少しずつ変わりを見せるこの光景は

“あの時”と変わらない。

それでも僕は決めたんだ。

もう後悔しないように…







キミがいる物語/08:願うならば…







5月のゴールデンウイークが終わりを迎え、久々の学校に嘆く生徒達。
そんな中ここ最近急に変わりを見せている生徒もいた。
3年Z組のサボり魔として有名の沖田総悟。
異変が見られたのは彼の日直の翌日から。
何があったのかは知らないがそれまでサボっていた授業も全部出るようになった。
クラスメイト達は最初驚きを隠せなかったが、一部の人たちはとりあえず安心する。
出席日数の事ではなく、おそらくあの転校生に何か『気づいた』からだ。
これは総悟にとっては大きな出来事。
今までの総悟に想いもしなかったこと。
取りあえずの一歩前進はこれからどうなるのか予想もつかずにただ時間が流れていくのだろう。
先の見えない未来に向かって。


「お妙さぁ〜ん。おはようございます!!この休み中逢えなくて寂しくありませんでしたか!?」
「全然。むしろ逢えなくてスッキリしたわ。剣道部が試合続きでラッキーだったわね。」
でないと毎日ストーカな日々だもの。と心で呟く志村妙。
「そうなんですよ。大会が続いてお妙さんになかなか逢いに行けず…」
「むしろ来なくて結構よ。ゴリラさん。」
「俺はともかく、総悟は剣道の練習試合で優勝したんですよ。」
「へぇ〜。あの、大会やる気なしの沖田さんがねぇ。一体どういう心変わりの心境かしら?」
「でも優勝はすごいことだよな。総悟!」
「…別に大したことでないでさァ。」
近藤と一緒にいた総悟はそれだけを告げると自分の席に向かった。
隣には桜桃千春がもう席に着いていた。
千春は何をするわけでもなくただ前を向いていた。


「……はよ…」


総悟は隣の席に向かって小さな声で言って自分の席に着く。
千春もおそらく聞こえていないかもしてないくらいの声で。


「……お…は、よ…?」


でもその言葉は千春の耳に届いていた。
千春も総悟の方は向かず前を見たまま小さな声で言葉を返した。
そのかすかな千春の声も総悟に届く。


そんな二人を遠くから見守る志村妙と弟の新八。
近藤は最終的に妙のグーが顔面にヒットして掃除ロッカーの方で伸びている。

「どうなるかと思ったけど、まぁこれからどうなるかしら。」

「大丈夫ですよ。姉上。」






桜が満開の春、3年Z組に進級して入学式を終え下校時間になったが
担任の銀八先生にいきなり呼ばれた志村妙と弟の新八は職員室に向かった。


『一週間後このクラスに留学生が来るんだ。で、志村の姉の方にいろいろ世話してほしい。』


銀八先生から呼ばれた簡単な説明を受けた。
どうやら姉上の用らしい。じゃあなんで僕まで呼んだのか?


『新学期からじゃなく一週間後?珍しい留学生ね。』
妙も留学生の転校生ということで嬉しそうに言葉を返す。
『まぁな。名前は桜桃千春だ。』
『…桜桃千春…?聞いたことない名前ね。大抵このクラスへの転入なら見知っている人だと思ったけど…。
 新ちゃんは知ってる?』
『いえ。僕も聞いたことないですよ。』


『…そりゃあそうだろ。何しろこの名前は神楽の偽名だからなぁ。』


『…え!?』

『神楽ちゃん!?』


銀八が言った一言に志村姉弟は一緒になって驚く。


『神楽ちゃんが来るんですか!?この学校に。』
新八は驚きながら銀八に聞いた。
『ああ。』
『あら。それじゃ沖田さん、やっと逢えるのね。でもどうして偽名なの?』
妙の疑問に銀八は簡単に答えた。
『神楽がそうしたいって言っているんだ。偽名だけじゃなく変装までしてくるぞ。』
『…な、んで?そんなこと?』
新八は訳わからく戸惑う。


