ホントのこと話しましょう。
だからひとつだけのお願い。
今のキミにはちょっと辛いことだけど
どうかお願い。
キミがいた物語/19:キミに托す想い
無常にも朝は訪れる。
気分が乗らないにしても、昨日行くと言ってしまったのだから仕方がない。
もし行かなくて神威に火の海にされてしまっても困る話なので銀時と新八と一緒に真撰組屯所に静かに向かう。
神威はホントに用があるらしく朝早くに出かけたらしい。
出迎えたのは昨日依頼した局長の近藤だった。
待っていましたというように屯所の中にと三人を迎え入れる。
廊下を歩いて感じたのは屯所の中もしぃんと静まり返っていること。
誰も隊士が廊下にいないこと。
それだけでも神楽は帰りたくなる。
淋しくなる。
いつもは元気いっぱいに振舞っている自分。
それに対してみんなも笑顔で応えてくれるのに…
自分で壊してしまったこと…
所詮は夜兎なんだとココロの中で自分で責める。
神楽は急に立ち止まる。
その様子に新八も心配し、神楽の名を呼ぶ。
その様子に銀時もどうした?と振り向き声を掛ける。
「…銀ちゃん。私、総悟の部屋で待ってるヨ…。だから、早く仕事終わすアル。」
いつもの元気さも明るさもなくとても小さな声で言った。
「…おう。」
銀時の返事を聞くと、神楽は走って行った。
まるでここから逃げ出したいかのように…
その様子を銀時・新八・近藤の三人が静かに見送った。
神楽は静かに総悟がいつもいたの部屋の襖を静かに開けて中に入る。
…総悟の部屋。
でも今は総悟はいない。
いつもはここに布団が敷いてあって、無理にでも起き上がろうとするのに…
今はいない。
…総悟。
今すごく淋しいヨ。
みんな近くにはいるけど、とても遠い感じがするアルヨ。
私、なんか…ヒトリになった感じ…ネ。
お願い…総悟…
傍にいてよ…
一人にしないで…
『…神楽。』
誰かの声がした。
でも知っている。
今一番逢いたい人。
知ってるヨ。
ずっと傍にいてほしい人。
知っている…
ホントは大好きな人…
「…ッ総悟…!」
声がしたほうを振り向き神楽も呼ぶ。
今逢いたい人。
でも、もう逢えない人。
もう逢えないと思っていたのに…
もう呼んでもらえないと思っていたのに…
勢いよく走って近づく神楽を総悟は黙ったまま掌を見せ神楽の動きを止める。
最初は勢いよく入っていた神楽も自然と足を止める。
でも不思議とそこから動く事は出来なくなっていた。
どんなに必死になっても一歩も前には動かない。
…どうして?と神楽に不安を残す。
その様子を見ていた総悟は静かに笑う。
『久しぶりでィ。神楽。』
「…うん。」
そうだヨ。
総悟の生き生きとして動いている姿も声も笑顔もみんなみんな久々アルヨ…
だから近くに行きたいのに…動かない。
近くにいてほしいのに…ちょっと遠い。
このままずっと傍にいてほしいのに…
自然と神楽の瞳には涙があふれてきた。
『…何でィ。泣き虫だなァ。神楽。』
「…違うネ。…お前のせいアルヨ。」
神楽は涙を拭いながらも答える。
『…俺のせいかィ?』
「そうアル。…総悟が…私を置いて…逝くから…」
涙が止まらない。
このまま時が止まっちゃえばいいのに…
このままずっと総悟と一緒にいられるのに…
このまま一緒にいたいのに…
『…そうだなァ』
それはきっと間違いない。
俺が泣かせた事はきっと間違ってない。
だから……
『…やっぱ、言わない方がよかったかもなァ。』
「え…?」
『…俺は最初から神楽に全部言うつもりはなかったんでィ』
「全部…って?」
『病気の事も気持ちの事…両方でィ。』
「ちょッ…ちょっと待つアル!お前、何時から私のこと好きだったアルカ!?」
『…少なくとも、お前がヤキモチするずっと前からでィ。』
ヤキモチというのは以前総悟が仕事で知らない女の人と話していたヤツで…
「ッ!!きッ…気づいてたアルカ!?」
『あんな様子じゃ誰でも気付きまさァ。』
「……。」
