蒼い空が似合う空は

どこ見渡しても雲ひとつなくて

今日はいいことありそうな予感がすると思った。

かすかに優しい風が吹きながら…








キミがいた物語/07:宣戦布告








「銀ちゃ――ん!私行ってくるネ――ッ!!」
「…おぅ。」
「気をつけてね。神楽ちゃん。」
「まかせるヨロシ!」
日除けの日傘をさして万事屋を出掛ける。
行先は決まっている。真撰組・屯所。
つい、この間まで神楽ちゃんには知らされていなかった沖田さんの病気。
先日、沖田さんの言葉で告げられて、それから毎日お見舞いに行っている。
変わった事と言えば神楽ちゃんに笑顔が戻ってきたこと。
沖田さんが神楽ちゃんに病気の事隠していた時は日常的に笑顔が消えていた。
無表情。もしくは、無理矢理な作り笑顔。
それが沖田さんに逢っただけですっかり元通り。
その中で僕は一つだけ気になることがある。



どうして沖田さんはあんなに頑なになってまで神楽ちゃんに言わなかったのだろう。



近藤さんや土方さんが銀さんや姉上に話していたんだ。
僕のように人つでに知れ渡ってしまいかもしれないのに…
みんなが神楽ちゃんに黙っていたとしても、どこかでズレが生じて
いつかは知ってしまう日も来るかもしれないのに…
どうして―――……?




「おい。元気アルカ?」
「…まだ、くたばってはねェようですぜィ。」
神楽は無事屯所に着き総悟の部屋にいた。
屯所は静まり返っていて、どこか淋しい感じはするが…
総悟の部屋に向かう神楽に隊士たちは別に驚きもしなかった。
「そうカ。よかったアル。」
今まで喧嘩ばかりしてきたけど、そこには見たことがない様な神楽の笑顔があった。
「…そうかィ。」
「うん。早く元気になったら喧嘩の続きができるアルヨ!」
「……。…そうですねィ。…なぁ。チャイナ?」
「チャイナじゃないネ。神楽ネ。」
強く言いなおす神楽。その様子に戸惑意を隠せない総悟。




…全くこのチャイナ娘は人に期待を持たせたり、錯覚だと思わせたり…




人の気もも知らないで――…




「…神楽?」
「何アルカ?」
「肺炎は人にうつってしまう恐れがある病気でィ。毎日来てくれるのいいが、うつってしまうぜィ。」
「私は夜兎ネ!頑丈アル!そんな病気私にはうつったりしないヨ!」


だから大丈夫アル。
逢っても平気ネ。
だから、逢わないとかそういうこと言わないで。
総悟のいない外はつまらないアルヨ。


「……そうかィ。」


夜兎でも頑丈でもこの地球の病気。
今は咳き込むくらいまでだが、これからひどくなった症状を見せたくないんでィ。
血を吐く姿も弱っていく姿も一番に神楽に見せたくないんだ。
いつも力いっぱいにケンカしていた君だから。
あの時の約束が果たせないこと言えなくて、弱っていってしまう自分を見せたくないんでィ。
「そんなことより今日面白いことあったネ!」
「なんでィ。」
「えっとねーv銀ちゃんがね――…」




「神楽ちゃん。迎えに来たよ。」
万事屋の一員・志村新八が迎えにきたようだ。
神楽が帰ってこないから銀時に頼まれたのだろう。
「新八ィ。もう来たアルカ。早いアルナ。」
「早いって言っても、もう夕食の時間だよ。銀さんも待っているし…」
「そうアルカ…じゃ準備するから待つヨロシ」
神楽が部屋から出ていき部屋には男二人が残った。
いきなり気まずい雰囲気になったが、新八は話しかけた。



「…具合、大丈夫なんですか?」
「まァ、くたばってはねェですぜィ。」
それはよかったです。っと新八は安心した。
それともう一つ。今なら気になることが聞けるかもしれないと思った。
この部屋には今神楽はいない。だからきっと今がチャンスなのだろう。
「…メガネは誰に聞いたんでィ?俺の病気の事。」
新八の質問よりも総悟の質問の方が早かった。
思いもしなかった質問に新八も戸惑った。
「え?あ…病気の事ですか?…それは、姉上から…」


――姉上、か…


重ねるのはもう先に逝ってしまったミツバの姿…



「…なら姉御に誰が話したんでしょうねィ…」


え…?


