キミを誰にも渡したくないのも本当。
ずっと一緒にいたいのも本当。
これ以上泣かしたくないのもホント。
最悪、キミを一人置いていくのも…
キミがいた物語/15:笑顔いっぱいの日。
「よ。元気アルカ?」
神楽は日課になっている総悟の見舞いに来ていた。
「…まだくたばってはない様ですぜィ」
「…よかったアル」
その言葉と一緒に笑顔になる。
神楽はここに来ると毎日同じことを聞く。
だから毎日同じように答える。
そうすると神楽は安心したように笑顔になるから。
哀しい顔にはもうさせたくないから。
あと何回こんなことができるかわからないから…
だから今はいっぱいこの笑顔を見ておきたいんだ。
今までは喧嘩ばっかりだったから笑った顔なんてあんまり知らなかったし
喧嘩しなくなった分、いつまでも一緒に居られなくなった分
今の瞬間でも一緒にいたい…
「…神楽。例のモノは?」
総悟は少しずつ起きながら神楽に聞く。
「大丈夫ネ。買ってきたヨ」
神楽は話すと同時に袋を総悟に渡す。
総悟は袋を受け取り白い箱を取り出す。
中には沢山の饅頭がぎっしり入っていた。
「よ。トッシー。お腹すいてないアルカ?」
神楽は白い箱を持ちながら廊下を歩いていたところ土方に逢った。
土方が答える前に神楽は白い箱に入った沢山の饅頭を見せながら話す。
「これ…日頃お世話になっているからって総悟のお金で買ってきた饅頭アルヨ。おいしいから食べるヨロシ。」
「え……。」
土方のその表情に感動とか感激とかは全然なかった。
むしろあったのは恐怖。
見た目はただの饅頭に見えるが安全の保証が全然ない。
むしろ危険なにおいがプンプンする。
「どうしたアルカ?饅頭食べないアルカ?」
神楽はただ聞くだけでその饅頭を食べようともしない。
普段の神楽なら食べるだろう。
すぐ食べてしまうはずの神楽が食べない饅頭なのだ。
「…悪いが今は仕事中だ。だから…」
土方は色んな事を理由にして逃げようとした。
総悟がかかわっているなら間違いなくフツーの饅頭じゃないいだろう。
「おッどうした?廊下で立ち止まって…」
何も知らない近藤が歩きながら聞いてきた。
「ゴリラ。コレ、総悟が日頃みんなにお世話になっているから…って私が総悟のお金で買ってきた饅頭ネ。」
神楽は箱を近藤の方に向ける。
「…近藤さん。やめておけ。総悟のがかかわっている饅頭だ。きっと変なモノが盛られ…」
「おっうまそうな饅頭だな。総悟も世話とかそんなこと気にしなくてもいいのに…そんなのお互い様だろッ」
といいながら近藤は饅頭を一つ選び口の中に頬張る。
土方の忠告は一切聞いていなかった。
土方はため息をつくが既に時遅し…
最初は笑顔で食べていた近藤だったが次第に表情が変わっていく。
…………ッ!!!
「……辛ッ!!!なに…こ…の…まんじゅ……」
どうやら涙も出るような辛さだったらしい。
「きっとそれ当たりアルヨ!唐辛子入りネ!!」
その様子を見ながら神楽は答えつつもなぜかカメラを構えていた。
…パッシャッ
「……ちょっとォォオオ!!何してるのォオ!!」
いきなりのフラッシュに近藤も何が何だかついていけない。
そんな近藤をよそに神楽はさらりと答える。
「総悟が食べている様子がわからないから、このカメラで撮るように頼まれたネ。次はトッシーの番アルヨ!」
土方もそんな様子を見せられて素直に食べるはずがない。
「…チャイナ娘。ちなみに饅頭に当たりは幾つ入っているんだ?」
「ハズレがいたら可哀そうアル。みんな平等に当たりを入れてあげたネ!感謝するヨロシ。」
「へ―――…残念だが俺は仕事中で食べれないが、山崎は今休憩してっからその饅頭差し入れに持っててやれ…」
「…。わかったアル。トッシーも休憩時間に食べるアルヨ!」
「…覚えていたらな。」
その言葉を聞くと神楽は箱を持ちながら廊下を走り去った。
…ふう。
総悟のヤツ、今はそんな余裕もないくせに相変わらず何やっているのやら。
まぁ…あのチャイナ娘の前では元気でいたいのだろう。
弱った所なんか見せたくないんだろう。
わざわざあの娘を部屋の外に出すくらいだからな…
今、余程体調がよくないんだろう。
その後、饅頭の被害者が続々増え続けたという。
「総悟!」
神楽は総悟の部屋の襖をすごいスピードで開け叫ぶ。
「饅頭完売したアルヨ!」
「…ゴホッ…ゴホッ………それは…よかったでさァ…」
「総悟ッ!!大丈夫アルカ?」
饅頭が全部なくなったことに喜んで報告をした神楽だったが総悟の様子を見て不安がよぎった。
「……大…丈夫で…さァ…」
こんなんいつものコトでィ…なんて神楽に言えるはずがなかった。
言えない。何んとか調子を戻そうとする。
「…神楽…。カメラは…?」
「…これアルヨ…」
カメラを総悟に手渡しする。
「沢山取れたネ…」