だって、沖田さんは今すごく神楽ちゃんに逢いたいはず…
神楽ちゃんも沖田さんに逢いたいはずだ…
なのにどうして…


『さぁな。でも兄貴が言うには『頑固で天の邪鬼』だそうだ。』
『…!お兄さんにも逢ったんですか!?』
ココじゃない、前の世界では神楽の兄・神威と面識ある新八。
その神威とこの世界で逢ったことを知りますます驚きを隠せない。
『ああ。まぁ少ながらず神楽の方に何か強い想いと覚悟がある。
 それを壊さねぇと多分神楽がいたとしても沖田君は救われない。』
『…何ですか?その強い想いと覚悟って?』
話が全然見えない新八は銀八に聞く。
『さぁな。神楽が頑なで心を開かない。それをどうにかしないと…』
『…そう。神楽ちゃんがそう決めているなら私はそれでいいわ。
 だって来るのでしょ?ココに。なら問題ないんじゃない?何かあったら私たちも動けるし。
 それに先生は、頑な心のこじ開け方も決意の解き方知っていそうだし。』
今まで黙って聞いていた妙が口を開いた。
だから、心配はいらないと。付け足して。
『…まぁ動くのはいいけど、なるべく今回は見守る程度にしておけよ。』
銀八は否定せずに答えた。


物騒な兄貴がうろついて何するかわからないからな。
マジで『邪魔で殺しちゃった♪』になっても困るし。
……ないと思うけど…。


『あと、今ここで話したことは他言無用だ。…そう神楽から言われているからな。』


『…そんな話、私だけでなく今回は新ちゃんにも話したのね。』
『…ああ。今回にしろ前回にしろお前は新八には話すだろうと思ってな。
 それに、新八だって知っててもいい内容だろ』
『…ええ。そうね。』
妙は銀八の言葉に納得した。


これは桜が満開な入学式後の出来事。






桜は皆散ってしまい今度は葉ザクラでいっぱいになった枝を見つめ新八は感じていた。
大丈夫と。
だって僕が知っている二人はこんな事で諦めたりなんかしない。
破壊活動的なケンカばかりしていて、お互いに素直じゃなくて…
でもそれはここじゃない“江戸”での二人。


この世界ではない別の世界…
そう“江戸”と呼ばれたあの世界。
僕は銀八先生こそ銀さんと留学生としてくる桜桃千春さんこそ神楽ちゃんと一緒に万事屋で働いていた。
ホントに何でもありすぎでいろんなこともあった。
誰か好きになることも、護りたい笑顔があることも。
でも僕はその笑顔を護るところか崩してしまった。
僕じゃダメなんだ。
きっとココロの中でわかっていた。気が付いていた。
神楽ちゃんと沖田さんの距離の変化がなくても心のどこかで思っていた。
そして、時には身を引かなければならないことも知ることになるけど
僕は僕のやり方で護るべきことを護ろうと決心する。
これから先どんな理不尽な出来事が待っていても僕自身が後悔しないために。
キミのココロが僕に向いていなくても一緒に過ごせた日々はけして無駄ではなかったよ。


だから、この世界の銀魂高校での出会いには正直驚いた。
ほぼ知っている人たちが同じクラスメイトとして一緒にいる。
そして、“その頃の江戸”の記憶を持っている。
“以前”敵同士だった人でもいるが“今”は違うと何とか理解して。


その中にいた沖田さん。相変わらず近藤さんと土方さんたちと一緒に。
でも日に日に増える授業のサボり。
土方さんによれば、それは今始まったことではない。らしい。
何でも理由は『逢いたい人に逢えないから』。


探しているんだ。神楽ちゃんを。
こんなに“江戸”にいた人たちがそろっているクラスでも唯一いない神楽ちゃん。
こんなに一生懸命になって探してる…のかなぁ?
やる気がなくてサボってばかりで相変わらず読めない人だと思う。


でも、僕だからこそわかることがある。
“江戸”では神楽ちゃんの事を見続けて
“ここ”では沖田さんの事を少し見てて
二人とも一緒にいたいのに一緒にいれない。
神様はなんて残酷なんだろうとつくづく思うんだ。


そんな中神楽ちゃんは桜桃千春さんとして転入。
席は偶然なのか仕組まれたのか沖田さんの隣の席。
最初は見向きもしなかった沖田さんだけど今では変化があって授業のサボりがなくなった。
神楽ちゃんも何か強い想いがあるみたい。僕としては何を企んでいるのか全然わからない。
でもまた出会えたんだ。
僕は今度こそ温かく見守るよ。
願うならば、二人に明るい未来を…。






*あとがき*

8話は志村姉弟メインのお話。主には新八かなv
雛はこの新八の想いのお話を書きたかったので
あえて8話にして書きましたvv
別々の世界だけどあえていろんな方向で二人を見てきたし
想いもあったし…彼もいろいろあって成長したんだよ。
最後にこんなこと言えるくらいに。


*次回予告*

小さな頃からその記憶はあった。
それはまた逢える希望にしたくて
どんなことがあっても探すって決めた。
あの頃は―――…


2011/05/23   雛乃