宮城全労協ニュース/第106号(電子版)/2008年7月18日

<本号の内容>
◎G8サミットを問う札幌行動(電通労組の仲間の報告)
◎資料「労働サミット」への申し入れ


(注)G8サミットが終わった。札幌でのピースウォークに参加した電通労組の仲間からの報告を紹介する。また、労働大臣会合(新潟)への「08春の共同行動」などによる申し入れを資料として掲載する。雇用の安定、労働者の権利擁護、貧困・格差の是正はG8の共通のテーマであり、「先進資本主義諸国」の責任である。だが、厚生労働省と舛添大臣の労働サミットへの関わりはまったく消極的なものだった。


「地球規模の問題」に取り組むことが2008年サミットの「課題」だった。気候変動−地球温暖化への世界的な取り組みの合意、拡大する貧困と格差の是正、とくにアフリカへの支援、原油と穀物をはじめとする原材料の高騰の抑制がその中心的なテーマだった。いずれも有効な合意に達することはできず、実効ある対策を打ち出すことはなかった。「G8の限界」はもはや待ったなしの現実である。

新自由主義グローバリゼーションの修正あるいは異なる在り方を求める声は、資本主義体制の内部でも高まっている。日本では小泉−竹中路線に批判的だった人々がサミットに注文をつけた(*1)。だがG8サミットは、「世界を翻弄する投機マネー」や多国籍企業の統制に踏みだそうとはしなかったし、米国に猛省をうながすこともなかった。福田首相にはそのような視点はなかった。

ブッシュ大統領の最後のサミットでもあった。G8首脳は「ブッシュの失敗」を話題にすることさえなかった。けっきょく「身内の傷」には触れないということだ。「21世紀に入って日米同盟は飛躍的に強化された」。福田首相はブッシュとの首脳会談を終え、イラク戦争を共有した両国関係をそのように表現した。これでは「外交の福田」が泣くではないか。


福田首相は議長を担った。「地球的規模の課題」に取り組む日本の姿勢を世界に示し、外交の福田を大いにアピールして政権浮揚につなげる見せ場であった。結果は惨めなものだった(*2)。海外メディアが「過剰警備と豪華なサミット食事」にクレームをつけたと報じられている。民衆とはかけはなれた、特権的で排他的なG8を象徴している。

7月15日、漁業者たちは全国一斉休業に立ち上がった。G8サミットは原油高に歯止めをかける方策を打ち出さなかった。福田政権は世界経済の現状にまったく無力であった。「一斉罷業」と言うべき漁業者たちの決起は、北海道洞爺湖サミットへの怒りの回答であった。


(*1)たとえば寺島実郎(日本総合研究所会長)は、為替取引に「国際連帯税」を課税して「マネーゲームを縛る」、その税収を国際環境対策の財源にすべきだと主張した(朝日新聞7月5日「投機マネーの制御に踏み出せ」)。寺島はこの間多くの場で、遅ればせながら日本でもこのような方策(いわゆるトービン税)を考える議員集団の活動が始まったと強調している。

経済学者の浜矩子は、グローバル資本主義が「一人占め、早い者勝ち、弱肉強食」の連鎖を続けていくと、その反発から「一気にグローバル社会主義の方向」に傾くかもしれないし、もっと恐ろしいのはグローバル資本主義の行き過ぎが「グローバル全体主義台頭の温床」になることだと警戒感を表明、グローバル資本主義の暴走を防止する策を洞爺湖サミットで語るべきだと主張した(毎日新聞6月15日『時代の風』欄)。

(*2)毎日新聞のサミット直後の世論調査より。
○温室効果ガス削減など福田首相は議長として指導力を発揮したと思うか?
<思う27、思わない62>。
○サミットを経て福田首相への評価は変わったか?
<良くなった5、悪くなった7、変わらない83>。
○原油や穀物などの価格高騰は生活に影響を与えているか?
<大いに影響している52、ある程度影響36、あまり影響はない6、全くない1>。



●チャレンジ・ザG8・市民ピースウォーク7・5
(G8サミットを問う札幌行動に参加して)


北海道の空に5千名の「NO!G8」の声

7月5日、30度を超える真夏日の札幌、市内中央部の大通り公園はG8サミットに反対する多くの人々でうずまっていた。「8ヵ国だけで世界の問題を決めるな!」。色とりどりの旗を掲げて日本内外から集まった参加者の心は一つになっていた。

7月7日から9日まで、北海道洞爺湖サミットが開催された。これまでサミット関連行事に対抗して各地で取り組みがなされてきた。仙台では6月3日に「いのちとくらし・公共サービスを考える」集会がもたれた。またエネルギー大臣会合にあわせて開催された青森での反核燃全国集会に参加した。首都圏ではサミット直前、集会とデモが行われた。それらを結集する形で、札幌を中心にG8サミットに反対する広範な結集が実現した。