…沖田さんは知らないんだ。
近藤さんと土方さんが姉上と銀さんに話していたこと。
知らないんだ…。
でもそんなこと、僕が勝手に話していいのかな?
いや。いい訳がない…。


「…それは言えませんが…僕も沖田さんに聞きたいコトがあるんです。」
「なんでィ?」
「どうして、神楽ちゃんだけに病気の事黙ってたんですか?」
「……。」
新八の問いに虚しくも総悟の返事は帰ってこなかった。
答えるつもりがないのか、関係ないって思われているのか、それとも…
今までの雰囲気とは一変して、かなり重い空気に変わった。
「神楽ちゃん。今はちゃんと笑っていますが、先日までは笑顔がなかったんです…」
それでも新八は語る。
「無理矢理作った笑顔って言うか…とにかく笑っていなかったんです。」
「…それと俺が何か関係あるというんですかィ?」
「神楽ちゃんが前と同じように笑うようになったのは、病気のことを話した沖田さんに逢ってからです。」
「……。」
「…沖田さんにも考えはあったのだろうと思います。
 でも僕は、最初から神楽ちゃんに本当の事言わなかったのかなぁって…
 他のみんなにまで『神楽ちゃんには絶対に話さない』と口止めまでして…」


頑なに神楽ちゃんに隠そうとして…
一体どうしてなんだろう。
いずれわかってしまうことなのに…



「ふ――ん。そういうことかィ。」



「え?」



総悟は何かを確信した。その眼にはさっきまでないものがあったから。
「まァ…答えるなら、アンタには関係ない事でさァ。」
病気の事…神楽に言わなかった事も内緒にしていたことも
きっと誰に話すことなんてない。
話す気もない。
だから、コイツにも関係ない。
ただ、それだけでィ。



やっぱり予想通りの答えだった。
それでも、僕にとっては大きなこと…
どうして…?
それは―――…



「それは…僕が神楽ちゃんのこと好きだと言ってもですか?」



「え…?」



いきなりすぎたその言葉に総悟は言葉が出なかった。
また、当の新八も自分の発言に驚いて固まっていた。






『―――…どうして姉上はこの話を僕にしたんですか?』
『――…だって、新ちゃんは神楽ちゃんの事好きなのよねv』
『ええええぇぇぇえええ―――!!姉上ッ!!ちょっと待って下さいよッ!僕そんなこと姉上に言いました!?』
動揺する新八をよそにお妙はニッコリとした笑顔でこたえる。
『あら、私は新ちゃんの事何でも知っているつもりよ。』
『でも…そんなこと…』
『あら?どこかはずれてる?』
『……』
黙っている新八を見つめてお妙はさっきと違う笑顔で語る。
『ねぇ新ちゃん。人を好きになるのは素敵なことだわ。それが誰であってもよ。』

いくら想い人が脈ありでも、無謀でも、どちらかもわからなくてもいいの。
そんな想いを世界中の人、全てに持てることはできないわ。
でもね、たった一人にでも持てることが奇跡と呼ぶのか運命と呼べるかもしれないじゃない。
だから――――…

『その想いは大切にしなきゃね!新ちゃん…
 でもね、その想いは気付いてもらうことは難しい事で…神楽ちゃんが相手ならそれはもっと難しいわ。
 言わなきゃ伝わらない事もあるもの……ね?―――――新ちゃん。』






「新八。どうしたアルカ?」
「……。」
「屯所出てから様子がおかしいネ。」
「……。」
「…黙ったままアルヨ?」
「……。」
「そう言えば帰るとき総悟もおかしかったヨ。」
「……え?」
「あ。しゃべったアル。」
「…総悟って沖田さんの事?」
「そうアルヨ。他に知り合いはいないネ。」
「…名前で呼んでいたっけ…?」
「つい最近からヨ。」
「へ――――…そうなんだ。」


変わっていく。少しずつ。
神楽ちゃんと沖田さんの何かが変わっていく。
この間までとは少し違う…何かが。


「ねぇ神楽ちゃん。」
「ン?何アルカ?」
「さっき沖田さんと少し話をしてきたんです。」
「そうアルカ。アイツ元気だったダロ。」


だから病気なんてすぐ良くなるネ。
そして喧嘩の続きをするアルヨ!


「…うん。」
以前まで笑顔を失っていた神楽ちゃん。
でも今では笑っている。
でもそれはきっと沖田さんが作った笑顔なんだ。


『その想いは気付いてもらうことは難しい事で…神楽ちゃんが相手ならそれはもっと難しいわ。
 言わなきゃ伝わらない事もあるもの……』


言わなきゃわからないんだ
ただ待っているだけじゃダメなんだ。
いつも隣で笑ってほしいんだ。
いつも元気すぎて明るいキミだから。
どんな時も笑い飛ばすキミだから。
今度笑顔を失った時は僕が笑顔にしてあげたい。




「…で、何話して来たアルカ?」




「…僕、神楽ちゃんが好きなんだと…言ってきたんです。沖田さんに。」




「え…?」




神楽は戸惑うもの新八の表情は真剣そのものだった。






*あとがき*

今までこういう話を書いたことなかったので
書いている私もドキドキです。
どのように転がっていくのか一緒に
見守っていただければ幸いです。


*次回予告*
秘めていた者。
知っていた者。
想いに振り回され
ココロが巡る。


2009/07/12   雛乃