宮城全労協ニュース/第133号(電子版)/2009年8月28日

●後退した地域最賃の答申

●資料/宮城全労協の意見書


8月24日、宮城地方最低賃金審議会の専門部会から今年度の改正決定に関する答申がなされた。

答申額は662円(時間/昨年より9円引き上げ)。

これは「生活保護水準との乖離額」20円を大きく下回るものである。逆転解消を実現する年数についても、昨年審議から後退し、引き延ばされた(注1)。

専門部会において労働側委員は10円、使用者側7円、公益側9円を提示し、多数決によって決定された、という(河北新報8月25日等)。解消年数に関しては、「逆転現象を3年で解消するよう」答申されたという(読売新聞8月28日)。

専門部会審議は非公開であり、地域の労働者は、このような報道によって審議内容の一端に触れることになる。審議の公開が求められる。

宮城労働局では9月8日まで、答申に対する異議を求めている。最低賃金の大幅引き上げ、「生活保護水準との逆転」の即刻解消を要求しよう。


(注1)
宮城では昨年(08年度)、14円引き上げによって653円となり、生活保護水準との差額(当時)6円を09年度に解消することが目標とされた。

宮城の「差額6円」は、今年度の最賃審議にあたって使用した新しいデータによって、「20円」まで拡大している。

今年7月29日、中央最賃審議会は「目安」を答申し、昨年の議論から後退した内容を示した。

「新しいデータに基づいて算出された乖離額」を、昨年目標とした年数によって解消することが前提だとしながら、「今年度においては、緊急避難的な措置として・・見直すこともやむを得ない」(注2)。

こうして中央審議会は、宮城の場合、新しいデータに基づく「差額20円」に対して、逆転解消までの年数は「今年度を含んで2年」、今年度の引き上げ目安額を「10円」と答申した。

今回の宮城の答申は、これと比較しても、額と解消年数の双方において後退している。


(注2)
中央審議会が「緊急避難的措置」としたのは次の理由による。

第一に、「昨年度の地方最低賃金審議会の答申後、アメリカの金融危機を発端とした世界同時不況により、我が国における経済・企業・雇用動向等は、著しく悪化していると認められる」。

第二に、「最低賃金と生活保護の比較について、最新のデータに基づいてこれを行った結果、昨年度の地方最低賃金審議会において最低賃金が生活保護水準を下回っているとされた都道府県のすべてにおいて、乖離額が昨年度と比較して大きく拡大するといった状況が見られる」。



<資料>
「宮城地方最低賃金審議会への意見書」

2009年7月15日(宮城全労協)


 昨年度の宮城の最低賃金は「時給14円アップの653円」、12年ぶりの2%台引き上げ(2.19%)となりました。これは07年度からの最賃引き上げの流れに沿ったものですが、大幅引き上げとはいえず、さらに宮城は「生活保護水準との逆転」を解消するにいたっていません。

 昨年秋来の「未曾有の経済危機」が労働者生活を直撃しており、政府も企業も労働者の雇用と賃金に対する責任が問われています。

 09年度の審議にあたり、宮城地方最低賃金審議会に対して意見を述べます。

 1.最低賃金を全国一律で時給1千円以上とすること。
 2.「生活保護水準との逆転」を解消すること。
 3.審議を公開で行うこと。


 その理由として、とくに以下の点について強調します。


(1)経済苦況のときこそ労働者生活を支える「最低賃金」が必要です。

 国際金融パニックに端を発した不況のなかで、労働者がこうむった打撃はきわめて深刻なものです。労働者の生活状況はあらゆる指標において悪化しており、とくに「働く貧困層」と総称される労働者たちにとっては、文字通りの死活問題です。

 09春闘に際して麻生首相は、経済団体トップに「賃上げ」を要請しました。しかし、大企業による一斉回答は「ベアゼロ」「一部定昇凍結」の実質賃下げでした。このような大企業労使による賃金交渉の結論が、地場の中小・零細企業で働く労働者たち、とくに「非正規雇用労働者」たちの賃金破壊をもたらしています。

