麻生首相、選挙日程を通告
東京都議選は自民党の歴史的敗北となった。「地方選挙は総選挙と直結しない」と断言してきた麻生首相は、この結果のうえでなお、「解散権の行使」に執着している。
麻生首相と自公両党執行部は都議選敗北翌日の13日、「7月21日にも解散、8月18日公示、30日投票」で合意した。14日には野党共同提案の内閣不信任案が衆議院で否決された。反麻生派議員たちは「苦笑い、照れ笑い」しながらも、こぞって否決に回った。
これによって大勢が決したことになるのだろうか。自民党は対立を深め、大混乱に陥っている。党内情勢は流動的であり、両院議員総会が開催されるかどうかも現時点で予断を許さない。
●東京都議選での自民党の歴史的敗北
東京都議選挙で自民党は歴史的敗北をきっした。投票率は10・5ポイントもアップし、民主党を押し上げた。「大逆風が与党を直撃した。(40年にわたって守り続けてきた)第一党の座は民主に明け渡し、与党は過半数に届かなかった。自民の衝撃は計り知れない」(東京新聞社説13日)。一連の地方自治体選挙に続く結果であり、「民主党への風」の強さをあらためて示した。
石原都政への打撃も計り知れない。知事はこれまでになく自公候補者の応援に出たが、この結果は「知事の神通力の陰り」を印象づけることとなった。民主党が反石原を貫くとは考えられないが、石原都政運営が大きな岐路に立たされたことは間違いない。
報道各社の分析によれば、自民党支持層のかなりの部分(4分の1ないし3割)と「無党派層」の半数が民主党に票を投じた。NHKニュースは、「支持なし層の投票先は、自民16%、民主46%、公明7%、共産15%であり、自民党は共産党と同じ程度まで落ち込んだ」と出口調査の結果を報じていた。
とくに1人区の結果は、民主党の6勝1敗だった。「首都のど真ん中、千代田区で自民は都連幹事長が落選、中央区でも民主新人に敗れた。伝統的に保守が強く、麻生太郎首相が告示日第一声の場に選んだ青梅市も勝てず島部以外で議席を失った」(同)。総選挙の東京25小選挙区で民主党は大きく躍進するだろう(注)。
●自民党の自壊が進んでいる
首相は都議選敗北によって麻生おろしが再燃した場合、早期解散を断行して正面突破を計る算段だった。だが党側は日程を遅らせるよう要求、首相は妥協を余儀なくされた。そこで首相は、「7月21日にも解散、8月30日投票」を事前通告することによって議員を選挙モードに突入させ、麻生おろしを封じることをねらった。そのように報じられている。
しかし、独断への反発が強まり、両院議員総会の開催要求に火を注ぐ結果となった。加藤元幹事長は小泉系列の中川や武部とともに共同の会見に出席した。ついには与謝野・石破両大臣が署名にサインした。
開催を要求する議員たちの思惑や政策はばらばらであり、「麻生おろし」でまとまるかは不透明とされている。しかし麻生への求心力は地に落ちており、一触即発の際どい情勢であることは間違いない。
麻生総理・総裁の下で、通告された日程どおりに解散・総選挙が実施されるのか、現時点で見通しは立っていない。まずは両院議員総会をめぐって大波乱の展開となることは必至の情勢だ。
自民党の多くの議員たちが望んでいるのは首相の自発的な辞任である。中川や武部らは「名誉ある決断」などの表現で麻生退陣を要求している。舛添厚労大臣らの名前があがっている。「総理・総裁分離」もとりざたされている。
党4役の一人である古賀選対委員長が辞任表明した。古賀は「(総選挙後に)大連立、政界再編という最後の命懸けの仕事をやらせていただきたい」と発言しており、様々な憶測を呼んでいる。すでに離党した議員をはじめいくつかのグループが自民党内紛の受け皿になるとの予想もある。
いずれにしても自民党の分解が急速に進んでいる。
●解散権に固執する麻生首相
首相は13日、記者団に心情を吐露していた。「去年9月に党員による選挙で選ばれた者として、批判があるのは十分承知しているが、だからといって直ちに辞職して投げ出すという無責任な態度は取るべきでない。・・表紙を替える、包装紙を替えるといろいろな表現が使われるが、私は逃げずに戦わなければならない。ここが一番大事なところだと思っている」。
かりに首相がその思いをとげたとしても、事実上、分裂選挙となる可能性が高い。また「麻生おろし」が成功したとしても、一連の騒動には自民党支持層をふくめて世論の批判が強く、自民党の大幅議席減という選挙情勢を打開することは困難だと見られている。
