バレンタイン小噺



茜子の手作りチョコレートに冷や汗の流紅

お遊びです。
それだけは踏まえてどうぞご覧ください。




「そういえばお前が料理をしている姿を見たことがない」
「あらわたしだって、普通に料理くらい出来ます。うちは女手が全然ないんだから、私の仕事だもの」
「あれだけ外を歩き回っていてか。だいたいお前の家だったら、まかないの人間くらいいるだろう」
「……確かに、賄所からはいつも追い出されるけど」
「……で、これは誰が作ったんだ?」
「失礼ね。わたしが作りました」
「作り方はちゃんと誰かに教わったんだろうな?」
「うちの女中(…って言い方はしないな)にちゃんと教わったわよ」
「教わった通りに作ったんだろうな」
「隣りで指示出してもらいながらやったんだもの、何も不備なんてないわ。なんだか、いちいち人の行動に悲鳴あげてたけど」
「おい」
「だいたい、もともとあるものを溶かして、形を作り変えるだけでしょ。簡単よ」
「……そう言われてしまうと、せっかく手作りもらっても、嬉しさ半減なんだが。自分で相手の気持ちを盛り下げてどうする」
「じゃあ、今度はケーキを作ってさしあげましょうか?」
「……ケーキだったら、なんだかこんなに不思議な色合いにはならないのか?」
「うーん、ちょっと火が強かったのかしらねえ」
「どろどろになってるのはどうしてだ」
「さあ。固まらなかったんだもの」
「(それをそのまま持ってくるなよ。ガクリ)」
「なんだか、家を出てくる時に、兄さんが必死で止めてたけど。みんな失礼よねえ。若君を殺す気かー!って言ってたけど、ちゃんと味見もしてるのよ」
「誰が」
「兄さんが」
「(……だから止めたんじゃないのか)そ、それはともかく、一部はなんでこんなに粉々なんだ?」
「遠路はるばる持ってきてる間に割れたのかも」
「お前、本当はわたしが嫌いだろう」
「こういう日に、人から手作りのものをもらってそういうこと言ってたら、確実に嫌われると思うけど」
「(だってなあ。)……ええと、せっかく持ってくるんだったら、もっと大事に運ぼうとか思うだろう、普通」
「仕方ないじゃない。チョコひとつひとつを油紙やら、おがくずやらで包めって言うの?」(こんなとこだけ時代風。笑)
「いやそれはさすがに」
「なによもう、ごちゃごちゃと。いるの、いらないの」
「……いただきます」


つっこみどうぞ 



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