「G8サミットを問う連絡会」は7月4日から当地で、「国際民衆連帯DAYS」の企画を始めていた。「貧困と労働」「G8と途上国の貧困と債務帳消しについて」「自由貿易と食糧・環境危機」「女性の人権」「戦争と暴力」など、数多くのテーマによるフォーラムが連日取り組まれた。「G8サミットを問う連絡会」に集う国際民衆連帯ワーキンググループが4日から9日までの間に開催する数多くのフォーラムには、数多くの賛同団体、多様なグループが参加し、反G8民衆運動の広がりを示した。

今回のサミットでは「地球温暖化」「原油・食料価格高騰などの世界経済」が主要議題とされた。G8首脳たちは、二酸化炭素削減を「市場メカニズム」に委ねることによって地球温暖化の解決を計るとしているが、そんなことは全くのごまかしだ。人類最大の公害をストップさせるためには、その公害を引き起こしている資本活動を規制する以外にはない。

原油・食糧危機も然りだ。世界銀行総裁は洞爺湖で記者会見し、「サミットの責務は、希望を失った人に希望をもたらすことだ」と発言したという。だが、金持ちの資金が投機に流れた結果が現在の事態であり、途上国の人々の深刻な貧困と飢餓を生み出していることを考えるとき、G8サミットが推進する新自由主義政策の下では、人々に希望ある未来を約束することはできない。


民衆の怒りに包囲されたG8

G8開催のために日本政府は国の威信をかけ、全国各地から2万人もの警官を動員し戒厳態勢をしいた(首都圏の警備も同様だったという)。フェリー港である苫小牧から札幌に向かう高速道路では、いくつもの県警の部隊が交通規制を行い、草むらを探索していた。札幌は異様は雰囲気であり、交差点という交差点には警官が配置されていた。

民衆連帯フォーラムに参加しようとする海外ゲストに対して、外務省と公安警察は妨害の挙に出た。こうしたなか、韓国民主労総の労働者1名を不当逮捕、4名の入国を拒否、農民団体代表19名の入国を拒否して退去命令を出すにいたった。このような暴挙は、「反サミット」の大衆的な動員、「もう一つの世界は可能だ」とする運動の世界的な広がりへの恐怖がもたらしたものだとも言える。「開かれたサミット」を課題に掲げるG8だが、実態は、権力の暴力機構を総動員して民衆を排除することによってしか、その「非民主的枠組み」を維持できないということなのだろう。

韓国民主労総の仲間はこの弾圧に抗議し、「入国目的が明確であり、妥当な理由なく入国を拒否する日本政府に対する糾弾の声明」を明らかにし、入国した4名は札幌大通り公園で日本の労働者たちとともに抗議の座り込みに入った。

ウォルデン・ベローさん(フィリピン)は5日夜に開催された「G8サミットを問う集会」で、「市民運動の側から見るG8の歴史」についてスピーチした。「新自由主義の拡大、貧困の拡大、不平等の拡大」を通して、「G8ネオリベラリズムに対する抗議運動の拡大」の歴史であったと。民衆の声と大衆的動員によって包囲され、追い込まれていくのは紛れもなく彼らだ!


■心を一つに!5千人の反G8デモ!
許さぬ国家権力の暴力と4名の逮捕!


5日午後、5千人のピースウォークが大通り公園から出発し、市民の大きな注目を集めた。G8首脳のビッグマウスをつけた海外からの参加者たちなど、思い思いのスタイルで「G8反対!」を訴えて歩く。

一方、ピースウォークに対抗して、明らかな過剰警備態勢が敷かれた。初めて目にしたが「ロボコック」のようないでたちの「精鋭部隊」が配置され、各県警から動員された機動隊が幾重にも道路を取り囲む。きわめて異様な空間である。こうした中でデモ参加者4名が不当逮捕された。

サウンドデモ(音響設備を積んだトラックにDJが乗り、音楽を流しながらデモする)のDJ交代のためトラックの荷台に飛び乗ったところ、「荷台には1名が許可条件である」ということをもって逮捕し、また運転手に対しては運転席のサイドガラスを破壊して逮捕するという「暴走する権力」そのままの姿である。主催者はアピールを出して弾圧を糾弾した。このような全く不当な弾圧に対して、デモ参加者の抗議のシュプレヒコールや路上座り込みなどが、権力の弾圧に抗する民衆の意思として必要ではないのかと感じた。

G8サミットで何が話し合われているのか、連日の報道がなされている。しかし、何も解決できないし、解決しようともしていない。札幌を中心として北海道各地で開かれた反G8・対抗フォーラムや諸行動は、労働者・市民・農民・学生など、数え切れないほどのグループがつながり、大きな力として浮かび上がった。それはまさしく国境を越えた連帯のもと、大きく歩み始めたということだろう。

もう一つの世界は可能だ!
世界はきっと変えられる!変えなければならない!


