<後退続く厚労省>
◎労働者派遣法の抜本改正を!
◎「名ばかり管理職」通達の撤回を!
<資料>
◎労働者派遣法抜本改正を求める全労協声明
◎厚生労働省「名ばかり管理職」通達に関する声明
(全国一般労働組合全国協議会)
●派遣法の「まやかし」改正を許すな!
福田首相は懸案となっていた労働法制の改正問題を投げ出し、辞任した。自公政権の後を継いだ麻生首相は、政権の延命策動に汲々とするばかりであり、所信表明や国会答弁でも法改正の明確な方針を示していない。
このような福田政権から麻生政権への過程で、厚生労働省の「後退」が顕著になっている。国際金融危機を口実にして、経済界からの圧力がさらに強まることも予想される。
経済界やその利益を代弁する学者・評論家たちは、とくに日雇い派遣に関して、これを規制することは労働者の雇用機会を奪うことになると本末転倒の批判を繰り返している。日雇い労働者の雇用機会は、まさに政府・経済界が保障すべきものである。規制緩和の推進者たちは、グッドウィル問題(介護に続いて派遣でも)が典型的であるように、厚労省の後手対応(小泉政権下で「事前規制型から事後チェック型への移行」ともてはやされた)が労働者の雇用を突然奪い、絶望的な生活不安に追いやってきたことを問題にしようとはしない。
焦点の一つである派遣法に関して、厚労省は8月28日、労働者派遣法の改正に関する「たたき台」を示した。「たたき台」は9月12日、労政審部会(労働政策審議会労働力需給制度部会)に報告案として提示された。その内容は、この間の経緯から大きく後退するものだった。登録型派遣については踏み込まず、「日雇い派遣」についても18業種を例外としただけでなく、巧妙な規制緩和の抜け道を残すものとなっている。
このような厚労省の姿勢に対して、派遣労働ネットなどは「日雇い派遣禁止の名に値しない」「骨抜きである」と批判し、見直しを求めてきた。全労協をはじめ労働組合などの抗議闘争、国会行動が続けられてきた。
しかし、報告案は9月24日、派遣法の改正案として舛添厚労大臣に提出された。厚労省は法案を作成して国会に上程する予定だが、国会情勢が不透明のため、今後の扱いは流動的だ。
全労協は9月25日、声明を発表、闘争の強化を呼びかけた(資料参照)。抜け道だらけの改正案を許さず、労働者派遣法の抜本改正を求めよう!
■資料/全労協の声明
労政審建議に強く抗議し、
労働者派遣法抜本改正を求める声明
労働政策審議会労働力需給制度部会は9月24日、「労働者派遣制度の改正について」をとりまとめ、厚生労働大臣に建議した。とりまとめの内容は、12日に事務局から提示された案そのままで、一部について労使の意見が添えられたものになっている。
格差と貧困、ワーキングプアーの温床として、今日の派遣労働があり、その抜本的改善が求められ、舛添厚労大臣も大幅な改善を言明してきたにもかかわらず、建議は全く期待はずれのものであると言わざるを得ない。
建議は、対象業種規制には一切ふれず、日雇い派遣も多くの業種で認め、引き続き野放しにされる危険があり、派遣先責任は是正勧告に止め実効性を期待できないなど、期待されたものとはかけ離れたものとなっている。このようなごまかしの建議に強く抗議し、改めて労働者派遣法の抜本改正を求めて闘い続けることを表明する。
我々は、以下のような改正点を重点に取り組んでいく。
1.派遣労働は専門業務に限定を!
99年法改正で派遣労働原則自由化が決まり、製造業の解禁(04年)が加わり、今日の派遣労働の矛盾が急速に拡大した。派遣労働は、当面、99年法改正以前の22業務に限定することが必要だ。
2.日雇い派遣、登録型派遣を禁止し、常用型派遣にせよ!
