宮城全労協ニュース/第134号(電子版)/2009年9月12日

歴史的な政権交代が実現−
労働者民衆の要求を新政権へ!



自民党の惨敗、民主党の圧勝だった。自民党の長期政治支配に終止符が打たれた。海外メディアは「あの日本でも」政変が起きたと強調した。歴史的な政権交代だ。その意義を積極的に活かし、労働者民衆の闘いを発展させていこう。

民主党と自民党は05年総選挙をほぼ逆転させたものとなった。ただし前回の自民党と同様、民主党の300超の獲得議席数は現行選挙制度の効果による(注1)。

麻生首相は「政権ではなく政策を」と繰り返したが、かえって「自公政権の存続か否か」を争点に押し上げた。投票率が上がり、とくに期日前投票は大幅に増大した。報道各社によれば、自民党支持層の3割が離反し、支持政党なし層の過半が民主に投票した。自民党と自公政権への幻滅と怒りが民主党への投票となって爆発した。

公明党は選挙区で全敗した。小渕内閣、本格的には森内閣以降、大きな影響力をもってきた自公選挙ブロックの敗北であり、選挙戦略の再考が求められることとなった。

結党以来の危機にある自民党は総裁選挙をめぐって揺れている。細川政権の誕生は派閥分裂がきっかけであるし、当時、自民党は政権を失ってもなお第一党だった。今回は総選挙の惨敗による政権転落であり、しかも民主党は、参議院では単独過半数に届かないとはいえ、議会勢力の数においては小泉以降の自公政権よりも強大である。

最初の選挙が早くも10月25日に実施される。二つの参議院補欠選挙と宮城県知事選挙だ。一年以内には参議院選挙となる。新政権への信任投票であり、民主党の衆参過半数を認めるかも大きな争点となるだろう。


●民主党への「期待と不安」

民主党は「生活が第一の政治」をどこまで実現できるか。民衆の民主的諸権利のために闘えという期待に応えられるか。ブッシュ政権の敗北、米国発の金融パニックと世界的な経済危機を経て、自民党にかわる新しい価値観と方向性を日本政治にもたらすことができるか。期待と不安のなかで新政権が出発する。

民主党に投げかけられる不信と敵意も大きい。米国や保守メディア、霞が関官僚などから恫喝や牽制が相次いでいる。保守派はこの政変が自民党再生にきっかけを与えることを望み、民主党が失敗すれば「オセロゲーム」が再現されるとの指摘も多い。

経団連との関係はどうなるか。小泉元首相は「既得権益集団との関係を断つ」と言いながら、最大の業界団体である経団連代表を経済財政諮問会議に参加させるというゴマカシを平気で行った。民主党の岡田は「国家戦略会議」には経営者団体から参加させないと明言している。

労働組合・連合はどうか。次期体制(会長は電機連合出身、事務局長は電力総連出身と報じられている)には、新政権シフトの意味合いがあるのだろう。この体制で派遣法抜本改正は可能か。また民主党の「温室効果ガス」中期削減目標について、自動車総連や電力総連などから反対意見が出されている。

民主党と連立政権は最初の試練をどのように乗り切るか、まずは政権移行を首尾よく進めることができるか。細川政権の二の舞のような内紛となれば期待感は吹き飛ぶ。社民・国民新党の連立合意に続き、組閣をはじめとする人事体制、鳩山新首相の外交デビュー、国会論戦と予算編成が続く。小沢と鳩山の政治資金問題も決着していない。

いずれにしてもこれからだ。前例のない大きな政治変動のなかで、労働者民衆の要求を民主党と新政権に突きつけていこう。


●「結党以来の危機」にある自民党

自民党の直接の敗因は麻生首相にあるが、小泉政権の行き詰まりとその後の政権の失敗がもたらした結末だった。

「東西冷戦の終わりとともに自民党は歴史的役割を閉じたのではないか」という議論があった。そこに小泉首相が登場し、郵政解散・総選挙という奇策によって自民党を大勝に導いた。新しい生命力を獲得して「2005年体制」が出発したはずだった。

だが転落は急だった。格差拡大や地方の切り捨てをはじめ新自由主義政策への批判が噴出した。郵政対立の影響は今回の選挙にも尾を引いた。05年総選挙以降の小泉の姿勢も一貫しなかったし、息子を世襲指名しての引退は大きな失望を与えた。

外交でも日本は閉塞感を深めていった。自公政権はイラク戦争への対応を総括することさえなかった。小泉首相のピョンヤン訪問と日朝共同声明をその後の政治的可能性に生かすこともなかった。

安倍政権以降、信頼を失い立往生する自民党に対して、「国民の生活が一番」という小沢民主党が切り込み、参院選の勝利によって政権交代が現実性を帯びるにいたった。

ちなみに竹中元大臣は自民党の参議院選挙総括に反対してきた。都市部で自民党票は増加した、改革派の議員たちは生き残った、比例区票も底堅かった。得票を減らしたのは地方、とくに郵政造反の大物議員を排出した県である、と(「ポリシー・スクール」)。

