宮城全労協ニュース/第161号(電子版)/2010年7月25日

最低賃金の大幅引上げを!
〜宮城地方審議会へ意見書

 2010年度の最低賃金引き上げ額の「目安」がまもなく提示される。

 
 厚生労働大臣は7月2日、みずから中央審議会に出席して、引き上げ額の調査審議を諮問した。鳩山前政権による政労使の「雇用戦略対話」(6月3日)で合意(*注)がなされたことを受けて、厚生労働大臣は「合意を踏まえた議論」を求める異例の発言を行い、「これまでと違う」と強調した。

 その後、中央と地方で審議が進んできた。経営側は「地域中小企業の厳しい経営環境」などを理由に、抵抗の姿勢を示してきた。

 中央審議会の答申に続き、地方審議会の答申が8月上旬に予定されている。

 宮城全労協は7月13日、宮地地方最低賃金審議会に対して「意見書」(資料参照)を提出、審議会の傍聴を続けてきた。答申に注目し、大幅引上げの声を強めていこう。


(*)「雇用戦略対話における最低賃金の引上げに関する合意」(2010年6月3日/雇用戦略対話・第4回会合)


 なお、厚労省は7月14日、最低賃金が生活保護水準を下回る「逆転現象」の現状を報告した。

 昨年秋の09年度改定時点では、宮城県など10の都道府県で「逆転」していた。生活保護水準の新しいデータに照らせば、現在、秋田と千葉が加わって12都道府県に増えている。


 12都道府県と「逆転解消に必要な引き上げ額(時給換算)」は次のとおり。


○北海道 39円
○青 森  6円
○宮 城 14円
○秋 田  5円
○埼 玉 14円
○千 葉  5円
○東 京 40円
○神奈川 47円
○京 都 20円
○大 阪 17円
○兵 庫 13円
○広 島 13円




<資料>

宮城地方最低賃金審議会への意見書

(宮城全労協/2010年7月13日)


 2010年度の審議にあたり、宮城地方最低賃金審査会に対して私たちは次のように求めます。

 1.最低賃金を全国一律で時給1,000円以上とすること。
 2.「生活保護水準との逆転」を直ちに解消すること。
 3.全審議を公開すること。審議のあり方を中小零細企業労働者、非正規雇用労働者の声を十分に反映させるものとすること。


 以下、意見を述べます。


(1)最低賃金引き上げの流れに即した審議を求めます。


 全国平均では07、08年と2年連続して二桁の引き上げとなりました。最低賃金を実質据え置くという「小泉政治」への批判が高まり、その間「最長の好景気」を享受した経済界も見直しを受け入れざるを得なくなったからです。

 ところが昨年度の審議は、不況を理由にして再び抑制基調となりました。

 昨年度の宮城県の最低賃金は「時給9円アップの662円」でした。一昨年の「14円アップ」を下回り、大幅増額への期待に応えるものとはなりませんでした。

 しかも「生活保護水準との乖離」に関しては、昨年時点で20円下回っていた逆転現象を、中央審議会が求めた2年より後退して3年で解消するように繰り延べる内容となりました。

 厚生労働省は昨年10月「貧困率」を公表して大きな反響を呼びました。労働者の賃金破壊はいっそう進み、この1年間、事態はさらに悪化しています。このような中、最低賃金審議会がどのような審議を行うのか、役割は重要です。

 政権交代した政府は、貧困対策の一環として最低賃金の引き上げに積極的に取り組むことを明らかにしてきました。

 中央審議会(7月2日)で厚生労働大臣は、「雇用戦略対話(6月3日)での最低賃金引き上げに関する合意」を踏まえた議論を諮問する点がこれまでとは違うと強調し、とくに地域最賃引き上げと「できる限り早期の生活保護との乖離是正」のために十分な議論を求めました。

 「2020年までのできる限り早期に全国最低800円を確保し、景気状況に配慮しつつ、全国平均1千円をめざす」「20年度までの平均で名目3%、実質2%を上回る成長が前提」という内容は不十分とはいえ、政府が最低賃金の役割を強調し、具体的な数値を示して合意に達したことは重要であり、その趣旨を活かした審議を求めます。


