<本号の内容>
リストラの嵐−経団連の居直りと政府の無策を糾弾する!
(資料1)非正規労働者の雇い止め等の状況について/厚労省11月28日
(資料2)東北地方の状況
なお、以下の記事はニュース次号に掲載します。
◎「労働者派遣法の抜本改正を求める12・4日比谷野音集会」の報告
◎松下電工(パナソニック)グループの脱法派遣と不当解雇を許さぬ闘い(宮城合同労組・ふくしま連帯労組)
●吹き荒れるリストラの嵐
厚生労働省は11月28日、非正規雇用労働者の雇用状況について緊急調査した結果を公表した(資料1)。それによれば来年3月までに3万人が失職する。厚労省はまた、来春卒業する新卒者の内定取り消しが331人(11月25日現在)にのぼると報告した。
これらの数値は確定事例のみの集計であり、「氷山の一角」である。非正規労働者の失職は10万人規模を超えるだろうとの指摘がある。舛添大臣は厚労省の緊急会議で「新たに百万人の失業者が出る恐れがある」と述べた。
突然の解雇によって仕事と住まいを同時に奪われる「派遣切り」が連日のように報じられている。企業にとって非正規労働者が「雇用の調整弁」である。経営者や御用学者たち、新自由主義に染まったコメンテイターたちの暴言を許してはならない。
トヨタを頂点とする自動車産業の雇用破壊攻撃は、電機など全産業へ広がっている。つい最近まで最高売上を更新し、最高益をためこんできた各社が、いまリストラを競い、「便乗首切り」に走っている。
「正社員」の削減も拡大している。日本IBM(千人規模)、沖電気工業(300人)、マンション開発の大京(450人)、アパレルのレナウン、証券や金融各社などに続き、ソニーは世界規模のリストラ計画を発表した。来年度末までに、世界で正社員8千人を含む1万6千人以上を削減する。
共同通信の調査によれば、今年4月以降11月末まで、上場企業の希望退職者数は建設や電機など41社で6064人にのぼったという(河北新報12月7日)。10日には外資系の日興コーディアル証券で、全従業員7千人のうち千人前後が早期退職に応募したと報じられた。
来春卒業予定の高校生への求人も6年ぶりに減少しており、教育現場では「就職氷河期」の再来が強く懸念されている。「企業の採用意欲の低下で学校に求人が来ず、就職できない卒業生が大量に生まれつつある」(毎日新聞10日)。宮城県は11月26日、緊急の就職現状説明会を開き、「新卒時に正社員になれないと、中途採用は難しい。保護者も生徒(高校生)も、危機感を持って就職活動してほしい」と訴えた。
移住労働者たちの悲惨な状況も報じられている。「自動車部品工場の派遣契約を打ち切られ、寮を追い出されてから、路上暮らしを続けている」「厚労省が浜松市、豊田市など日系人の多い全国9地域で調べたところ、9月の日系人の新規求職者数は前年同月比の2倍以上だった」(毎日新聞12月11日)。厚労省の今回の調査は、移住労働者、外国人労働者の失職状況を正確に把握しているのだろうか。
●経団連の居直りと政府の無策
雇用の悪化が地域社会を襲っている。とくに大企業関連の誘致企業で非正規雇用労働者の大規模な首切りが進められている。このまま本格的な冬が到来すれば、失業者の生活危機は一層深刻なものとなるだろう。地域の小規模零細企業には経営危機が広がっており、深刻な社会問題に発展しつつある(資料2)。
メディアも政府と経営者に警告を発し、対策を求めてきた。
