声を聞かせて…

『神楽』って呼んで。

またいっぱいバカ騒ぎしようよ。

喧嘩の決着も付けるアルヨ…








キミがいた物語/16:…ごめん。








プルルル…プルルル……
外はすっかり暗くなった恒道館に電話の音が鳴り、お妙が受ける。
「はい…?」
『お妙さぁぁああ――――ん!!』
電話の主は真撰組局長の近藤からだった。
その声を聞いただけでお妙は反射的に受話器を切ろうとするのだったが二言目を聞いて動きが止まる。
『どうしよッ!!お妙さん…!総悟がッ!!!』
「…どうしたのですか?近藤さん?沖田さんに何かあったのですか?」
近藤の声はいつにも増して震えていたが、お妙は慌てるそぶりもなく平然に話を続けた。



ガチャン…

電話を切ったお妙はしばらくその場から動かなかった。
「あれ?姉上。電話は近藤さんからじゃなかったんですか?」
近藤の声の大きさは電話を取っていない新八にも聞こえていた。
でも話の内容までもは聞き取れなかったようだ。
それにも妙なのは、お妙が近藤の電話を切ることなく普通に話していたことだ。
普段なら速攻切るはず…
そしてその場から動こうともしない姉上もまた妙である。
「姉上?」
「…新ちゃん。今、近藤さんから電話があって…沖田さんの容体が…急変したって…」
お妙が静かに口を開いた。その話の内容に新八は愕然とした。
「…え?」
「意識もなくて…お医者さんが言うには…助かるかも…わからないって…」
この言葉に新八は声も失い動けなくなっていた。

なんで?
そんな…いきなり…?
神楽ちゃんは…?

「…神楽ちゃんは!?神楽ちゃんはこの事…!?」
「…近藤さんも結構混乱していたし…;ここに電話したのも…指が勝手に動いていたからって言っていたし…
 まだ…知らないかもしれないわ…」
「それなら早く知らせないと!!」
新八は玄関に向かって走っていく。
「…新ちゃんはこれでいいの!?」
「え…?」
お妙の叫びに新八は一瞬動きを止める。
「この事神楽ちゃんに言うということは…」

新ちゃんは神楽ちゃんから手を引く事にもなる。
送り出すことにもなるのよ。それでもいいの…?

新八はお妙が何が言いたいかはすぐに理解した。それでも…
「…わかっています。姉上。
 でも…ここでこの事を知って神楽ちゃんに黙っているのは僕のエゴにすぎない…!
 そしてそれはいつか神楽ちゃんをひどく傷つけてしまう…。
 それだけはどうしても避けたい…!!」

あの時もそう…
神楽ちゃんと沖田さんの二人の距離の変化に不安を感じて
僕は周りのことなんか見えていなかったのかもしれない…
でも、あのときの一言で神楽ちゃんの笑顔をなくしてしまった。
もうあんなことは二度と起こってほしくない!
だからこそ……!!


「もう僕は決めたんです。もう二度と神楽ちゃんの笑顔を失いたくないって!
 この先どんなことがあってもこの事は神楽ちゃんには知らせないといけないと思うんです!」


そう。これは新八の決意だ。
普段見せない弟の決意にお妙も送りだすと決めた。
「わかったわ。新ちゃん。後悔をしないように…行ってらっしゃい。」
お妙だって弟の決心を無駄にはしたくない。
優しく背中を押す。守りたいものを守れるように…
「……はい。」
勢いよく新八は万事屋に向かって走る。
どうか間にあってという想いと共に。



…きっとこれ以上神楽ちゃんを悲しませてはいけない。
でも、これから起こることはどんなカタチでも神楽ちゃんを傷つけてしまう…かもしれない。
でも、姉上が言ったとおり…後悔だけはさせたくない。
だからお願いだ。
どうか間にあって――――…



万事屋の前に着き、勢いよく階段を上り、威勢良く万事屋の戸を開ける。


「神楽ちゃん!!」


「ふぇ?新八?どうしたアルカ?忘れ物アルカ?」


出迎えたのは驚いた神楽だった。
この神楽の表情を見て、新八は思った。


まだ、知らないんだ…―――と。


銀時はどうした?と遠くから見ていた。
新八は息を切らしながら神楽に近づき急ぎ告げる。
「…い…ま…近藤さんから電話があって……沖田さんの容体が急変したって…」
「……え?」
新八方告げられた言葉に神楽も一瞬動きが止まる。
「…助かるかわからないって…だから早く沖田さんの所にッ……!」
「ま…待って…新八?総悟元気だったヨ?今日行ってきたけど元気だったアル…。だから…違うヨ…?」
「神楽ちゃん…?」
「…だから…そんなことないヨ…。違うアル…。違うヨッ!!」


