◎自・公政権を追いつめ、衆院解散・総選挙へ!
◎生活防衛、社会と政治の変革をめざし、
08春闘を闘おう!
●新テロ特措法の成立、再議決の強行
安倍前首相が投げ出した臨時国会、「ねじれ国会」の第一幕が閉じた。福田陣営が自民党総裁選挙で勝利して以降の4か月間、政局は自民党、民主党のどちらも主導権をとれない膠着状況が続いている。
民主党は参議院多数派の力を発揮しきれていない。政府・与党を追撃する政治的、運動的な結集を作り出すことができず、政策上の迷走ぶりも目立ち、政権獲得にはおぼつかない浮ついた印象を人々に与えている。その最たるものが「大連立」騒動であり、その後の新テロ特措法への一貫しない対応だった。
政府・与党はインド洋での給油活動を再開させるため、衆議院での再議決に踏み切った。憲法59条([法律案の議決、衆議院の優越])の規定に基づくものだが、実に57年ぶりであるという。民主党はテロ特措法延長の反対を臨時国会の最大の焦点とし、福田首相への問責決議を武器に、衆議院を解散・総選挙に追い込もうとした。ところが、「大連立」騒動を機として迷走状況におちいり、対応が一貫しない混乱ぶりを露呈した。その結果、対決の焦点があいまいになり、与党による衆議院再議決を許した。さらに民主党対案が衆議院で継続審議となり、自衛隊派兵の「恒久法」議論に道を開く結果となった。
臨時国会の最中、東京地検特捜部は防衛調達疑惑の摘発に踏み切った。民主党は国会で疑惑を究明することができなかった。なかでも額賀大臣の証人喚問要求は撤回に追い込まれた。防衛利権の疑惑が民主党議員にも向けられたことも影響した。
日本政府は米国から給油転用疑惑を否定する明確な確約を得てはいない。疑惑否定を求める政府交換文書も米国から拒否されているという。民主党の国会審議は、そのような日本政府の姿勢や日米関係を追いつめるものとはならなかった。さらに、アフガニスタンの現状に対して日本がとるべきスタンスについて、「テロと闘うことの意味」について、そもそも米国ブッシュ政権と明確に一線を画すべき日本の外交・防衛方針について、民主党はそれらの問題を国民に説得力をもって訴えることはできなかった。
各種世論調査では、それらの問題に関して賛否が拮抗状況にあっただけに、民主党の「無策」が逆に際立つこととなった。もちろん、党内対立を含めて、そのような民主党の「限界」は当初から想定されていたが、この法案を対立焦点として設定した民主党としては、あまりにも内容がともなっていなかったというべきだろう。要するに、民主党は政権党になったらどうするのか、党としてはほとんど準備がなされていないという現実が国会審議を通して浮かび上がることになった。
さらに、臨時国会の終盤、対案を出すのかどうか、「採決」か「継続審議」なのか、民主党は大きくゆれた。最後には小沢代表の衆議院再議決の欠席である。そしてこのような対応の転変の意味を民主党議員はまともに説明しようとはしていない。
安倍政権当時、給油は時限立法であり、その延長が憂慮されるという指摘がなされていた。政府・与党はこの問題を放置した。小沢民主党代表は参議院勝利直後、テロ特措法延長に反対すると言明した。「民主党は一貫して反対してきた」という小沢代表の発言は、記者団に対して唐突になされたものだった。それでも臨時国会の対立局面がこの小沢発言によって作られていった。民主党には、情報公開など条件を厳しくして政府・与党に妥協をせまる道があった。給油転用疑惑への歯止め方策も、新法よりまともに考えられたかもしれないほどだ。
しかし、その後の「大連立」謀議の発覚と重ねてみれば、小沢代表には、給油問題を国会対決の焦点とするとともに、「国連主義に基づく自衛隊派兵」に踏み込むためにあえて争点化したのかもしれない。さらに「連立」のための材料そのものでさえあったのかもしれない。そのような疑惑が最後までつきまとった。そして実際、「恒久法」論議は福田政府の方針に盛り込まれた。共産党と社民党が民主党の対応を批判したのは当然のことである。
●12月内閣支持率の急落、「5・28ショック」の悪夢
政府・与党は、民主党の失態や混乱をたくみに利用して衆議院の早期解散から逃れてきた。しかし、幾度かのチャンスを活かしきれず、反転攻勢に踏み出せないでもいた。