「・・まさしく使い捨てだ。非正規を正社員よりも安い賃金で働かせ、巨額の収益を上げてきた製造大手が先行きに不安を抱くや、千人単位でばっさりと切ることが許されるのだろうか。増益を見込んだり、多額の内部留保があったりする企業も少なくないのに、である」
「派遣では、相次ぐ規制緩和で派遣先の対象が広がり、04年から製造業への解禁されたことが今日の事態を招いたといえる。派遣は雇用の調整弁に使われるとの懸念がまさに現実になった。政府が今国会に提出した労働者派遣法改正案は、今起きている『派遣切り』問題には無力のままだ。派遣先を専門業務に限るなどの抜本改正がぜひとも必要だ」
(毎日新聞社説11月27日・「派遣切り/労働者を使い捨てにするな」)
社会的な批判が強まるなか、麻生首相は12月1日、御手洗・日本経団連会長(キャノン会長)や岡村・日商会頭ら経済界首脳を官邸に招き、「雇用安定や賃上げの努力」を要請した。しかし経営側は雇用維持の具体策を示さず、政府に景気回復の対策を求めると強調した。
雇用を保障し生活を守るのは経営と政治の責任だ。「雇用調整」の対象として真っ先に切られる非正規雇用労働者を守らなければならない。「派遣切り」や「内定取り消し」に歯止めをかけねばならない。だが、まさに経団連の居直りと政府の無策が、企業のリストラを加速させ、労働者犠牲の拡大を許しているのだ。
政府の無策に対して、「世論」は12月8日、内閣支持率の急落をつげる数字で答えた。当然である。
●許せぬ大分キャノン問題
12月1日の麻生要請から数日をおかずして、キャノンの大量人員削減が報道された。大分キャノン(キャノンの生産子会社)の請負社員ら1千人超の削減は、政府の経済界への要請を帳消しにするものだった。首相は、「(直後に人員削減を)発表せざるをえなかったのは、結構つらかったと思うが」と言葉をにごした(5日、衆議院予算委員会での集中討論)。
12月8日、大分キャノン問題を問われた御手洗会長は、「わが社のことについては、かなり誤解があったようだが(この場は経団連の定例会見なので)」と即答をさけた。
キャノンとしての説明が直後、広報から明らかにされた。「大分県の子会社がデジタルカメラの生産を減らすことを決めたが、生産を委託した請負会社8社が人員を削減したもので、キャノン自体が削減したものではない」(NHKニュース12月8日)。「請負会社には生産台数ベースで発注しており、人員は把握、指示していない。労働者派遣法では請負先に雇用面で指示することは禁止されており、キャノンが従業員の削減を決めたのではない」(毎日新聞9日)。
これはまったくの開き直りであり、「企業の社会的責任」に背く責任逃れである。このような企業が日本経団連の会長を送り出していることに怒りを禁じ得ない。
御手洗・経団連会長はこの記者会見で、「新しい雇用を創出し、雇用の減少を食い止め、努力するのは経営者としても当然」と一般論を述べたうえで、政府に対策を求めた。相次ぐ企業の人員削減に関しては、「各社は減産に追い込まれ、苦渋の選択で雇用調整を行っている。やむを得ない事情がある」と正当化した。
「非正規労働者の大量削減」には、いわゆる「製造業の2009年問題」(*注)がからんでいる。「製造業の派遣シフト」は2006年から急増したが、3年を超えると企業に「直接雇用」の義務が生じる。2009年、製造業派遣労働者の多数がいっせいに3年の雇用期限を迎えることになる。「2009年問題」を抱える企業は、リストラによる「雇用調整」を絶好のチャンスとしてとらえているだろう。まさに二重の意味での「便乗首切り」なのだ。
●麻生政権を倒そう!