自民党に支持回復の決定打はない。東国原宮崎県知事を担ぐ「奇策」は自民党支持者からも支持されなかった。「麻生おろし」に対しても「世論」は厳しい。こうして鳩山民主党代表の政治資金問題など、民主党の「敵失」に頼る以外にない。しかし、これまでの各世論調査は一様に、鳩山説明にはまったく納得しないが、党首辞任までは求めないという共通した傾向を示してきた。それは政権交替を求める声の強さを示唆している。
麻生首相が強調する「経済」や「国民生活」はどうか。政府は「景気底打ち」宣言をしたが、雇用は悪化の一途だ。内閣府の外廓団体による調査は最近、「2010年4〜6月期に5・66%」という過去最悪値を予測した。自殺者は急増しており、警察庁は「自殺者は今年の1〜4月に1万1千人を突破」したと発表した。雇用・賃金破壊によってローンが支払えず、持ち家を手放す世帯が急増し、社会問題化している。
株価はここにきて下落傾向にある。1万円突破を契機に上昇カーブを描くという期待はしぼんでいる。米国経済の先行き不透明、ドル不安と円高圧力、日本輸出企業への悪影響、株価下落という日本経済の構造的な問題が足元をすくっている。
また、次のようなことも言えるかもしれない。「経済政策を民主党にまかせられない」と首相は争点化するが、政府与党が主張するように景気が底を打ったのなら、民主党の政権担当能力を問う保守層のハードルが下がり、皮肉にも自民党からの離反をうながす圧力が強まるのではないか。
「経済政策の麻生」が選挙情勢を好転させる見通しはない。
●自公政権の打倒、自民党支配体制に終止符を
けっきょく自民党は、「選挙の顔」として選出した麻生カードを有効に切るチャンスを失った。小沢政治資金問題の絶好のチャンスを活かすこともできなかった。鳩山新代表の追及に望みをつなぐが、逆風はもはや押し止めがたい情勢だ。
自民党にとって、解散決断を先送りしてきた麻生首相自身の責任は大きい。だが、元をただせば安倍政権の転落が始まりであり、それも小泉元首相の中途半端な「禅譲」に起因するところが大きい。
2005年選挙と郵政法案の成立以降、小泉政権は急速に勢いを失っていった。小泉は、郵政民営化に反対姿勢だった麻生を重用しつづけた。小泉は、政権後半に経済財政担当大臣を竹中から与謝野に交替させた。それが経済財政試問会議の「変質」につながったと竹中は批判した。与謝野と中川(当時政調会長)による自民党を二分する対立構図のきっかけともなった。安倍が郵政造反組を復党させたとき、「小泉チルドレン」の不満を押さえこんだのも小泉だった。
小泉−竹中の新自由主義路線が行き詰まりを深めていったとき、中川元幹事長はいわゆる「上げ潮路線」を採用して打開をはかった。中川は、サッチャー政策を引き継いだニュー労働党のブレア政権をモデルに、「改革の負の側面」を是正しながら小泉路線を継承しようとした。「上げ潮」路線は党内の対立を激化させた。安倍政権はこの論争を乗りきることなく、参議院選挙で敗北をきっした。
問われたのは、小泉構造改革以降、自民党はどのような保守党をめざすのか、ということだった。だが安倍から福田、麻生へ、自民党はなしくずし的に路線を修正して小泉自民党から変質していった。まさにツケが回ってきたのだ。
民主党にとって政権獲得の絶好のチャンスが訪れている。もちろん、政権についたとして、その日から民主党は厳しい政権運営に直面する。小沢問題と鳩山問題は解決していないし、民主党もまた内紛がらみである。何よりも、誰のためのどのような政策なのか。民主党は「左右」から答えを要求される。
都議選の結果は、共産党、社民党にとって厳しいものだった。東北地方では社民党、共産党の比例区議席を守ることは重要な課題である。自民、民主両党にある「比例区議員数の削減」の動きにも反対する必要がある。また、選挙区においては、自公を過半数割れに追い込むために闘おう。
衆議院選挙の結果、大きな政治変動が起きる可能性が高い。1年後の参議院選挙にむけて、再編の波は高まっていくだろう。労働者民衆の新しい政治戦線が問われる。
(注)衆議院の東京小選挙区。
前々回の総選挙でイーブンだった東京は、前回は23対1と小泉自民党が圧勝した。以下は今回の都議選の得票結果をそのままあてはめた予測。
<自民対民主>の場合、民主党は25選挙区を独占。
しかし、現実には<自公対民主>となるため、民主15、自公10。
都議選の全選挙区の合計得票は、民主245万(推薦含む)。
自民は146万だが、公明票を加えると自公で220万票。
(毎日新聞7月14日の試算)
(*)この試算には共産党や社民党などの票が入っていない。自公協力関係の度合い、民主党以外の野党支持者の動向などが加味される必要がある。
■以上/宮城全労協ニュース第130号/2009年7月16日

|