派遣契約期間を1ヵ月以上にすれば日雇い派遣の問題が解決するのではない。日々派遣先が変わり、不安定な働き方が続くのでは意味がない。業種規制と同時に、登録型派遣という、仕事のあるときだけ雇用契約を結び、無いときは何の保障もなく放り出される仕組みそのものを規制することが必要だ。
3.派遣マージンの上限規制を法制化せよ!
建議では、派遣マージンの情報公開義務化にとどまっている。派遣元のピンハネをはっきりと上限規制することを法的に定めることが必要だ。
4.派遣先に「みなし雇用」責任を!
違法派遣を受け入れた派遣先の「みなし雇用」責任を法的に規定すべきだ。行政の勧告では、悪質な派遣先責任を問うことは出来ない。一流の大手企業が違法派遣、偽装請負を行っており、その責任が問われても、一時有期雇用でごまかしている現状を変えるために「みなし雇用」責任を課すべきだ。
5.事前面接禁止を徹底せよ!
6.「もっぱら派遣」の禁止を!
2008年9月25日
全国労働組合連絡協議会(全労協)
●「名ばかり管理職」通達を撤回せよ!
厚労省は9月9日、「名ばかり管理職」に関する通達を出した(注)。
厚労省の調査(「管理監督者の範囲に問題があると考えられる店舗66店(企業数53社)に対し、平成20年4月〜6月に実施」)によれば、これらの「多店舗展開する小売業、飲食業等の店舗」で、実に8割超の店舗が「名ばかり店長」だった。
このような調査の公表と同時に、厚労省は今回の通達で、「管理監督者の範囲」を判断する要素を示した。つまり、どのような要素があれば管理監督者ではないのか(注)。
だが、その個々の内容は、これまでの判例や行政解釈から後退しており、むしろ管理監督者の範囲のハードルを切り下げるものとなっている。使用者側がこの点を「悪用」する可能性すらある。
通達では、これらの要素が認められない場合でも、直ちに管理監督者だということにはならないと記されている。しかし、厚労省の示した点を切り抜けさえすれば、管理監督者として扱うことが可能ではないか。そのように考える経営者が出るだろう。そうなれば、厚労省が示した基準は、経営者側にとって、逆にハードルをクリアするための判断材料となりうる。厚労省もそのことを自覚しているから、わざわざ付記しているのだろう。
通達に対して、東京東部労組をはじめ、反対、抗議の声明が相次いでいる。全国一般全国協議会の声明を紹介するので、参考にしていただきたい。
(注1)
「多店舗展開する小売業、飲食業等の店舗における管理監督者の具体的な判断要素について」厚労省通達(9月9日)別添資料より
「管理監督者性を否定する重要な要素」
<職務内容、責任と権限>
@アルバイト・パート等の採用について責任と権限がない
Aアルバイト・パート等の解雇について職務内容に含まれず、実質的にも関与せず
B部下の人事考課について職務内容に含まれず、実質的にも関与せず
C勤務割表の作成、所定時間外労働の命令について責任と権限がない
<勤務形態>
@遅刻、早退等により減給の制裁、人事考課での負の評価など不利益な取扱いがされる
<賃金等の待遇>
@時間単価換算した場合にアルバイト・パート等の賃金額に満たない
A時間単価換算した場合に最低賃金額に満たない
「管理監督者性を否定する補強要素」<勤務形態>
@長時間労働を余儀なくなれるなど、実際には労働時間に関する裁量がほとんどない
A労働時間の規制を受ける部下と同様の勤務態様が労働時間の大半を占める
「管理監督者性を否定する補強要素」<賃金等の待遇>
@役職手当等の優遇措置が割増賃金が支払われないことを考慮すると十分でなく労働者の保護に欠ける
A年間の賃金総額が一般労働者と比べ同程度以下である
(注2)
今回の9・9通達に先立って、厚労省は本年4月1日、都道府県労働局長宛に通達を出している(「管理監督者の範囲の適正化について」)。「名ばかり管理職」の提訴が続き、大きな社会問題となる中で、労働行政の対応が各地で問われたからだ。