(2)「働く貧困層」を生み出さない賃金保障が必要です。


 全国最高額の東京都の場合(昨年度791円)でも、月22日8時間フルタイムで働いたとしても13万円にとどかず、年間では167万円です。

 全国平均は713円(年150万円)、沖縄県などでは629円(年133万円弱)、しかも労働時間は8時間以下のケースも多いため現実はこれらの額を下回ります。

 これで「健康で文化的な生活」が可能だというのでしょうか。

 憲法や最低賃金法を無視する実態が広く存在しているにもかかわらず、しかし、いまなお最賃引き上げへの抵抗が横行していることは驚くべきことです。
 
 日本の最賃水準がOECD諸国の中できわめて低位であることは、国際的に認知された事実です。厚生労働省は昨年10月、「相対的貧困率」を初めて公表しました。低すぎる最賃が貧困の拡大と深く関係しています。

 日本は世界有数の経済大国でありながら、社会的な行き詰まりが様々な分野で指摘されてきました。不安定雇用と賃金破壊を強要されてきた結果、労働者生活に展望がもてなくなっています。「少子化」はその最たるものです。「国のあり方」が問われています。

「年収200万円以下が1000万人を超えている」しかも「7人に1人が貧困状態にある」。

 このような状況を放置することは許されません。最低賃金の大幅な引き上げを最優先事項とし、貧困・格差問題に政労使あげて取り組まねばなりません。

 最賃審議会は大幅引き上げの明確な姿勢をもって応えるよう要請します。


(3)「事業主の支払い能力」要件は見直し、削除すべきです。


「日本の最低賃金の水準は、働く人全体の平均賃金に対し3割にとどまる。ニュージーランドやフランスは5割あり、英国も4割近い。日本は先進諸国のなかで低く、最低賃金の引き上げは必要だ」(日経新聞社説6月26日)。

 経済紙でさえ指摘しているように小泉政権時代の抑制政策からの転換は時代の流れとなっており、最低賃金の引上げが必要であることは「雇用戦略対話」でも合意されたことです。

 ところが実際の引き上げにあたって、経済界は抵抗姿勢を示しています。前掲の社説は次のように続いています。「ただ、経済への影響を抑え国内の生産基盤を守りながら、無理なく進めるべきだ」。

「最低賃金を上げて生活不安を和らげることは必要だ。ただし、人件費が急に増えて企業の経営が悪化し、雇用が減っては本末転倒だ。政府の目標にはそうした心配がある」(同)。

 これでは「総論賛成・各論反対」であり、地域の中小企業経営を口実とした最賃引き上げ抑制に他なりません。

 最低賃金の引上げを「労働者の健康的で文化的な生活」を基準として実行するためには、最低賃金法の「事業主の支払い能力要件」を見直し、削除すべきです。経営側がこれを盾として引き上げに抵抗することは、最低賃金の本旨に反するからです。


(4)政府・自治体の支援施策と同時に、大企業に責任を負わせるべきです。


 雇用戦略対話での合意に際して次の点が報告されています。

「最も影響を受ける中小企業に対する支援や非正規労働者などの職業能力育成などの取組を講ずること」「官公庁の公契約においても最低賃金の引上げを考慮し、民間に発注がなされるべきこと」(第4回会合・議事概要)。

 これらの施策は重要であり、政府・自治体によって速やかに実行されねばなりません。
 
 同時に、大企業の地域最低賃金に対する責任を問わねばなりません。地域最賃に対して、大企業や経団連などの経営者団体があたかも部外者であるかの姿勢をとることは許されません。

 たとえばトヨタ自動車は昨年12月、「12年をめどに部品調達費を現在より3割削減する」との「原価低減活動方針」を関連部品メーカー各社に伝えたと報じられ、「乾いたぞうきんをさらに絞る」大企業の横暴として大きな反響を呼びました。このような「下請けいじめ」は何度となく繰り返され、系列ピラミッドの裾野に広がる中小零細企業の経営を圧迫してきました。

 大企業は地域関連企業を経営難に追い込み、その一方で地域の中小企業経営を圧迫するとして地域最賃引き上げに反対しています。このような現状を不問に付すのでしょうか。

 宮城県は製造大企業の誘致を「富県戦略」の中心軸としています。計画(「宮城の将来ビジョン」07年から10年間の第2期案)では、トヨタを先頭とする自動車産業などの企業集積により、4年間で1万人の新規雇用を創出するとしています。自治体は誘致にあたって、インフラ投資を含めて企業に対する優遇措置を与えています。

 地域の側から大企業の責任を厳しく問うべきです。


(5)地域最賃審議会の議論は地域社会に広く開かれたものであることが重要であり、審議の公開が必要です。また中小零細企業労働者、非正規雇用労働者が最低賃金額にもっとも影響されることは明らかであり、これらの労働者の声が十分に反映される審議会のあり方を検討されるよう求めます。
           
(以上)


■宮城全労協ニュース弟161号(2010年7月25日)