12月、年金公約を無視する発言が政府内から飛び出し、薬害肝炎原告団への官僚的で非人間的な対応がそこに重なった。その直後、内閣支持率の急落が報じられた。
半年前の5月28日、松岡農水大臣の死亡の当朝、毎日新聞と日経新聞が内閣支持率の急落を報じていた。年金問題と「政治とカネ」問題への怒りが政権不信となって噴き出したことによる。これ以降「5・28ショック」は政局の分水嶺となった。各種世論調査は一様に、安倍政権が国民の期待と信頼を失っていく過程を、内閣支持率の下落カーブとして表現していったからだ。結果は参議院選挙の歴史的大敗であった。この間の「世論」は、まさに、民衆が小泉郵政選挙の議席結果を否定し、政治に対する発言権を再行使していく状況を見事に示すものだった。それはとくに顔の見える選挙区で、「地方の反乱」と称された自民党支持・保守層の反乱に顕著であったが、大都市圏でも「格差・貧困問題」や「ホリエモン・村上ファンド問題」などによる青年層の自民党離れが進行した。
昨年末、ふたたび「5・28ショック」の悪夢が政府・与党を襲った。舛添厚労大臣のパフォーマンスがどうであるというようなレベルをこえて、政治的マグマが一気に飛び出そうとした。民衆の感情がかくも敏感に反応することに政府・与党はあわて、おびえたであろう。薬害肝炎患者たちの「魂をゆさぶるほどの命がけの闘い」を支持する世論の圧倒的な声が、政府・与党そのものに「政治決断」をせまり、事態を動かした。福田首相は自民党政権維持のために「自民党総裁」として記者会見にのぞむという窮余の一策を演じたが、このようにして政府の判断が直接的に左右されたことは特筆すべきである。この年末の事態によって、政府・与党は、政権基盤がこれほどまでにもろく、危機的状況にあることを再認識したであろう。
●「生活者・消費者の立場」と「構造改革路線」
こうして福田総裁は自民党大会で「結党以来の危機」を表明し、「国民、生活者、消費者の立場に立つ」以外にないと党員に訴えた。それは最大の支持基盤である経済界に対して、政治的な理解を求めたということでもある。
安倍の右翼路線を封じることは、福田政権の成り行き上、当然のことだ。では「改革」をかかげる自民党と経済界は、社会の現状をどのように認識し対応するのか。格差・貧困、医療・年金・社会保障の崩壊にいかに対処するのか。介護破綻の結果としての家庭内殺人や福祉行政から見捨てられた餓死という暗澹たる社会の現状をどうするのか。教育崩壊を教職員組合の責任にするという、悪意に満ちた本末転倒をいつまで続けるのか。若者の労働市場はどうするのか。規制緩和政策の代表であった介護やタクシーでは、部分的ではあれ方針修正が実行されている。福田路線が構造改革路線とどのような関係にあるのか、あいまいにしてすむ問題ではない。
小泉政権の経済・社会政策の司令塔だった竹中元大臣は、批判が高まりつつあった政権末期、次のように反論していた。格差は発展のために不可欠である。勝ち組・負け組が発生するのは、その意味で当たり前のことだ。負け組のために必要ならばセーフティネットを作り、そのために予算を投ずればよい。問題は「社会が底割れしない」ことである。自分が見るかぎり、日本社会は底割れしていない、と。
当時、「改革」という言葉は未だ非常に強力であったが、「日本社会は底割れし始めている」という指摘が、社会保障費削減がもたらす実態報告などによってなされはじめていた。小泉政権の最後の一年、「改革」の実態が次々に暴露され、その象徴としてマンション偽装が社会問題となった。国土交通省は仙台圏から提出された規制緩和の停止を求める「逆特区申請」を却下したが、タクシー問題はすでに限界をこえていた。
それから2年ほどが経過し、いま、「生活が第一」の小沢民主党に対して、福田自民党が「生活者・消費者のための行政」と主張するに至っている。
自民党は「構造改革」を表向き否定してはいないが、しかし、有権者との関係ではもはや、小泉改革をかかげて支持を訴える余裕はない。「生活が第一」という民主党と対決するために、「改革後退・旧来政治の復活」という批判をかわしながら、福田政権は綱渡り的な社会・経済政策を進めていくことになる。まさに自民党も問われている。
●新たな社会・経済政策のために