「労働時間等が適切に管理されず、割増賃金の支払や過重労働による健康障害防止等に関し労働基準法等に照らして著しく不適切な事案もみられ、社会的関心も高くなっている」、「労使双方からの相談が増加している」。そこで、「管理監督者の取り扱いに関する相談が寄せられた場合には、企業内におけるいわゆる『管理職』が直ちに労働基準法上の管理監督者に該当するものではないことを明らかにした上で」適切に対応せよ、というものだった。
厚労省が今回、「具体的な判断要素」を示したのは、使用者側の姿勢が改善せず、労働行政の現場で対応に窮してきたことを物語っている。
(注3)
9・9通達への批判が相次ぐ中、厚労省は10月3日、「通達については、一部に、管理監督者の範囲について誤解を生じさせかねないとの意見があること」を認め、一問一答形式の解説をホームページに掲載した。厚労省はここで、「基本的な判断基準を変更したり、緩めたりしたものではない」と弁明している。
■資料
厚生労働省「名ばかり管理職」9・9通達に関する声明
2008年9月10日
全国一般労働組合全国協議会
9月9日、厚生労働省は「多店舗展開する小売業、飲食業等の店舗における管理監督者の範囲の適正化について」と題する通達を全国の労働局に出した。
この間チェーン展開している小売業や飲食業をめぐっては、職務権限や待遇が不十分なのに管理監督者とみなされ、長時間働いても残業代が1円も出ない「名ばかり管理職」が社会問題化していた。今年1月には東京地裁が日本マクドナルドの店長を「管理監督者にはあたらない」と認めた。私たち全国一般全国協でも、東京東部労組による「紳士服のコナカ」、宮城合同労組による「洋服の青山」、長野一般労組による「セブンイレブン」(シーブイエス・トヨクラ)などでの闘いが続いている。
管理監督者の法的要件を拡大解釈=「偽装」し、労働時間規制や残業代支払いから免れようとする経営者の違法行為を厳しく摘発するよう、私たちは従前から厚労省に要請してきた。しかし、今回出された通達は、これまでの判例、行政解釈、各地の労働基準監督署の判断、学説などで示されてきた管理監督者の範囲から大きく逸脱している。私たちが求めてきた内容とはかけ離れている。
通達では「管理監督者性を否定する重要な要素」として、@アルバイト・パート等の採用(人選のみを行う場合も含む)について責任と権限がない、A部下の人事考課について職務内容に含まれず、実質的にも関与せず、B遅刻、早退等により減給の制裁、人事考課での負の評価など不利益な取扱いがされる、C時間単価換算した場合にアルバイト・パート等の賃金額に満たない、D時間単価換算した場合に最低賃金額に満たない−−などをあげている。
管理監督者の適否については、判例でも行政解釈でも、従来は出退勤の自由があるかどうか、経営者と一体的な立場で仕事をしているかどうか、一般社員と比較してふさわしい待遇(賃金)が与えられているかどうか、などで判断してきた。
そういう意味では今回の通達で示す判断要素は極めて不適切な内容である。「これらの否定要素が認められない場合であっても、直ちに管理監督者性が肯定されることになるものではない」としながらも、こうした判断要素さえクリアしていれば管理監督者だとして利用する経営者が出ることが懸念される。事実上、法的要件のハードルを下げるものと判断せざるをえない。逆に「名ばかり管理職」をいっそう増やす方向に政府が後押ししたものと言わざるをえない。
私たちは、厚労省が今回の通達を撤回し、あらゆる企業で横行している「名ばかり管理職」を一掃するために、これまでの判例や行政解釈を前提にあらためて要件を厳格に定める通達を出すよう強く求める。
以上。
■宮城全労協ニュース第111号(2008年10月12日)

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