10月7日、長妻厚労大臣が「今後の労働者派遣制度の在り方について」労働政策審議会に調査審議を諮問し、それ以降、労働需給制度部会で審議が続いている。前政権時代の答申を尊重する議論を求めた公益委員の発言もあり、部会審議のなりゆきが注目されてきた(宮城全労協ニュース137号、139号参照)。
12月18日(第140回部会)には「部会報告に向けての公益委員案骨子」が示された。その後退姿勢は際立っており、前政権法案を前提とし、そこに「追加・変更」を行なうというスタンスである。22日の141回部会には、骨子に基づいた文章が「部会報告案」として提出されている。
全労協は22日、公益委員案骨子を批判し、「名ばかり改正」を許さず「真に派遣労働者の保護に値する抜本的改正を求めて闘いを強めていく」と表明した。
全労協声明を以下に転載します。また「公益委員案骨子」と「部会報告案」は各々、厚労省のホームページに掲載されているので参照してください。
<全労協声明>
労働者派遣法/名ばかり「改正」では許されない!
〜労働政策審議会・労働需給制度部会公益委員案骨子を批判する〜
12月18日、労働法制審議会職業安定分科会労働力需給制度部会で、「部会報告に向けての公益委員案骨子」(以下骨子という)が示された。この骨子は、昨年後半から派遣切りが吹き荒れた状況を踏まえ、労働者派遣法の根本的見直しが求められていたにもかかわらず、それに応えるものになっていないばかりか、三党連立政権の政策合意にある「雇用対策の強化−労働者派遣法抜本改正−」の内容からみても大きく後退したものである。
全労協は今日まで、登録型派遣、製造業派遣の全面禁止を求めて闘ってきた。とりわけ、登録型派遣の禁止について26専門業務を例外とすることについては、これが実質的に抜け穴となっていることから、三党合意内容にも強い懸念を持ってきた。しかし、労働分野の規制緩和の流れを転換させ、労働者保護の規制強化を促進させ、ワーキングプアの解消を実現させるため、「労働者派遣法の抜本改正」を謳う連立政権の合意内容を支持して共同行動を推し進めてきた。従って、公益委員案として示された名ばかりの「改正」案はとうてい容認できるものではない。
以下、全労協としての批判点を明らかにする。
1.170回臨時国会に提出した、自公政権時代の法案を前提にしている点について
昨年の11月に提出された自公政権による政府案は、国会で一度も審議されることなく廃案となった。この法案は多くの運動団体から指弾されたように、改正案とは名ばかりのものであり、常用型派遣については「事前面接を解禁する」など、財界の要望にそった規制緩和の中身を含んだものとして厳しく批判されてきたものである。今回、公益委員案として示された骨子案はこれを前提にして追加提言するという、極めては大きな過ちを行っている。労働者・民衆の激しい怒りによって自公政権の政策は否定され、新たな労働者保護のための政策が求められているときである。まさに新たに派遣労働のあり方を根本的転換(廃止を含めた)させるための案が作られるべきである。
当時の労政審公益委員がそのまま今日の委員を務めているが、前回答申した立場にこだわり、「前提」を主張するのであれば、委員を辞任すべきであろう。
2.製造業派遣の原則禁止について
常用雇用の製造業労働者派遣を例外とするとしているが、「常用雇用」とはどのようなものか明確な規定が示されていない。「有期雇用でも常用」とされてしまう危険がある。「期間の定めのない雇用」として常用の規定を明確にすべきである。また雇用主としての社会的責任と能力を派遣元事業主に明確に義務づけることが必要であり、名ばかり雇用主であってはならない。
3.均衡ではなく均等待遇の明文化が必要。
「均衡を考慮する」では全く不十分である。「労働者の就業形態にかかわらず、就業の実態に応じ、差別を禁止し、均等な待遇の確保が図られるべきものとする」とすべきである。
4.派遣先企業の責任を明確にし、違法派遣における直接雇用の促進について
派遣先が違法行為を行った場合、派遣労働者が派遣先に対して、「あなたが私の雇用主です」と「通告できる」こととする見なし雇用規定を創出するべきである。骨子案では、「派遣先が派遣労働者に対して労働契約を申し込んだものと見なす旨の規定」となっており、充分とはいえない。しかも、これに従わない派遣先に対し、「行政の勧告制度をもうけること」としており、現状、法違反に対する勧告が悪質な経営者により、無視されていることからみれば、全く不十分であり、実効性は極めて疑わしいものとなっている。
松下プラズマ偽装請負吉岡裁判で、最高裁は大阪高裁の判決のうち、松下の直接雇用義務を認めなかった。偽装請負を職安法44条違反として違法としながら、実質的雇用関係が存在した松下プラズマとの間の労働契約を「黙示の労働契約」として認めた大阪高裁判決に対し、最高裁は派遣労働の概念を一方的に持ちだして、「違法な派遣であるが、直接雇用関係を認める特段の事情がない」とした。偽装請負の違法性を、派遣労働に置き換え、そこでの違法派遣の雇用責任は、派遣先には及ばないとする今回の最高裁判決をみる時、現労働者派遣制度の持つ反労働者性が明らかである。見なし雇用規定の明確な創出こそ強く求められている。
三党合意には、派遣先責任の強化として、不利益取り扱いの禁止、未払い賃金や社会保険未払の連帯責任、安全衛生教育の義務づけ、個人情報保護、団体交渉応諾義務などが示されていた。
骨子案は、この項目全体を切り捨てたものとなっており、到底許されるものではない。
5.施行期日につて
骨子案では登録型派遣の原則禁止、製造業派遣の原則禁止について、三年の猶予期間を設けようとしている。
派遣労働者の窮状、ワーキングプアといわれる労働者を一人でも少なくするための政策は一刻も猶予ならない状況が続いている。この年末年始にも30万を超える労働者の救済が必要となっている。
労働者派遣法を真に「派遣労働者の保護」に値する法律にするためにはその内容が抜本的に転換されることはもとより、一刻も早く施行される必要がある。法改定後即時に全ての項目が発効されなければならない。
全労協は労働者派遣法の「名ばかり改正」を許さず、真に派遣労働者の保護に値する抜本的改正を求めて闘いを強めていく決意である。
2009年12月22日
全国労働組合連絡協議会
■宮城全労協ニュース第143号(2009年12月24日)

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