デジカメだったのですぐに神楽が撮った写真を見てみるコトにする。
いろんな人たちが饅頭を食べて表情を変えているばかりの写真であり、ホントによく取れた写真であった。
「……神楽にして上出来じゃないですかィ…」
「ホントアルカ!!」
嬉しそうにしながらも総悟の隣で自分が撮った写真を見ていた。
「………神楽。」
「ん?何アルカ?」
神楽は総悟に呼ばれ振り向く。すると…
パシャッ……
総悟はもう一つのカメラで写真を撮ったのだ。
「…なっ!!」
神楽はいきなりの出来事だったので呆然としていた。
「何するアルカァァアア!!」
「…;写真撮っただけでさァ。」
「だったらそのカメラよこすヨロシ!」
「イヤだ。」
「よこすアル!!」
………
「チャイナさん?チャイナさんにお客さん来てますよ?」
山崎が襖を開けず廊下から声をかけた。
それにギャーギャー叫んでいた神楽も気付く。
「私にアルカ?」
「うん。多分夜兎の人だよ。チャイナさんと同じ傘持っていたから。」
っていうことは、思い当たるのは一人…
「別の部屋で待っててもらっているから。」
山崎の声に神楽も答える。
「わかったアル。今行くネ…」
「でも待っているのつまんないから勝手に着たよ。」
いつのまにか山崎の隣に神威が笑顔で立っていた。
「うわぁぁああッ!!」
山崎の声と共に神楽も部屋の襖を開け神威に近づく。
「神威。どうしてここにいるアルカ?」
「ん?お侍さんが仕事に行くから神楽のコト迎えに行くように頼まれたんだ。」
神威は相変わらず読めない笑顔で答える。
「…迎えなんか来なくても大丈夫ヨ。もうどこにも行かないアル…。それにしても、よく場所が分かったアルナ?」
「お侍さんが、迷ったら人に聞けばわかるって言っていたからね。」
「…一応ここ警察だからナ。」
「で、神楽。何してたの?」
「何って…お見舞いネ。」
「ふ――――ん。」
神威は総悟の方を笑顔で見る。
その視線に感じた総悟は神楽に聞く。
「…神楽。ソイツ誰?」
「…兄ちゃんアルヨ。神威ネ。」
…これが、あの噂の夜兎族の兄貴か。
あの…父親も妹もためらいもなく殺そうとする…って言っていた。
その割には結構仲良さげじゃねぇか?
気が付いたら神楽がすぐ近くにいて小声で話す。
「総悟に兄ちゃんのコト言ったあの後…兄ちゃんの本当のコト聞けたネ。
総悟の言ったとおり…兄ちゃんは兄ちゃんだったアルヨ。」
神楽が笑顔で話すから、だいたいのコトは読み取れた。
「そいつはよかったなァ…」
「うん!」
「そこで何話してるの?」
神威が笑顔で不思議そうに聞いてきたけど、神楽が負けないくらいの笑顔で答えた。
「秘密アルv」
と……。
「じゃあネ。総悟。帰るアルネ。」
「おう。明日な。」
「うん!また明日アルヨ!」
夜兎兄妹は同じ日傘をさして帰って行った。
そしてその帰り道、神威は神楽に聞く。
「神楽。」
「何アルカ?」
「お見舞いって男だったんだ。」
「そうヨ。喧嘩も強いアルヨ。私と同じ位ネ。よくなったら喧嘩の続きする約束アルヨ。」
神楽は笑顔で答える。
「……。」
神楽のあの笑顔からソイツは大事な人なんだろう。
でも、さっきの人…明らかに死の気配が強かった。
血のにおいも強い。
――…こういうことか。お侍さん…
多分その約束が果たされることなんかあるのだろうか?
俺の予想からすると……――――
…この事は神楽には言わないでおくべきか…
…全く今日はひどい一日だったなぁと思いながら山崎は夕食を運ぶ。
もちろん山崎も饅頭事件の被害者でもある。
元をたどれば沖田隊長になるわけだが…
「沖田隊長。夕飯持ってきましたよ。」
山崎は総悟がいる部屋の襖の前に立って一声叫ぶがおかしい事に返事がなかった。
いつもは一声あるんだけどなぁ?
「隊長?」
寝てるのかなぁと思いつつも襖を開けてみる。
起きている総悟の姿はない。
寝てるのかなぁと思って近づいてみる。
でも、目に最初に映ったのは緋色の鮮血。
「隊長ッ!!」
思わず山崎は近づいて名前を呼んでみる。
血を吐く事はあったが意識を失っていることなんてなかった。
次第に山崎に焦りと恐怖が襲う。
「沖田隊長ッ!!隊長!!」
何度も名前を呼びかけるが、総悟はピクリとも動かない。
その様子に山崎の少々パニックになりかけたけど、すぐに立ち上がり副長を呼び屯所内を走る。
足音だけ空しく響いていた。
*あとがき*
いきなりの急展開でございます…
これから先のことは何も言えないけど、
いろいろ続きますし、まだ活躍していない人が活躍するかもしれないので
最後まで是非一緒にお付き合いくださいませ☆
銀ちゃんによる神威の迎えは態とです。
いろいろ思うところがあって神威を使いに出したのです。
*次回予告*
総悟と神楽を支えるのは
沢山の人の温かい手。
どうかお願い
ずっと一緒に…
2009/09/06 雛乃