…何言っているアルカ?
そんなことないヨ…
だって今日行ったとき…総悟元気だったヨ…?
なんで…?どうして…?
どうしたらいいアルカ…
どうしたら…


そんな神楽の様子を目の前にして新八も感じる。


ああ…そうか…
認めたくないんだ。
そんな現実認めたくないんだ。
でも、ここで立ち止まっている時間はない。
時間は猶予もないんだから。


「…行くぞ。」


「え?」
遠くから見ていた銀時は新八が持ってきた内容を素早く飲み込み神楽の腕を引っ張っていく。
「ちょっと!?銀ちゃん?」
神楽も訳分らず引っ張られる方に歩く。
「神楽は俺の後ろに乗れ!新八は定春に乗って着いて来い!」
「銀ちゃん!?どこ行くネ!?」
神楽もホントはわかっている。でも認めたくない。
「屯所だよ。真撰組の。」
銀時は静かに答える。
「い…嫌アル!!行きたくないヨッ!!」
「…何で行きたくねぇんだよ。沖田君が元気だと思うなら普通に行って笑ってやればいいだろ!」

…そうかもしれないけど…
心臓の音煩いヨ?
不安が止まらないの…

「嫌アル…放すヨロシ!!」
「神楽。ここで行かなねェと、もう逢えなくなってしまうかもしれねぇんだよ…沖田君は神楽のコト待っているはずだ。
 だから逢いに行ってやれよ…」


ホントはわかってるヨ。でもわかりたくないヨ。
ホントは逢いたいアルヨ。でも逢うのが怖い。
どうしてアルカ?さっきはあんなに元気だったアルのに…
どうしてアルカ…


「……うん。」
神楽は行くコトを決め銀時のスクーターの後ろに乗って屯所を目指す。
新八も定春に乗っていくことを決める。
「銀ちゃん!行くからには急ぐアルヨ!!」
「…おう。」
返事とともに銀時はスクーターを走らせた。その後ろを定春も付いてくる。




しばらく走ったその時、後ろからファンファン…という音と誰かの声が聞こえてきた。
「おい。そこのスクーター止まれ。スピード違反だ!」
後ろを追いかけるパトカーから土方が叫ぶ。
「銀さん!真撰組です。土方さんですよ!」
「……。」
「銀ちゃん!止まっちゃダメアルヨ!間に合わなくなるヨ!」
「……。」
無言で走る銀時。そして静かにスピードが落ちていく。
「銀ちゃん!?どうしたアルカ?なんで止まるネ?」
「…銀さん?」
一刻も早く行きたいはずなのに神楽と新八は焦る。
でも銀時は何も言わない。
「ダメアル!銀ちゃん!止まっちゃダメアルヨ!!早く進むヨロシ。今そんなコトしている場合じゃないネ!」
スクータが完全に止まると神楽はジャンプして降りて走ろうとするが銀時に手首を捕まえられる。
「銀ちゃん?」


どうしたアルカ?
どうして何も言わないネ?


パトカーも追い付き車を止め、土方が出てくる。
「…万事屋。スピード違反だな。いったい何キロ出してやがる。」
「…ちょいと急ぎの用事があってな…。あ、それとスピード出せって煩くこいつが言っているから俺は仕方がなく…。」
銀時は言いながら神楽を差し出す。
「…な…何言って…」
その言葉に神楽も戸惑うが土方が納得する。
「そういうことなら、そこのチャイナ娘。パトカーに乗れ。」
「なっ何言うアルカ。スピードを出したのはそこの天パアル!!私じゃないヨ!」
戸惑う神楽。でも時間は無情に過ぎていく。
その神楽の様子に土方が一括する。
「急いで乗れって言ってんだッ!…急ぐんだろ?」
その言葉に神楽の言葉の意味を知った。
「…うん。」
神楽は急いで土方の乗ってきたパトカーに乗り込む。
するとすぐににパトカーは走り出した。
真撰組・屯所に向かって…




「…神楽ちゃんの為なんですよね?」
パトカーが走り去った後、静かになった所で新八が呟いた。
「…定春じゃなくて銀さんのスクーターに神楽ちゃんを乗せたのも、土方さんが来てスクーターを止めたのも…
 全部神楽ちゃんの為なんですよね…」


早く屯所に行かせるために――…


「…さぁな。俺は…ただ、言われた通りにしただけだ。」






いつだったか。
神楽の迎えのついでに『近くまで来たから寄ってみただけ。』ッと言ったあの日。
…あれはただ寄っただけではない。
実際は……


「おい。もし…総悟の容体が最悪の場合、チャイナ娘をお前のスクーターに乗せてでスピード違反やれ…」
土方に話があるといわれ屯所に来た銀時に一言言った。
「は?警察がスピード違反やれって、言っちゃっていいの?」
「本来はダメだが…今回は仕方がない。特例だ。…犬ではなくスクーターでの違反なら真撰組は動ける。
 …つまり、パトカーが出せる。少しでも早く着きたいと思うならの策だ。」
「…お前こそいいのかよ?沖田君の最期付き合わなくても…。」
「…俺はいい。…でも総悟には最期くらい逢わせてやりてぇだろ。」