麻生首相は、派遣労働者たちが寮を追い出される問題について、「個別企業についての言及は差し控える」と何度も繰り返した。「契約内容はわからないが、あまり常識的ではないと考える」と答えるのが精一杯だった(衆院予算委員会)。
政府に何よりも必要なのは、企業の横暴を許さない、犠牲となっている労働者を救済するという明確な意思表示である。麻生首相からそのようなメッセージは伝わってこない。麻生政権は時間を空費し、労働者犠牲を拡大させてきた。
雇用対策も迷走状態にある。政府は9日になってようやく「追加雇用対策」(雇用維持、再就職支援、内定取り消し)を決定した。対応の遅さに加えて内容も不十分であり中途半端だ。雇用維持では「派遣労働者を正規社員として雇用した派遣先企業に1人当たり最大100万円(大企業は半額)の支給」が柱だ。このような企業助成制度では十分な効果は期待できない。
しかも麻生首相みずから、この「2兆円の雇用対策」は「内容がよく詰められていない」と述べ、ここでも「迷走」を印象づけた。無能・無策をみずから認めるに等しい。
首相は「景気対策」について、中小企業が「年末の資金繰りに窮することはない」と繰り返してきた。しかし、第二次補正予算の提出を先送りしたことで、失望と批判が一気に高まった。読売、朝日、毎日、共同通信、NHKは8日、いっせいに内閣支持率の急落を伝えた。第二次補正の先送りは「12・8ショック」の一因となった。経済対策・生活対策の目玉とした「2兆円の定額給付」も、効果への疑問に加えて、年度内に実施されるかどうか、まったく定かではない。
「11月の倒産原因に、『運転資金の欠乏』を挙げた企業は前年同月より4割も増えた。さまざまな調査で、金融機関の貸し出し態度が厳しくなったと答える中小企業の割合が急上昇している」「政府は第一次補正予算で、緊急保証枠と政府系金融で計9兆の中小企業金融対策を講じたが、その効果は限定的だ」(読売新聞社説12月10日/「倒産急増」)。
政府は12月下旬に行われる月例経済報告で、ようやく「景気悪化」と表現する方針を固めたという。いったい何をやっているのか。麻生政権2か月間の無策が厳しく糾弾されねばならない。
日本経団連は16日、経営労働政策委員会の報告を発表する。「労使一丸で難局を乗り越えよう」。これが副題だという。「雇用の安定」は「努力」にとどめ、労働組合の賃上げ要求は牽制する内容だと報道されている。一方、上場企業の配当増額・維持は75%にのぼり、「株主重視の姿勢」を貫き「積極的な配当政策」を続けている(日経新聞11月20日)。
大リストラ、雇用破壊・賃金破壊を許さない!
麻生政権を倒そう!
09春闘へ!
(注*)
2004年3月、製造業への派遣が解禁された(労働者派遣法の改正)。雇用期限は当初1年だったが、2007年3月以降、期限は3年まで延長されることになった。そこで企業は2006年以降、「請負から派遣へのシフト」を急速に進めた。
また2006年夏、キャノンをはじめとするトップメーカーの「偽装請負」が暴露され、社会問題となった。これが「請負から派遣へ」を加速させる要因にもなった。
こうして2006年に大規模な「派遣への切り替え」を行った企業は、2009年に「3年の雇用期限」を迎えることになる。
<資料1>
「非正規労働者の雇い止め等の状況について」(厚生労働省11月28日)
「全国の労働局及び公共職業安定所が、非正規労働者の雇い止め等の状況について、企業に対する聞き取り等により把握した状況をまとめた」もの。「全ての雇用調整事例を把握しているものではない」「現時点で内容が確定している事例である」との注釈付きで公表された。
厚労省は公表とあわせて、「期間満了での雇い止めは事業主に雇用維持の努力を求めること」、「中途解除では仕事の紹介など雇用安定の措置を取ること」などを事業者に指導するよう、都道府県労働局に通達を出した。
調査結果の要旨は以下のとおり。
「派遣又は請負契約の期間満了、中途解除による雇用調整及び有期契約の非正規労働者の期間満了、解雇による雇用調整」について、「10月から来年3月までに実施済み又は実施予定」は、、
47都道府県・477件・30067人
○派遣 292件・19775人(65.8%)
○契約(期間工等) 89件・5787人(19.2%)
○請負 36件・3191人(10.6%)
○その他 60件・1314人(4.4%)
業種別では、製造業が2万8245人と大部分。卸小売業(725人)、運輸業(155人)などが続く。
都道府県別では、愛知県が4104人で最多。岐阜(1986人)、栃木(1680人)長野(1616人)など、自動車等の製造工場立地県が多い。
