最近予想外の出来事だらけ。

今のこの状況もそう。

振り回され気味だけど

確実に確信へと近づいている。








キミがいる物語/10:それぞれの想い。








「……。」

赤い夕陽だけが静かに照らす沈黙の中、総悟は何も言わず神威を睨んでいた。
解きかけた糸が再び絡み合う。
一体全体どういうことだ!?
なんでチャイナの兄貴がここにいる?


「…。俺の事知っている?」


それでも神威は笑顔で表情を殺し何とも言わぬ威圧感で聞く。
少なくとも俺が知っているのはこの世界じゃない。
そんなこと目の前の人物に伝わるのか?


「…人の事聞く前に自分はどうなんでィ?」
「…ああ。成程。でも少なくとも俺はキミの事よく知らないな。唯、見たことあるだけで。
 ここではない別の世界なんだけど。…こう言えばわかる?」
「……。」
総悟も表情を変えず神威を睨んだまま頷いた。
いきなりの事で思考が追いつかない。
どうして今になってチャイナの兄貴がここにいるんだ?
でも、チャイナの兄貴なら聞けばチャイナこと何かわかるかもしれない。


「…。あの…!」
「…兄ちゃん!!」


同時に二つの声がした。
総悟は言いかけるよりももう一つの声がする方に耳を傾け振り向く。
そこにいるのは買い物袋を大量に持った隣の席の桜桃千春だった。


「か弱い私にこんなに持たせて自分だけ一人でさっさと行くなんてどういう神経しているアルカァ!!」


勢い余って千春はそのまま叫ぶ。
近くに沖田総悟がいると知らずに。


「うん。大声で叫んだね。でも、こんなもんか。」
神威は総悟の方を向き不敵な笑みをして聞こえるように呟いた。
そのまま神威は千春はいる所へ向かう。
「追いつくの遅かったね。」
「こんなに持たせてお前は走って行ったからヨ!」
「…まだ気付かないようだけど、アレ、だぁれだ?」
神威は総悟がいる方に指をさしながら千春に教える。


「……え?」


夕焼け色に染まっているけどそこにいるのは学校では隣の席の沖田総悟。
それは見間違えることなくて…


「…な…んで…?」


「…お、まえ…」


千春も総悟も驚きが隠せない。
さっきまでは多分と憶測だったが今ではそれは確信に変わる。
目の前の人物の正体に。


「…ッ!帰る!」
千春は小さな声で伝え、大量の袋を持って走るようにその場を去った。


それを見ているだけの二つの影が一つ動く。
神威は総悟の方を向き笑顔で一言告げる。


「…俺がわざわざ出してやったヒント。役に立った?置き去りのサド王子クン?」


「はぁ?…ちょッ…待てよ…!」


総悟の言葉も虚しく神威は姿を消した。
気配もない。辺りは夕焼けに染まる静かな町並み。
さっき目の前で起こった方が幻か何かと思ってしまうほどの脱力感。
「…何だって言うんだ…一体。」
総悟は少し考えてから再び歩き出した。




神楽が帰って結構時間が経ってから神威は帰ってきた。
神楽と神威はアパートに二人暮らし。
経済面の方は父母に援助をしてもらいながらの生活だ。
銀八のアパートよりは綺麗で設備もいい。


兄が帰ってくるなり神楽は神威に怒りをぶつける。
「なんでアイツと一緒にいたアルカ!?」
「偶然だよ。」
神威は笑顔で答えたが神楽は納得しなかった。
「…!!違うネ!兄ちゃんは、“あの世界”を知っているアル!
 そんな中アイツに逢うなんて…何企んでいるアルカ!?」
「その言葉、そっくり返そう。お前は一体何を考えているんだ?」
「え?」
神楽の表情が固まり一瞬の沈黙が訪れる。
まるで何言われているか理解していないかのように。
その神楽の表情を見て神威はすぐ笑顔になり再び話し始める。
「まぁ、天の邪鬼で頑固な馬鹿の考え事などくだらないことだろうけど…。」
「別に…兄ちゃんには関係ないアル!」
それだけを言うと神楽は逃げるように自分の部屋に入って行った。


関係ないことくらいわかっている。
そしてこの行動がお節介で厄介なことだということも。
それでも動かずにはいられなかった。
全て知った上での“今”の神楽を見てきたから。


