「危険水域」に入りつつある麻生政権
−自公政権をさらに追いつめよう!
●政権発足2か月で支持が急落
10月末の緊急経済対策発表から1か月がたった。この間、麻生首相は多くのものを失った。内閣は不統一をさらけだし、首相の指導力と政策能力への疑念が急浮上した。果ては「政治家としての資質」が取りざたされるあり様だ。麻生政権は坂を転げ落ち始めた。
持ち前の「べらんめえ」調から繰り出される失言や暴言の数々。カップ麺の値段を400円と言って恥じないような、「庶民生活」とかけ離れた感覚。最初は失笑で済ませていた党内の空気は怒りに変わり、いまや諦めの声すら聞こえるようになった。
「麻生が自民党の危機を救う」という期待感は、すでにない。支持は急落し(注1、2)、自民党内には「麻生離れ」が急速に広がっている。「麻生で選挙は戦えるのか」。深刻な危機感が与党をおおっている。
首相は求心力を保つために、第二次補正予算案の臨時国会提出にこだわり、年末・年始解散に含みをもたせようとした。しかし、自民党は事実上、首相の「解散権」を封じ、来春の予算成立までは事態を引き延ばす道を選択した。党幹部の態度は一転して露骨になり、麻生の独走を押さえ使い回すしかないと言わんばかりだ。こうなれば極少数派閥の代表にすぎない麻生が抵抗することは難しい。こうして財政−予算をめぐる党の大攻勢がしかけられている。
与党にとって好転材料はとくに見当らない。だからといってこのまま麻生を交替させることも困難だ。当面は敵失、つまりは民主党の失敗を待つしかない、というのが率直な所なのだろう。
自民党内に明確な倒閣運動は登場していない。党内に拡大している議員集団にしても、厳しい選挙情勢を抱えた議員たちの生き残り策という性格が濃く、ただちに第二の「小沢分裂」や「加藤の乱」に直結するとは考えられていない。だが麻生政権をこのまま延命させればさせるほど、路線対立のリスクは高まる。そこに選挙情勢の一層の悪化が重なれば、政界再編がらみの波乱に発展する可能性は否定できない。
この国の「オピニオン・リーダー」たちの多くは、ここに至っても自民党に下野を迫らず、政権たらい回しを許している。もちろん、私たちは保守政治の打破をめざしている。「小選挙区制度」は社会党、共産党など左翼勢力を攻撃するためでもあったと理解している。それでも、「政権交替可能な保守二大政党制」をかかげ、「政治改革」を標榜して小選挙区制度導入の論陣を張った人々の多くが、いまなお現状維持にとどまっているのは道理に反していると言わざるをえない。
小泉−竹中政策の限界は2005年末から2006年始めにかけて顕著になり、後を継いだ麻生と福田の清和会政権は小泉政権の負債をかかえて自壊した。麻生政権の混迷が示しているのは、自公の政権たらい回しによっては「小泉時代」の清算と、次の日本の展望は描けないということだ。
生活・生存と権利をかけた若者たちの反乱が拡大している。派遣労働者、「非正規」労働者たちが立ち上がっている。状況は小泉時代とは一変している。「連合」が来春闘での賃上げ要求を決定したのも、そのような時代の変化があってのことだ。アメリカではオバマが大統領に選出された。オバマ新政権の政策がどうであれ、その選出過程はリアルタイムで日本に伝わった。日本もこのままではいけないという声が広がっている。
麻生政権を追いつめよう!
自民党政治の解体、自公政権の打倒をめざそう!
大リストラを許さず、09春闘を準備しよう!