(2008年7月8日)


(資料)労働サミットへの申し入れ

08けんり春闘全国実行委員会
フィリピントヨタ労組を支援する会
国鉄闘争共闘会議
中小労組政策ネットワーク
北関東ユニオンネットワーク

(事務局取りまとめ団体)08春の共同行動


「G8労働大臣会合へ向けての申し入れ」
(2008年5月8日)


きたる5月11日から同13日の3日間、新潟市において「G8労働大臣会合」が開催される。グローバル化する国際社会にあって、8ヵ国の労働行政担当大臣の責任は極めて重大であり、私たちは、日本の労働者並びに労働組合として、同会合の討議を注視するとともに、以下の事項を出席各国労相に申し入れる。


(1)グローバル企業のCSR(企業の社会的責任)

企業活動が国境を越える中、グローバル企業の活動は地域社会に大きな影響を与える。フィリピントヨタでは、大規模な解雇と悪質な労働組合つぶしが行われた。また、日本の豊田市におけるトヨタ自動車の下請け企業ではベトナム人技能実習生に対する最低賃金法違反や、トイレに行く時間を計り1分あたり15円の罰金を科すなど、悪質な人権侵害が起きた。世界有数の企業にあってこのような法令違反がまかり通っている。

各国政府の労働行政責任機関は、CSRに関し、企業活動全般に対する厳正な指導・監督に努められたい。国連は、人権、労働、環境、腐敗防止に関して10原則からなる「グローバルコンパクト」を掲げ、企業市民としての責任を求めている。同原則の啓蒙と普及に向けいっそうの努力を払われたい。

(2)グローバル企業活動の規制

より安い人件費や法人税を求めて進出と撤退を繰り返す「渡り鳥企業」の行動が、進出先の労働者の生活と権利を脅かしている。このような「企業活動の自由」を制限するとともに、現地労働者の雇用を守るための新たな国際基準を設けるべきである。多国間にまたがる企業活動においては、送り出し国と受け入れ国の国内労働基準に格差がある場合でも、労働者の人権尊重の観点から、より高次の基準を適用させるよう、行政上の措置を講じられたい。

(3)国際公正労働基準

日本、ニュージーランド、米国、豪州においては、週に50時間以上働く労働者比率が約20%を超える水準にある。これら各国の政府は、長時間労働の弊害を深く認識し、労働者の健康を守るための長時間労働制限の政策を実行すべきである。特に日本においては年間自殺者が3万人を超え、重大労災も300件に達するなど、メンタルヘルスを含めた総合的施策が求められる。各国政府は、ILO各条約や各勧告など国際公正労働基準の遵守を徹底されたい。また、移住労働者を含め、国内で働くすべての労働者に対して公正かつ平等な社会保険、労働保険を適用されたい。

(4)民営化

公共サービス部門の民営化は国民生活を破壊すると同時に、そこで働く労働者の雇用不安を引き起こす。日本においては国鉄の分割・民営化によって1047名に上る国家的レベルの不当労働行為が行われ、公共財産としての人々の足である「鉄路」は根底から破壊された。各国政府は公共サービス部門の民営化による弊害を直視し、公共サービスの再建と拡充に向けた政策転換を行うべきである。

(5)労働者の人権・生活と権利

労働現場での児童に対する搾取や人身売買は、次世代が抱くべき希望を踏みにじる恥ずべき行為である。日本においては「外国人研修・技能実習制度」が人身売買の一形態として米国国務省「人身売買年次報告」で指摘されるなど、国際的非難を受けている。各国政府は児童労働に対する厳格な罰則を実行すると共に、移住労働者に対しては「研修」「実習」などの弥縫策を改め、労働基本権を付与した移住労働者政策を実施すべきである。同時に超過滞在者に対してもアムネスティなどの人権的救済政策を進め、寛容性のある多文化共生社会の実現に努力すべきである。

(6)世界的な非正規労働

国際的な非正規労働者の急増と労働力流動化政策は、雇用を不安定化させ、そのしわ寄せは経済的弱者へと集中する。日本における非正規労働者数は1677万人で、すべての被雇用者の3分1に達する。各国政府は「雇用形態の多様化」の視点から転換し、非正規労働者の増大に歯止めをかけ、労働者が安定した雇用状況下で安心して働くための環境整備と政策の実行に努められたい。(以上)
 

■(宮城全労協ニュース第106号/2008年7月18)