わからない想いが私を責める。

もう、その場から動けなくなるんだ。

行き場のない想いが私を縛り付けて

もうどこにも行き場なんかない様に…








キミがいた物語/08:グルグルなココロ。








「お――――い。神楽?どうした?」
真撰組・屯所から帰ってきた神楽は何も言わず黙ったまま部屋に閉じこもった。
これまた、見たことないような複雑な表情をして。
迎えに行かせた新八に聞こうとも思ったが、新八も難しそうな顔をしてるのでやめた。
どうしたものかと考え、思い当たると言えば…



沖田君の病気。



何しろ、不治の病・結核。
今の江戸の技術にしても治すことができない病。
だから、本当は見舞いなんか行かせたくなかった。
いつかいなくなってしまう人に逢いに行く事を…
一度、身近な人の死を経験しているっと言っても死は慣れるもんじゃない。



―――慣れるもんじゃねぇ…



でも神楽は行くと聞かない。
ああなれば誰も止めることはできない。
それに再び戻ってきた笑顔を今度は自分が壊すわけにはいかなかった。
それにしても…再び戻ったと思っていたらまたこれか…
一体こんなこと、何回繰り返すことになるのやら…






「なぁ新八。沖田君の様子よくなかったの?」
銀時は仕方がなく新八に聞いた。
黙って何も知らぬよりましだっと思ったのだろう。
でも、当の新八は呆然として立ち尽くしていた。
「……え?」
「いや…神楽の様子がさぁ…」


銀さんも神楽ちゃんの様子がおかしい事に気づいたんだ。
でもさっきの事、言えるはずがない。


「…沖田さんは大丈夫でしたよ…元気でした…」
「ふ――――ん…じゃあ、なんで神楽あんなんなってるの?」
「……」






『…で、何話して来たアルカ?』




『僕、神楽ちゃんが好きなんだと…言ってきたんです。沖田さんに。』






なんであんなこと言ったんだろう。
本当はそんなコト言うつもりじゃなかったのに…
ただ…いつの間にか変わっていく神楽ちゃんと沖田さんの事を見てて
戸惑っていたのかもしれない。
本当はこんな風にするつもりなかったのに。
せっかくの神楽ちゃんの笑顔。
僕が自分で壊してしまった…






一方、真撰組・屯所の総悟の部屋。
さっきまで神楽が見舞いに来ていて、新八が言い放った言葉に何も言えなかった。




『僕が神楽ちゃんのこと好きだと言ってもですか?』




この言葉がココロに残る。
ホントはどこかで知っていたのかもしれない。
アイツが神楽に気があるかもしれないって。
でもどこかで知らない振りをしていたのかもしれない。
そんなことないって。
でも、どこかで気づいていたのかもしれない。
奴の行動を見てて。




「……知るかよ…んなコト…」




行き場の想いが、俺に問いかける。
本当はどうしたいのか。
あの時言ってやらなかったのは本心か?
自己満足か?
でも…俺は―――…




「……神楽……」




そう。これは言ってはいけないことだから。
最後まで守るって俺が決めたことだから…
たとえそれが誰かを傷付けてしまっても…






あれから3日。
神楽は部屋から出てこない。
ご飯も部屋でとっているが食欲は以前の半分。
毎日、日課になっていた沖田君の見舞いにすら行かなくなった。
これに銀時も正直困った。
ここまで部屋に閉じこもっていることがなかったから。
又、この年頃の娘に何って声をかけてやったらいいのかもわからない。
だからってこれ以上部屋の中で居させ続けていくわけにもいかない。
沖田君に残された時間もわからないまま、
このまま引きこもってしまうときっと最後に傷つくのは神楽だ。
でも、変に言っても神楽はきっと出てこない。
まさに、八方塞がりだった。



「…神楽。銀さんちょっと出かけてくるが…留守番してるか?」
神楽の返事はないが銀時は話を進める。
「すぐ帰ってくるから、またこの前のようにどこかに行ったりするなよ。」
この前というのは、雲なしの晴天に神楽を置いて銀時と新八が仕事に行っていたこと。
帰ってきたらいるはずの神楽はいなく、新八があわてて探しに行った。
公園に沖田君と一緒にいたッということだったが…;
少し不安はあるけど、早く帰ることを約束して銀時は出かけた。




『僕、神楽ちゃんが好きなんだと…言ってきたんです。沖田さんに。』




何アルカ?それ…
なんでいきなりそんなこと言うアルカ…
私はみんな好きヨ。
それじゃ、ダメアルカ?
わからないネ……
わからないアルヨ―――……




誰にも言えない想いが私を縛り付ける。
これは何?
何でこんなに苦しいんだろ…
わからないよ…
どこにも行けない。
どこにも行くところなんてない…
私は――――…






銀時が向かったのは恒道館。
新八の家であるが用があるのは、姉のお妙であった。
女の事情がわからない銀時は一応女であるお妙に聞いてみることにした。
一通り神楽の事情の説明をする銀時。
お妙も何か心当たりがあった。
弟の新八の事である。
ここ数日、様子がおかしいとは感じていた。
どこか挙動不審でボーっとしていることが多い。
でもなにも聞かなかったのだ。
聞けるような状態ではないって感じていたから。



「わかりました。明日にでも神楽ちゃんに逢ってみます。」
お妙は簡単に答えた。
神楽が少し不安定なところはあると思っている。
沖田の病気の事があるからだ。
お妙の目からは二人がただの友達ではないように感じていた。
でもココロはまだ子ども。
多分気持ちに気付いていないんだろう。
でもいつかは気付く日が来る。
大切なモノが何なのか。


いいわね。青春って。
何でも一度しかないんだもの。
大切にしなきゃね…




その日の夜、銀時は神楽の部屋の前に立っていた。
明日お妙が来ることを伝えようとしていたが、何日も部屋の中だと出だしがつらい所。


「神楽。開けるぞ。」
返事を聞く前に銀時は押入れの襖を勢いよく開け、銀時は驚愕した。
そこは蛻のから。
神楽がいない。
一応全部の部屋を隅々探してみるがどこにもいない。



「クソッ……どこ行ったんだ…アイツ…!!」



銀時の声が虚しく響いていた。






*あとがき*

ここでの銀さんは父親みたいのがいいですv
不器用そうだけど信念が揺るがないのです。


*次回予告*
想いの迷路の迷子になりました。
考えれば考えるほど
わからないのです。
助けて』と言えなかったのです。


2009/07/19   雛乃