●「定額給付金」の無策と迷走
解散・総選挙を先送りした首相と政府・与党にとって、10月30日の経済政策発表が反転攻勢の第一弾となるはずだった。
「生活者を第一においた、新たな経済対策「生活対策」を本日決定します」。「痛みに直面する、様々な生活者の方々に、現実に効果を実感していただけるように、明るさにつながるように、大胆な政策を実施します」(首相メルマガ・内閣府hp)。
皮肉なことに、最重点の「定額給付金」が政権を一気に失速させることとなった。「動機不純」な政策意図、粗雑な政策立案、内閣の不統一、自治体への判断丸投げ。政府の「ばらまき」と「無責任」に対して民衆の批判が集中した。
首相は当日、「定額給付金」を「3年後の消費税率引き上げ」とセットで発表し、効果を帳消しにした。消費増税にのぞむ本気度を問われた首相は翌日、あっさりトーンダウンし、逆に増税派の期待を裏切った。「発言の軽さ」と「政策の曖昧さ」が端的に示された瞬間だった。
その後の迷走ぶりは異様なものだった。「生活対策」ならば所得制限すべきという与謝野経済財政担当大臣と麻生総務大臣が対立したことを契機に、政府・自民党は乱戦状態におちいった。両大臣の対立は経済財政諮問会議の場でも公然化したが、閣内調整は行われなかったのだろう(注3)。原因は「経済対策」と「生活対策」を並列し、その性格を吟味しなかった首相にある。
所得制限の判断は地方自治体にまかされた。「地方分権だから良いのではないか」。地方の反発に対して首相は平然と述べた。発言は二転三転を続けた。首相は給付業務の困難性を事前検討しなかったし、自分が発言した「全所帯給付」の意味にも無関心だったのではないか。
「住民票所在地に暮らしていないホームレスやネットカフェ難民ら生活困窮者への対応」「夫の家庭内暴力被害から逃れるために別居している妻などへの給付方法」「施設に入所している高齢単身者などへの給付」「所在不明や本人証明が困難な人たち」「『外国人』への給付方針」等々、自治体担当者の困惑と悲鳴が相次いでいる。もっとも届けなければならない人々への給付が定まらず、実際には多くが給付不可能となるだろう。
改めて政策意図が問われる。ドイツ政府は「消費権」の配布を検討しているという。イギリス政府は付加価値税(消費税)の引き下げ、低所得者への減税と高額所得者の増税を発表した。「定額給付金」はあまりにも粗雑であり「動機不純」だった。「定額減税(給付)」は今夏、公明党と当時の麻生幹事長が福田元首相を辞任に追い込む一因となったいわくつきの政策だった。選挙対策の「ばらまき」だと当初から批判を浴びていたが、政府与党はそのまま中心政策に押し出した。
しかも、所得制限の判断基準として政府が出したのは1800万円(給与で2千万円)だった。これが「痛みに直面する様々な生活者」の所得水準なのか。経済財政諮問会議でも民間議員から「経済的に弱い立場の人」に配慮すべきだと注文が出されていたが(注3)、論点が深まった形跡はない。
「やります定額減税」と大書した公明党のポスターが目を引く。しかし「2兆円が可能なら別の使い方を」という声が圧倒的だ。給付業務の大混乱が確実視され、総務省は早々と犯罪防止を呼びかけている。自民党内には中止を望む意見もあるだろうが表面化していない。理由は明らかだ。公明党の支援なくして選挙を闘えないからだ。
●「危険水域」に入りつつある麻生政権
緊急経済政策発表から1か月、次の「見せ場」が党首討論という形でめぐってきた。
「百年に一度の金融危機」であり、経済対策が最重要だと首相は強調してきた。選挙をやっている余裕はないと。ならば第二次補正予算案の先延ばしはつじつまがあわない。そう小沢民主党代表は主張した。メディアの多くが酷評したように、確かに「凡戦」ではあったが、首相に説得力はなく「軍配は小沢」に上がった。
「私も解散は一つの手段だと当初思っていた」。首相は臆面もなくそう振り返った。確かに金融危機がシナリオを変更した理由の一つであっただろう。その後の展開では「百年に一度」は政権にしがみつく口実になっている。
「政局より政策」を訴えた首相は党首討論の翌日、わざわざ岩手県に乗り込んで街頭演説を行った。「小沢党首への批判を押さえた」演説は、実に空々しく、滑稽でさえあった。道路特定財源や「郵政民営化」問題など、政策迷走も続いている。
得意分野とされる外交でも、麻生首相は得点をあげていない。金融サミット(G20)でも、「世界第二位の経済大国」の存在感をアピールできなかった。「IMFへの10兆円の融資」が手土産だったが、それは逆に、日本政府の路線不在を浮かび上がらせたのではないか。来春の第二回会合の開催を「アジアを代表して日本で」との訴えも、アジア諸国の支持を集められなかった。麻生戦略である『自由と繁栄の弧』は通用しないだろうし、田母神航空幕僚長問題も大きな外交失点だろう。日本外交の手詰まりは深まる一方だ。
麻生首相への失望感は最新の世論調査に示されている。与党にとって衝撃的な数字だったと報道されている。「危険水域」とされる支持率30%割れを報じたメディアもある。引き続く各種世論調査が追い打ちをかけるだろう。
年末・年始、事態の急展開もありうる。09春闘の準備とともに、麻生政権を追いつめる闘いを強めよう。