このような状況を引き継いで、通常国会がスタートした。民主党は「ガソリン値下げ国会」だと命名した。福田自民党は「国民、生活者・消費者中心の行政」を看板にかかげた。解散・総選挙の道筋は立っておらず、波乱ぶくみの国会になる。国政が「機能不全」におちいる可能性もある。
通常国会の最大の対立は予算、とくに道路特定財源をはじめとする関連法案である。予算は生活に直結する。しかも年金問題は08年3月が大きな節目に設定されてきた。「宙に浮いた5千万件の年金記録」の照合・特定・統合作業が3月に完了することはない。年金特別便への反応が想像以上に低いことがすでに明らかになっており、当然、作業は容易に進まず、明らかな公約違反状態になる。さらに株式市場の年末来の続落など「3月経済危機」が騒がれており、春闘の賃上げ動向に影響を及ぼすことは必至だ。年度を前後にして、生活関連物価の上昇が軒並み予定されている。国会対決が人々の生活不安とどれほど向き合うことになるのか、自民党にも民主党にも切迫した国会になる。
福田政権にとっては「3月」を乗り切り、サミットを主宰することが目前の目標だ。だが、そのような戦術対応にとどまらない危機が、自民党につきつけられている。安倍政治を封印し、小泉改革を有名無実化し、小沢民主党との政策協調のなかから「ねじれ国会」の打開を探らねばならない。福田は「消費者庁」の新設や「消費者行政の一元化」にふみこもうとさえしている。消費者行政はいまや自民党議員に大人気の政策アイテムであり、小泉構造改革時代とは「隔世の感」だと細田担当大臣が驚いてみせるほどだ。
小沢代表の「生活が第一」路線を、当時の中川自民党幹事長は「社会主義」だと批判した。中川は、<社会主義の沈滞>ではなく、ブレアの改革こそ安倍政権が踏襲すべき成長路線だと主張した。その中川は、振り子が大きくゆれた福田政策に沈黙している。
小泉や竹中たちは、未完の改革派としてこの現状に警鐘をならしている。政界再編の局面で小泉の反乱を期待する声が常に流されている。自民党内部では、ポスト福田をにらみ、右派が安倍や麻生をかついて再結集をはかっている。だが政界も財界も福田政権を見限る状況にはない。与党議員も「痛みに耐える構造改革」を声高に主張する状況にはない。社会は痛み、自民党の支持基盤が大きくゆらいでいるからだ。
同じことが民主党にもいえる。党内の不満勢力は小沢代表への不満を表明するにとどめている。自民党にとっても民主党にとっても、次の局面でどのような再編が展開するか、予断を許さない。まずは3月、道路特定財源問題で20人ともいわれる民主党内の反対派がどうなるか。不満派はテロ特措法では表立っての反乱をさけた。だがこの問題で参議院での反乱が起きれば、民主党が「大連立騒動」をこえる危機に陥る可能性さえある。
政治の動きは自民党と民主党だけにとどまらない。21世紀版「前川リポート」の必要性がテーマになったり、地方政治の側から国政に影響を及ぼす新たな装置がしかけられたりしている。既成政治の枠が大きく揺らいでおり、「政治再編」のうねりが登場しようとしている。
労働者民衆のための社会・経済政策、そのための政治が必要だ。右翼や保守のサイドからの政治再編に抗して、労働者民衆の側からの政治再編が必要とされている。
●生活防衛・社会変革の08春闘を!
朝日新聞は「では『改革』はどうする」と題する社説で、「世界経済の暗雲」や「日本市場の低迷ぶり」は、「財政再建など改革への取り組みがスピードダウンしていると見られていることが、その原因の一つと指摘される」と述べ、次のように主張している。「そうした大波に抗して、この国をどう引っ張っていくつもりなのか。国民への目配りを重視する首相の思いは理解できるが、内向きばかりに目を奪われて日本丸が沈み始めては元も子もない」(1月19日)。
このような論調が小泉構造改革の「熱気」を支えたのだ。「日本丸」を支えているのは誰だというのか。米国経済か、日本経団連か。呪文のように「改革」と言えばすべてが許される時代は、もはや事実として終わっているではないか。
労働者民衆の社会・経済政策のために、変革の時代を築こう。
08春闘をそのための一歩としよう。
(2008年1月19日)
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