前世の記憶――…


最初は厄介の何物でもなかった。
でもその頃から神楽はの様子の少しずつ変化を見せていた。
最初は嬉しそうに話す“江戸”での様子の話。
母は理解できなかったようだが、アイツは理解していたようだった。
少し“江戸”に干渉したことがあるから記憶があるのか?と最初は思っていた。
その頃神楽が行きたがっていた“江戸”をアイツは断固反対していた。
思い当たる節としては、今せっかく家族で過ごしているのに
あの頃の“江戸”のお仲間に神楽を取られるのではないかと思ったのだろう。
前に一度だけ『神楽の逢いたいヤツに逢いに行くか?』と聞いたことがあるが
『別に逢いたくないヨ…』と下を向いて寂しそうに答えた。

でもそれから神楽の様子が激変する。
あんなに笑顔で話していた“江戸”の話をしなくなった。
忘れたとは思わなかったが、諦めがついたのだろうか。
そう思っていたが、いつの間にか笑顔も消えていた。
アイツや母はかなり心配していたが神楽は元気であることを突き通していた。
でも俺からしてみれば、無理矢理の笑顔。心に背いている強がり…簡単に見抜けていた。
そしてその解決策も、うすうす気がついてはいた。

おそらく原因は神楽が笑顔で話していた江戸”。
“江戸“の事を知らない母や、死別してきたことを知らないアイツによりも
それは見てきた俺だから知ってできること。
でも本当に前にいた“江戸”の人がいるか確認するため単身偵察に向かう。
そこで見つけたのは銀髪のお侍さん。
お侍さんではなく今では学校のセンセらしい。
どうやら記憶はセンセも持っていて、又、生徒たちも“以前”はほぼ江戸にいたこともあり記憶があるらしい。
そしてその中には神楽が言う『逢いたくない人』もいる。

そこまで話を聞ければ十分だ。
無理矢理にでも転入でも留学でもさせればいい。
どんな方法使っても。


神楽の企みにうすうす気が付いている。
本当に馬鹿な妹だ。
全ては仕組まれていることだと知らずに…。


「…こうでもしないと面白くならないだろ?」


絶対にこの留学を無駄にはしない。
意地でもその企み吐かせてもらう。




次の日の神楽の表情は重かった。
学校をこのままずっと休んでしまいたかったけど
長期で休み学校からの連絡がここでなく家に行く恐れがあり、
そんな訳にもいかず神楽は無理矢理にでも学校に行く支度を始める。
父母には心配かけていることを神威から知らされているのでこれ以上の心配を掛けさせたくなかった。


…きっとアイツにはバレテいるかもしれない…


昨日の出来事を何回も頭の中によみがえる。
表情も声もみんな。


一体どうしたらいいアルカ?


無情にも時間は過ぎていく。
そろそろ出かけないと遅刻する。
神楽は仕方がなくアパートを出て学校へ向かう。。
その足取りはとても重たかった。


教室に着くと隣の人はまだ来ていない様子だった。
とりあえずホッとして桜桃千春の席に向かい座る。
周りは試験が近いから慌ただしい。
それでも今は隣の人がいない方が落ち着く。
そして今まで以上にアイツに逢いたくない。
ホントは逃げ出したい気分だ。

隣の人は朝のSHRの予鈴が鳴る前の5分前に教室に入ってきた。
何も言わずにまっすぐ自分の席に向かい自分の席を目の前にして止まり一言伝える。


「…ちょっといいかィ?」


「……」


千春という名の神楽はあえて聞こえない振りをする。
そのことにも総悟は気づく。


「…ならここで今話してもいいですぜィ。」


「…ッ!」


ガタッと音をさせ千春はその場に立った。
その音にクラスの誰もが驚いた。
総悟は周りに気にせず教室を出る。
その後ろを追いかけるように千春も教室を出て行った。






*あとがき*

っということで今回は夜兎兄妹のターン!!
といっても神威中心的になってしまいましたがvv
神威がアイツと言っているのは海坊主のことですw
またもや繋ぎで終わってしまってすみません。。
ッと言う訳で次回に続くvv(退散。。)


*次回予告*

――置いて逝きたくなかった…
――ずっと一緒にいたかった…
二つの想いが二つの世界を繋ぐ。
そして全ての想いが解き放される――。


2011/06/06  雛乃