。俺たちが動かねーとな…」
「でもよートシ。いいのか?勝手なことをして?」
「ああ。ここで終わる訳にはいかねぇ…。このままじっとしていたらこの先何も変わらねぇよ。
それに俺たちは、あのチャイナ娘には言うなと言われただけだ。」
*あとがき*
沖神らしくなっているのかは謎v
相変わらずですがこんなにほのぼのしてていいのかなぁと思いますv
次回からはいろんな人たちが出てきますよv
まだ出ていない人たちがそろそろ出てきますよv
*次回予告*
動き始める者たち。
それはかすかなキセキを信じて。
一歩踏み出す背中を押すために。
それは、残酷を運ぶ風のように。
2009/06/07 雛乃