崩れていくのは簡単で
元に戻すことは難しくて
でも…諦めたりすることは
もう…したくなくて…
キミがいた物語/13:全てのはじまり
「話すって何を。別に神楽に話すことなんか…」
「話しちまえよ。お兄さん。その背負っているモノ。そしたら少しだけ軽くなるぜ。」
銀時も神楽に加勢する。
神楽は真剣に神威を見ている。
半分泣きだしそうな表情ではあるが…
「………。」
ホントに変わらないな…神楽。
あの頃と――…
それは故郷の星のコト。
「見て!マミー!きれいなお花アル。」
幼い神楽は母親に向かってつんできたばかりの白い花を一生懸命に見せる。
「…また神楽は…どこからかつんできたのか…」
兄・神威は毎日のように花を摘んでくる神楽に半分呆れている。
「綺麗なお花ね。神楽。また花瓶に飾りましょうね。」
病弱な母はそんな兄妹を見つめながら優しく微笑みを返す。
「うんv」
神楽はあいているビンを探しに部屋から走って出た。
神楽が遠くに行ったことを確認してから母は話し始める。
「神威。」
「ん?」
「神楽のコトお願いね?」
「…え?母さん?何言って…」
「…母さん、わかるの。もう長くないって…だからお願い神威。神楽のコト護ってあげて。
お父さん仕事でいろんな星に行くでしょう?神楽を一人にしないであげて。
そして、夜兎の血に負けないで…」
最後に言われたコトは…よくわからなかったケド……
夜兎の血?
全然大丈夫そうなんだけどな…
「うん。わかったから…早く寝ないと…」
「嘘アル。」
いきなり、いるはずのない神楽の声がして振り向く。
「か…神楽…。」
「嘘アルヨ。兄ちゃん明日パピ―の代わりの仕事アル!私は連れて行けないよって言った!!」
そう言ってさっき摘んだ花をビンに入れて母の見えるところに置く。
「…神楽まで来たら母さん一人になるだろ…神楽は母さんの看病を頼むよ…」
「…。私も行きたいネ…。」
「…なるべく早く帰るから…母さんのこと頼むよ…神楽。」
お互い真剣で譲らなかったが仕方がなく神楽が呟く。
「……わかったアル…。」
アイツは仕事でこの星にはいない。
その代りに俺がアイツの仕事をすることになっていた。
…思ったより時間がかかってしまった…。
神楽怒っているかもな…
急いで家へと向かう道にある人影が見えた。
あの人影…神楽だ。
外は大雨。傘もささずに何やって…
「神楽ッ!」
それは神威の声が届き振り向く神楽。
雨の中だったがわかった。
振り向いた神楽は大粒の涙。
一体何が…?
「神楽…?なんでそんな所に?風邪ひく…」
「…兄ちゃッ……マミーが……」
神楽の表情、言葉を聞いた時ようやく事の意味を知った。
俺は神楽を置いて家へと走った。
母さんに何かあったのか!?
『…母さん。わかるの。もう長くないって…』
―――まさか!!
「…母さ…!!」
部屋にはきれいな顔をして静かに眠っている母の姿だった。
いつもにぎやかなその部屋は不気味なくらい静かだった。
死なんて慣れているはずの俺が…恐るおそる、母が横たわっているベットに近づく。
呼んでも返事はしない。
触れてみても、もう冷たい。
ピクリとも動かない。
響いていた声も、もう届かない。
どうして…こんなことに?
外に響く雨音が煩い。
俺が神楽を置いていったから?
1人にしてしまったからあんなに泣いて…
一体、どの位神楽を待たせたんだろう。
神楽を一人にしないって約束して結局一人にさせて…
神楽を仕事に連れて行けなかったのは、沢山死ぬところを見せたくなかったから。
ペットのウサギにしてもそう。
圧死させた事に大泣きしていたから。
まだ夜兎として未熟なんだと思っていた。
でも一人にさせて身内の…母親の死を目の前で見せてしまった。
約束がなんだよ…
ちっとも守れないじゃないか。
一人にしてしまったじゃないか。
神楽をこんなに泣かせたのは俺だ…!!
俺が悪いんだ…
…違う。
俺が悪いんじゃない。
アイツがいないから…
アイツが仕事とか理由をつけて俺に仕事を回したから
そのせいで神楽を一人にさせたから…
だから…!!
だからこんなことになったんだ。
俺のせいじゃない!
俺は悪くない!!
悪くない!!
「兄ちゃん。パピーも帰ってきたアルヨ……兄ちゃん?」
そのあとのことはよく覚えていない。
憎しみの対象が父へと移ったとき俺の中の夜兎の血が真っ黒に染まった。
「パピ―――――ッ!!――――ッやめてッ!!」
ふと気がついたときには全てが遅かった。
神楽はさっきよりもひどい泣き顔で…
アイツの腕も片方がない。
俺もめちゃくちゃ身体が痛い。
俺が正気になったと同時にアイツも固まっていた。
…どうやらお互いに殺し合いをしていたんだろう。
夜兎の特性の『親殺し』を…
神楽の目の前でしてしまったんだろう…
そうか…これが夜兎なんだ。
きっとこの先何があっても血には勝てないのだろう。
どんなに抗ってもいつか全身麻痺するかのように夜兎の血に染まる。
親だろうが誰だろうが関係なく殺戮を繰り返す。
俺らはこういう種属なんだ。
戦場でしか生きてはいけなんだ…。神楽。
「…アイツ。ケガ…どうだった?」
アイツのケガの処置を見て来た神楽に聞いた。
神楽にケガの処置はできない。時々よけい酷くなるからだ。
周りは『夜兎』というだけで誰も近づかないから自分達でするしかない。
「…パピーは大丈夫アル…。兄ちゃんは…ケガ痛いアルカ?」
「…もう痛くない。…神楽。アイツの腕なかったけど…やったの、俺?」
記憶がないのはこういうときは特に不便だ。
なにしろアイツに聞く訳にはいかないから、神楽に聞かないとわからない。
ホントはこんなこと…聞きたくなんかないのに…!
「…うん。兄ちゃんアルヨ…。あんな兄ちゃん初めて見たアル…」
そうか…。
俺がやったんだ。
所詮夜兎族ってことか。俺も。
「…それが夜兎なんだよ。神楽。」
「え?」
神威はその場を立ち傘をさして、前へと歩き出す。
「…兄ちゃん?」
「神楽…。俺は行くよ。」
「ど…どこに行くアルカ!?」
「…わからない。でも行くんだ。」
「…パピー…に会わないアルカ?」
「……」
神威の返事は帰ってこない。
後ろを振り向かずただ歩いていく。
「私も…置いていっちゃう…アルカ…?」
「うん。弱い奴に興味はない。」
それが自分自身でも…
そう。これが俺の初めての夜兎の血に染まった暴走だったんだ。
『夜兎の血に負けないで…』
母さんが言っていたこと今ならわかる。
でも俺はあっという間に血に染められた。
だから神楽。強くなれ。
これから神楽にも夜兎の血が目覚めるときが来るだろう。
その時俺みたいにならないように強くなれ。
―――神楽。
*あとがき*
夜兎兄妹の過去編ですv
神威が『アイツ』と呼ぶのは海坊主の事です。
神威が初めて夜兎の血で暴れた時も理性はともかく記憶も無かったのかなぁってv
でも、これはここでのオリジナル過去話なので本当の真相は本編にてvv
ホントに沖神の話なのに濃い兄妹だな><
*次回予告*
幼い頃の過去の中には
それぞれの想いが隠れていた。
それを知った今は
どこへ向かって歩いていく?
2009/08/23 雛乃