 経済団体や大企業経営者は、雇用調整と賃金削減は必然であり、「セーフティネット」は国の責任であると主張しています。これは労働者を無視した責任の押しつけあいです。「いざなぎ景気」を超えたという2002年からの景気回復期、労働者はその「恩恵」から外され、そのため「実感なき景気拡大」との呼称がついたほどです。そして、製造業を中心に企業利益を支えた大量の非正規雇用労働者は「派遣切り」という無慈悲な仕打ちを受けました。

 改正最賃法には「健康で文化的な最低限の生活」と明記されています。労働者が生活苦に直面させられているいまこそ、最賃審議会の役割があり、その機能が発揮されねばなりません。

 立法趣旨に則った審議により、最賃の大幅引き上げを要請します。


(2)最賃引き上げの流れを堅持し、逆戻りをすべきではありません。

 09年度の最賃審議について、ここ数年と比して消極的な報道が目立ちます。企業業績が落ち込み、賃金も下がっているから、最賃引き上げは困難だ、という論調が目立ちます。日経新聞(6月30日)は「現状維持」か「現状維持または引き上げても2〜3円」とする「専門家の見方」を掲載しています。

 日本の最賃は90年代末以降、とくに小泉政権下において極度に抑制され、その影響も加わって国際的に際立って低い水準のままでした。最低賃金が07年度、08年度に引き上げ基調に転じたのは、「格差」「貧困」に社会の光が当てられ、政治も後追いながらその事実を認めて対策に向かわざるをえなくなったからです。

 「子供を生み育てる」という人間としての営みが経済困難のゆえに成り立たず、「少子化」に拍車をかけてきました。年金、医療、教育など社会の基礎からの崩壊が様々な方向から指摘されてきました。それらの社会不安が格差・貧困と密接に関連しており、このまま放置すれば社会は限りなく分裂・衰退に向かうとの問題意識がようやく政治テーマとなり、あらためて「企業の社会的責任」も問われることになりました。

 警察庁は5月、「自殺者は今年の1〜4月に1万1千人を突破」と発表しました。「昨年秋からの急激な経済の悪化が影響している。このままでは年間の自殺者が過去最悪になる恐れもある」と報じられています。自殺者は11年連続で3万人を超えています。統計をとりはじめた1978年以降、最悪だったのは2003年の3万4千人です。これは小泉政権下で最低賃金が極端に抑制された時期と重なります。

 年末年始の「年越し派遣村」は国民的な注目を集めました。企業から一方的に切られ、「職と食と住」を同時に奪われ、しかも国や自治体のセーフティネットによって救い出されることもなかった派遣労働者たちが、「着の身着のまま」で「派遣村」にたどり着きました。まさに「社会の底がぬけた」現状を浮かび上がらせるものでした。

 こうして2年間の最賃引き上げも、未だまったく不十分であり、困窮する労働者を救うことができていないのです。最賃審議会がこの引き上げ基調を抑制したり凍結したりすることは、再び小泉時代に揺り戻すものであり、許されないことです。


(3)「生活保護費との逆転」は最賃引き上げによって即刻解消すべきです。

 日本商工会議所の岡村会頭は6月18日の記者会見で、「生活保護との整合性をとることは目標だが、この特殊な経済危機の中でどう取り扱うか、しっかり検討してもらいたい」と述べたと報じられています。

 まったく逆です。経済危機のツケが労働者に強要されているのであり、そのような状況であるからこそ、悲惨な生活を支えることが必要なのです。人間らしい生活を送ることができる賃金を支払うこと、それは企業の社会的な責任です。

 「生活保護費との逆転解消」は最賃のあり方を問う試金石です。すみやかな解消を実現すべく審議を要請します。


(4)専門部会審議の公開を。

 最賃審議会は従来どおり専門部会が設置され、その審議は非公開となります。また専門部会審議で全会一致となった場合は、本審議会を行わず、専門部会決定が審議会決定となります。

 最賃審議会が地域社会とより密接な関係を築くことがますます重要になっていると考えます。そのような観点から公開審議とすることを要請します。


■以上/宮城全労協ニュース第133号/2009年8月28日