契約期間中に雇い止めにされるケースは1万8573人(不明を含む)で6割超。
○派遣 期間満了−5991人/中途解除等−13784人
○契約 期間満了−4128人/解雇等−1659人
○請負 期間満了−886人/中途解除等−2305人
○その他 期間満了−489人/解雇等−825人
以下、毎日新聞に掲載された「途中で契約解除される『派遣切り』の実態は」より(12月8日付「くらしナビ」)。
厚生労働省は「契約途中での解除は実質的に半分ぐらいだろう」と分析している。「派遣切りホットライン」を11月に実施した全国ユニオンは、「期間満了が多いとの見方は甘かった。経営都合の中途解除が多すぎる」とコメントしている。
ホットラインの主な相談内容の件数は、@契約中途解除(解雇)219件、A契約更新拒絶129件、B住居問題72件、C仕事の紹介がない49件、D生活問題・生活保護(複数回答)だった。
<資料2>
この厚労省調査によれば、東北各県の状況は、、
○青森 324人/(派遣)3件262人(契約)1件21人(請負)1件41人
○岩手 356人/(派遣)2件139人(契約)4件210人(その他)1件7人
○秋田 261人/(派遣)3件30人(契約)5件131人(請負)1件11人(その他)4件89人
○山形 423人/(派遣)7件309人(契約)2件42人(請負)1件66人(その他)1件6人
○福島 790人/(派遣)19件674人(契約)4件89人(その他)2件27人
○宮城 1210人/(派遣)18件1073人(契約)2件65人(請負)1件58人(その他)2件14人
宮城労働局は同日、緊急雇用対策本部の設置、県内の全ハローワークに「特別相談窓口」を開設することなどを発表した。「今後更に、派遣労働者、期間工等の非正規労働者等を中心に大量離職の発生や新規学卒者の採用内定取消しも懸念される」。「求職者ニーズに応じたきめ細かな職業相談・職業紹介を実施するとともに、離職を余儀なくされた方々の早期再就職支援の実施、雇用保険受給の手続きに関する適切な対応などを図る」。
宮城労働局は「1210人」という厚労省の数字に関して、「これは全体の中の一部だろう。雇い止めをする企業は増えていくだろう」「このままの経済状況ならば、4千人から5千人の非正規労働者が職を失うことも予想される」、「安易な契約解除をしないよう、派遣元と派遣先の双方に要請した」と会見している(12月5日)。
この日、河北新報は、「東北地方の雇用悪化、派遣・請負減らし次々」と一面トップで報じた。倉元製作所(液晶用ガラス基板製造加工/栗原市)が11月末までで180人の派遣従業員を削減、仙台ニコン(名取市)も請負社員を100人強削減した。TDF(自動車部品製造/村田町)は派遣従業員45人全員を削減するという。
東北各県についても、厚労省調査をはるかに超える失職状況が伝えられている。
河北新報の6日の1面トップ記事は、来年3月までに「岩手県南の製造業では非正規労働者1千人超が削減」される見通しで、さらに悪化の可能性もあるというものだった。トヨタ系の関東自動車工業岩手工場(金ケ崎町)、いすゞ系鋳物部品製造の関連工場(北上市)をはじめ「北上川流域の自動車、半導体関連企業」の雇い止めが中心だ。「地域に失業者があふれる」事態が懸念されている。
岩手県が10日に開催した緊急会合によれば、「契約打ち切りなど雇い止めの影響を受けている非正規労働者が製造業を中心に県内で1728人に上っている」、そのうち県南地区では1303人に達する(河北新報11日)。北上市議会では、誘致企業約10社で12月末までに580人削減され、年明け以降も増大する見込みだという聞き取り調査が報告された。北上市には191社の誘致企業が立地している。
秋田県横手市では、自動車や電機など製造業の誘致企業7社が今月末までに443人の契約を打ち切る。市長は「この地域のほぼ大半が職を失う。景気悪化に伴うさらなる雇用調整の進展を懸念している」と述べた(同)。横手には49の誘致企業が立地しているという。
(訂正)ニュース前号の文章中、誤字を次のように訂正します。ご指摘に感謝します。
1分目8段(後を継いだ)「麻生」を「安倍」に。
1分目5段「麻生」(総務大臣)を「鳩山」に。
同8段「福田元首相」を「福田首相」に。
注1の最終行「17%から36%へ」を「36%から17%へ」。
■以上/宮城全労協ニュース第115号(2008年12月12日)

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