俺はいい。
そこまで高望みはしねぇよ。
俺はアイツの最期…逢うことが出来なかったから…
だからせめて…総悟には一番逢いたい人に逢わせてやりてぇんだ…


「…覚えておくよ。」
銀時も静かに答えた。




そう。ただ言われたとおりにしただけ。
ただそれだけ。


「お侍さん。こんな所にいたんだ。」
屋根からジャンプして神威が降りてきた。
「いないから結構探したよ。まさか死んでたら困るからね。…お侍さんを殺るのは俺だから。」
無邪気な笑顔を飾ってとんでもない事を言ってくる。
これにも銀時には困っているが、今はそれところではない。


「…神楽がいないね。」
「神楽は…屯所だ。」
その言葉に神威は感じ取った。
きっと今日逢った奴の所に行ったのだろう。
今日俺が感じ取ったように本当に時間がないんだろう…


「ねぇお侍さん。神楽の感情が不安定で夜兎の血の抑えが利かなくなったらどうなると思う?」


「……。」


夜兎の血の抑えが利かない…?
それって…


新八は知ってる。
神楽の夜兎の本来の姿を…
吉原で見た理性をなくし本能だけで暴走したあの神楽の姿を…


「銀さん!急がないと屯所が…壊されるかも…!」
「…仕方がないなぁ。…お兄さんも一緒に来るか?
 神楽が不安定なの知っているんだろ?…今度はお兄さんが護ってやれよ…。」
「……。」
神威は黙って笑顔で同意した。
「新八は定春と一緒にいろ。」
その言葉を残して銀時は神威を後ろに乗せスクーターに乗り込み屯所を目指して走って行った。




土方の乗ったパトカーが屯所につくと神楽はすぐに降り様とする。
でも動こうとしない土方に神楽は聞く。
「…トッシーは行かないアルカ?総悟待ってるヨ?」
「俺はいい。早く行け…。」
「…うん。」
神楽は土方をパトカーに乗せたまま、屯所の中へと走っている。


くそッ!!
なんで総悟なんだ!
なんで総悟なんだよぉ……!

土方は静かにパトカーの中で泣いていた…。




山崎は屯所の入り口付近で待機し、神楽来たことを確認し一緒に総悟のいる部屋に走って向かう。
屯所はいつも以上に慌ただしく、総悟がいる部屋には局長・近藤が立ち会っていた。
「局長!!チャイナさんが来ました!!」
「…ゴリラッ!総悟は!?」
すぐに神楽は総悟の容体を聞く。
「…チャイナさん…総悟に逢ってやってくれ…!」
そこにいたのは、いつもより白い顔で寝ている総悟だった。
「総悟ッ!!」
神楽は名前を呼びながら駆け寄る。
総悟の意識は少しあるようである。でももうかすれているような状態である。



どうしてアルカ?
さっきまであんなに元気だったアルのに…
嫌アル。置いていかないでよ…



「…か…ぐら…?」



「…そう…ご……嫌ヨ…置いてっちゃ…嫌アルヨ…!」



神楽の瞳から大粒の涙があふれる。
総悟は微力で神楽の頬に触れる。
でも頬は神楽の涙でぬれていることを感じる…




「…かぐ…ら……あい…して…ま…さァ……」




その言葉はいつも見ていた笑顔と一緒で…
でもその瞬間神楽の頬にあった総悟の手が力なくしたかのように落ちて
さっきまで笑っていた表情もなくて…




「そ……うご………?」




それはまるで眠っているかのようで…




「…イヤアル!!総悟ッ!!起きるアルッ!!『神楽』って呼んでッ!!いつもみたいに笑って…
 寝るなんて卑怯ヨ!起きないとダメアルヨ……喧嘩の決着付けるって………約束したアルよォ……」




総悟を揺さぶるが何も言わない。
起きない。動かない。




「やだヨ…私を置いてっちゃやだよォ!!総悟ぉぉおお―――――!!!」




神楽の叫びは屯所中に響き渡る。




……ドクン…






*あとがき*

タイトルと同じようにいろんな意味でごめんなさい。
それでも時間は流れるし話もまだ続きます。
もうしばらくおつきあいお願いします。


どうして新八は万事屋に電話で総悟のこと伝えないかっていうと
万事屋って電話あったかな?う〜ん……忘れた。
この際だから、ない設定でいいかぁ…
っと思っていたけど紅桜編で電話鳴っているじゃん!!
だったら電話止められているっていうことにしてください><
無理やり設定ですみません。。

電話にしなかったのは新八に走らせたかったのです。
いろんな想いを抱えて神楽に直に言ってほしかったのです。
電話で簡単に言葉だけじゃなくて。
なのであえてこうしました。最初から決めていました。


*次回予告*

ずっと一緒にいたかった。
神楽の悲しみは夜兎の血に染まる。
それは以前神威も感じた
似たような想い。


2009/09/13   雛乃