自民党の敗因は「改革の影」ではなく、改革離れ、改革不徹底によると竹中は主張した。だが「改革派議員」は今回、小泉路線を主張して闘ったのだろうか。その竹中元大臣が総選挙投票日の直前、人材派遣会社最大手「パソナ」の会長に就任したことを、改革派議員たちはどのように評価しただろうか。


際立った自民党の「保守回帰」

選挙中、麻生首相と舛添大臣の「問題発言」があった。惨敗の影に隠れてしまった感があるが、改めて取り上げたい。

麻生首相の「金がないなら結婚しないほうがいい」との発言が報じられた。為政者として真意は何か、思想的な背景は何かと問いたい。富裕者や高学歴者たちによる結婚・出産が国家として望ましい、そのための政策は国家としてあるべきだ、ということか。そのように問えば本人は否定するだろうが、「失言」ですまされる類の発言ではない。

舛添厚労大臣は「年越し派遣村」に関して、「大事な税金を働く能力があるのに怠けている連中に払う気はない」と発言し、批判をあびた(注2)。彼は、発言の主旨は違うと弁明したが、担当大臣として「派遣村」から何を学び、反省したのか。浮かび上がるのは、労働者とその運動への敵意であり、いらだちである。

現首相と次の有力候補にあげられた二人の発言は偶然ではないだろう。自民党は選挙戦で「労働組合が日本を侵略する日/民主党にだまされるな」という政党パンフレットを出し、かつての反共攻撃を想起させるような民主党攻撃を展開した。「イデオロギー対立の時代ではない」と主張してきた自民党が、土壇場になって保守イデオロギーを全面化させたわけだが、このキャンペーンは成功しなかった。

自民党はどのような理念、思想で再生をはかろうとするのだろうか。


宮城の保守県政を倒そう!

宮城の6選挙区で民主は5、自民は1となり、05年総選挙と逆転した。河北新報の出口調査によれば「無党派」の7割超、自民支持層の3〜4割が民主に投じた。

仙台市では1区、2区ともに民主党候補がこれまでにない大差で勝利した。象徴的だったのは、自民の牙城だった3区と4区でも民主が勝利したことだ。4区では、自民党候補は松島町と大衡村を除く全市町村で敗北した。民主候補は仙台圏に隣接する人口急増地域の富谷町で圧勝し、同時に米どころ大崎地方と加美町でも票差をつけた。「農民の反乱」が参議院選挙よりも広がったことが、民主党勝利に貢献した。

共産党は今回、1区と4区に限定して立候補し、各々5.7%と5.2%を獲得した。共産党が立候補しなかった選挙区の動向が注目されたが、河北新報調査によれば、共産党支持層は立候補しなかった4つの選挙区で、6〜8割が民主や社民(6区)候補を支持した。

社民党は民主党との協定により6区で立候補したが、民主党効果によって勝利するまでには至らなかった。

社民党と共産党は東北比例の各1議席を守った。終盤になって両党の議席防衛が厳しいと予測する報道があった。事実、比例14議席の最後の2議席を社民、共産、民主、自民の順で4党が争う結果となった。共産と民主、社民と自民の差は1万数千から2万弱だった。民主圧勝のなかでの「善戦」という評価もできるが、この差は安全圏とはいいがたく、厳しい選挙だったことが示されている。

特筆すべきは、宮城県知事が自公陣営を全面的に支援し、積極的な選挙応援を行ったことだ。7月の仙台市長選挙は「仙台の事情」によって、全国政治と切断されて実施された。県知事選挙はそういうわけにはいかないだろう。知事は当然、自公の勝利のために総選挙を闘った責任を明確にしなければならない。

大企業優先の4年間の保守県政を転換させるために闘おう。



(注1)日本共産党の「しんぶん赤旗」の試算によれば、衆院総定数480を各党の比例票で分配すれば次のようになる(比例票獲得比率、配分議席、現行制度との増減)。

○民主党 42.4%、204議席(−104)
○自民党 26.7%、128議席(+9)
○公明党 11.5%、 55議席(+34)
○共産党 7.0%、34議席(+25)
○社民党 4.3%、21議席(+14)
○みんなの党 4.3%、21議席(+16)
○国民新党 1.7%、8議席(+5)

この試算によれば、民主党は社民党と国民新党との連立だけでは過半数に達しない。共産党とみんなの党が鍵を握ることになる。みんなの党は現在の自民党を批判して分裂し、民主党との連立を模索していた。だから、共産党が同じ方針をとって連立政権に加わらなかったとしても、みんなの党を加えれば、自公から民主中心の政権交代は可能だったことになる。もちろん圧倒的な議席差ではないが。逆に、自民・公明ブロックにみんなの党を足しても過半数には達しない。

実際にはもっと広範多岐な検証が必要となる(たとえば、ここでは新党日本と新党大地の比例区票が対象外になっている。公明の比例票は自民支持層によって上乗せされているだろう、等々)。それでも、小選挙区制度でなければ政権交代は起きないという議論は極端であり、正しくないことが示されている。

なお、共産党が指摘しているように、民主党の主張である「比例区議席の削減」について三党の連立合意は言及していない。


(注2)「元派遣村名誉村長 弁護士・宇都宮健児/元派遣村実行委員会有志一同」による舛添厚労大臣への抗議文(09年8月24日)参照。


■以上/宮城全労協ニュース第134号/2009年9月12日