(注1)
日経新聞と東京テレビの最新世論調査(11月28日〜30日)より。かっこ内は10月下旬の前回調査。数字はパーセント(日経新聞12月1日)。
主な内容は・・
*内閣支持率は急落、支持と不支持が逆転。
*解散・総選挙の実施時期は、年明けまで実施が51%(前回40%)
*政党支持率に変動なし。
◆麻生内閣を支持する 31(48)/支持しない 62(43)
◆麻生内閣を支持しない理由
○安定感がない 44(26)
○指導力がない 42(19)
○政策が悪い 39(33)
○人柄が信頼できない 39(29)
○自民党の内閣だから 15(40)
◆(麻生首相と小沢代表で)次の首相にふさわしいのは
麻生首相17(36)
小沢代表17(16)
どちらでもない60(42)
◆解散・総選挙の先送り 支持33/不支持52
◆第2次補正予算の年明け提出 支持28/不支持56
◆定額給付金の支給 評価する26/評価しない66
◆支持または好意を持つ政党
自民党 39(41)
民主党 30(31)
公明党 5( 3)
共産党 3( 5)
社民党 1( 2)
支持政党なし 15(11)
*「選挙後の首相にふさわしい」。麻生首相が17%から36%へ。自民党支持層でも69%から35%へ急落しており、この数字がもっとも衝撃を呼んだとの報道がある。
(注2)
「新報道2001」の最新(11月27日)調査。
◆内閣支持率 支持する30.4/支持しない61.6
◆次の衆議院選挙ではどの党の候補者に投票したいか
自民19.0 民主30.6 公明3.8 共産2.6 社民0.2
決めていない 42.4
◆政府は第二次補正予算案の提出を先送りしたが、、
問題ない 17.2 今国会に提出すべきだった74.8
*「新報道2001」(フジテレビ)の調査は首都圏の成人男女500人を対象とした電話調査で毎週実施。結果がホームページで公開されている。
*首都圏調査であることが特徴で、たとえば中川元自民党幹事長は従来から、この調査を全国紙の調査と対比させて分析してきた。衆議院の小選挙区は参議院より大都市部の議席配分率が高い。したがって「地方重視」の政策より「都市部重視」が焦点となり、とくに「小泉改革派」の立場からは都市部の支持動向が重要になる、というわけだ。「新報道2001」の最新結果は、大都市部、とくに首都圏の自民党に波紋を広げているだろう。
*公式ブログで中川秀直は次のように指摘している(12月1日)。
「・・全国世論調査である日経・テレビ東京共同と首都圏限定調査である新報道2001の内閣支持率が31%と30.4%、不支持率が62%と61.6%とほぼ並んだのは、これが「正値」であるとの意味である」。
支持率が30%割れ目前になった理由は、「麻生内閣の仕事ぶりを評価しない」、具体的には「定額給付」や「第二次補正予算の先送り」、「解散・総選挙の先送り」への不支持が「下げ圧力」となったからだ。
「内閣支持率の反転上昇」の鍵は、「政権の命運をかける政策課題を定め、その遂行に覚悟を固めること」、具体的には「(地方出先機関廃止など)小泉元総理の郵政民営化に匹敵する」政策課題だと、中川は主張している。
また、民主党への支持が伸びていないことについて、「民主党に一度政権を任せてもよいのではとの期待感が民意から失せてきた証左」だとも述べている。
(注3)経済財政諮問会議(10月31日/内閣府hp参照)での議論より。
首相の政策発表の翌日の会議で、民間議員の吉川洋は、「給付金」について、このような政策の目的には2つあり、1つは「(消費を)下支えして消費を喚起する」ことだとしたうえで、次のように意見を述べている。
「(もう一つは)不況というのは逆進的であり、やはり経済的に弱い立場の方々に重くのしかかる。これを緩和すべきである」「経済にしっかりとした効果を与える、また社会正義ということ、いずれの点からも所得分配上、めり張りがある給付金の在り方というものを今後制度設計していくべきではないか」。
岩田一政議員は、この点は同感だとしたうえで、アメリカなどの「勤労所得税額控除」制度など、「社会保障と税制をつなぐような低所得層を中心とした減税」の検討を主張している。
その後、次のようなやりとりが続く。
○鳩山総務大臣 「岩田議員の件は中長期的には全くそのとおりだが、この定額給付金は年度内に実施するということで一過性のものと考えた場合に、・・金額等は総理が御決断されるのだろうが、単純に手間暇のことを考えた場合、自治事務として地方自治体の窓口で配ることになる場合、どこまでできるかという問題との闘いかと思う」。
○岩田議員 「個人的にはやはり上限をどこかに置いた方がいいと思うが、それは自主的申告で上限幾らですと言えば、それ以下はよろしいというお考えもあろうかと思う」。
○与謝野内閣府特命担当大臣 「どうやって配るか、そういう方法等がこれから与党の中で議論される。当然所得制限は設けるべきだということ、それから手続きを簡素化できるか。いろいろな観点から検討されるので、所得制限を設けないとも、設けるとも決めていない。実はどちらにも決めていない」。
(第24回会議・議事録要旨より抜粋)
■以上/宮城全労協ニュース第114号/2008年12月3日

|