さすがに神楽もこの言葉に何も言えなくなり黙ってしまう。
『…俺がお前が好きでも正直あの頃は喧嘩ばっかしてたし、お前が俺を嫌っていたのは知っていたから言わないでいた。
…言って気まずくなるくらいなら、言わない方がマシだし、このまま言わなくてもいいって思ったんでィ。』
「……。」
そうだったかもしれないけど…
喧嘩ばかりしていたけど…でもね…
『病気の事も神楽には言えなかった。ウソまで付いて隠した。俺が不治の病で命を落とすかもなんざ言えるわけねぇだろ。
だから黙ったままいなくなろうって思ったんでさァ。』
だんだん弱くなる身体。
いつも対等な喧嘩ばかりしてきたから…そんなこと言えるわけない。
只さえ一方的な片想いを壊したくなかったもの事実。
かといってそれ以上の関係になって彼女を傷つけたくないもの本当。
でも、誰にも渡したくないのも本当で…
それに神楽も家族の死を知っているから。
誰かを失う悲しみを知っているんだ。
それならよけいに悲しみを深くしないようにと言わないで自分でどこまでも持っていこうと決めた。
それが自己満足であっても…
もし言って同じ想いなら、最後はひどく傷つけてしまうから…
今の神楽のように…
「…そんなことないアルヨ…私がもっと早くに気づいていれば…」
もっといっぱい一緒にいられたのに…
もっと一緒にいたいのに…
『……。』
神楽の表情から気持ちが伝わる。
それでもどうしても…
『…神楽』
総悟は優しく神楽の名を呼ぶ。
「…何アルカ?」
『今の神楽には酷な話だが、俺は神楽には生きてほしいんでィ。』
「…嫌アル!総悟と一緒にいたいヨ!」
『……それは俺も同じことでィ…。でも神楽はまだこっちの世界に来てはいけねェ。』
「…嫌アルヨ…」
私は一緒にいたい…
離れたくない…
『…神楽にはまだまだ時間があるんでィ。』
「そんな時間なんていらないヨ!…くそくらえネ…」
『…だから、いつかまたどこかで逢えたとき、神楽がどのように生きていたか話を沢山話してくれませんかィ』
「……。」
イヤだよ。総悟…
一緒じゃなきゃ嫌アルヨ…
『前に神楽が言っていたように、いつか必ず逢えまさァ…だから…』
―――いつかまた逢える―――
その言葉はマミーがいなくなって淋しかった時にパピーが言ってくれた言葉。
いつか逢えると信じてきた言葉…
「総悟にもいつか逢えるアルカ?」
その言葉はこれからの希望にしたくて
『逢えまさァ。これからもずっと神楽を見守るから。神楽がこっちの世界に来た時は必ず探し当てまさァ。』
だからお願い。生きて。俺の分も。
これからも。神楽らしく生きていればそれでいいから。
「…今度の約束は絶対アルナ。絶対長生きしてやるから、絶対私を見つけるヨロシ。」
その答えを聞いて総悟も表情を変える。
それはさっきまで心配していた症状なんかじゃなくて、何時も変わらない笑み。
『…おう。再び逢えたらそんときには喧嘩の決着もつけようでィ』
「…約束アルヨ!」
『…約束。』
約束をした辺りから総悟がだんだん遠ざかっていく。
「総悟!!」
神楽は必死に叫ぶ。
『約束の頃に逢えまさァ…』
総悟の声も何んとか聞こえるが、もう声は届かない。
「絶対アルヨ。又いつか逢うネ。」
沢山の約束を叶えるために…
生きて…また再び逢うために…
気がつくと屯所の総悟の部屋だった。
どうやら神楽は寝てたらしい。
でも顔中が涙で濡れていた。
「…濡れてる?」
当たりを見渡して名をぽつりとつぶやく。
「総悟…」
逢いたい…一緒にいたい…という気持ちはまだあるけど
今度こそ約束果たすために…今を生きようと神楽は誓う。
いつか総悟に逢うために…
どうしてかはわからないが涙は止まらなかった。
*あとがき*
色々な想いが交差する。
想いの果てはいつまでも君と一緒v
*最終回予告*
いつまでも変わらない空。
でも変わりつつあるモノ。
神楽の出す答えは…
泣いて笑って前に進もう
2009/10/04 雛乃